セントジョンズ②

カナダ - 150年 街道をゆく

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セントジョンズ②

翌日、セントジョンズは晴天だった。

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北の島の通例で、いつも霧深いと聞いていたので(セントジョンズは世界一霧の深い街としてギネス登録されている)、これは幸運だった。

午後一時にニューファンドランド(ニューファン)唯一の日本人専門旅行会社ミキ・エンタープライズの日本人ガイドIさんと落ち合い、市内を案内してもらう。

Iさんによると、ニューブラウンズウィックにも「セントジョン」という町があるが、それとよく間違えられるという。確かにややこしい。よく見ると英語表記のつづりが違うのと、最後に「S」がつくかつかないかの違いなのだが、それ以前に州の名も「ニュー」の次が「ファンドランド」と「ブラウンズウィック」で、何となく似ている。これは私だけなのかもしれないが、ふとしたときに「ファンドランド」と「ブラウンズウィック」が区別できなくなることさえある。Iさんはセントジョンズの場合、日本人はだいたい空路からくるので、空港コード「YYT」で区別した方が良いと言う。

私も一度、韓国で「清州」と「全州」を間違えたことがある。どちらも日本語読みは「チョンジュ」なので、通訳にそう(清州)伝えたところ、全州に連れていかれたことがある。距離が数百キロ違うので、戻るのに手こずった。それ以来、同じ読みの都市は間違えないように気を付けているので大丈夫だったが、日本語は発音域が狭いのでこうした間違いがよく起こる。よくニューファンドランドに来る専門家でも間違える人がいるそうだが、確かに慣れてきた頃が一番危ないかもしれない。

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セントジョンズのダウンタウンは、海と平行に横に細長い。平らな土地がないためだ。また昔あった大火で町が全滅してから後は、いろいろな色に塗り分けられた家々が並ぶので「ジェリービーンズ・タウン」とも呼ばれる。色とりどりのジェリービーン(お菓子)をつりばめたような街並みなのでそう呼ばれるようになったのだが、北米最東端にあって灰色ががった色彩の多いところだから、ジェリービーンの家々はミニチュアの街並みのようでかわいらしい。

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ニューファンドランド(ニューファン)は、「ニュー・ファンド・ランド」(ラテン語テラ・ノヴァ)、つまり「新しく見つけた土地」という意味だ。北米最東端というだけあり、街中を車でまわるだけで辺境に来たなという感慨がする。

方言もかなり激しく、真面目なニューファン語の辞書が出ているほどだ。40年以上、ここに住むIさんでも、ニューファン語は一部のジョーク以外は使いこなせないと笑った。Iさんのお子さんは、英語とニューファン語を器用に分けて使っているという。もちろん日本語も話せる。

ダウンタウンで見所といえば、世界一パブが集まっているというジョージ・ストリートになる。私はビールをあまり飲まないのと一人旅だったので行くことはなかったが、週末はにぎやかだという。ニューファン語のジョークを言わせて、生タラに口づけすると、ニューファンとして認定するという「儀式」が毎夜のように行われているというが、これは遠慮しておいた。次回、連れがいたら挑戦してみても良いが。

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今回、二回目のカナダの旅でニューファンに来たのにはわけがある。それは、この地がカナダの始まりであるということだ。

西暦1000年頃にノース人、つまりヴァイキングがやってきたのが欧米からの最初の入植であるということ。実際の本格的な入植は1500年代になるが、どちらにしても、カナダという国の成り立ちの歴史を考えるうえで、ニューファンは欠かせない土地なのだ。前回の旅の当初、私はそれに気が付かず、旅に出てからその事実に気が付いたのだった。それで二回目の旅では、とりあえずニューファンから始めようと思ったのだった。

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カナダがここから始まったという意識については、カナダ人の中にもあるらしく、セントジョンズには「マイル・ゼロ」地点の記念碑がある。カナダの国道の始発点である。日本では東京・日本橋に国道の始発点が設定されているが、カナダではニューファンのセントジョンズがそこにあたる。ここからやや単純な嫌いはあるものの、カナダの歴史をたどるうえで、この地が欠かせないと私は考えたのである。

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また犬のラブラドール・レトリバーなどは日本でも人気の犬種だが、その元になったのはニューファンドランド犬である。なのになぜ犬種の名にニューファンドランドがないのかというと、どうもヨーロッパに連れていったとき、隣のラブラドールという地名と混合してしまったのだという。ニューファンは、正式には「ニューファンドランド・ラブラドール州」というが、このラブラドールは海をはさんだ向かいにある広大な半島である。レトリバーは「(獲物を)回収する」という意味だそうだ。泳ぎが得意で、足の裏の肉球の部分には水かきのような膜があるという。

しかし犬の名としては、隣の「ラブラドール」という名で有名になってしまったので、ニューファンドランド犬の名は一般的には広まらなかった。そしてこのニューファンドランド犬も、元はといえば1000年前にノース人、つまりヴァイキングがこの地に連れてきたのが、独自の進化をしたのではないかという説もある。一つの土地を、犬から考えることができるのも、ニューファンのユニークなところだと思う。

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セントジョンズの町からもよく見える、古ぼけた塔がある。シグナル・ヒルという高台に建つ「カボットタワー」だ。この地を発見したイタリアの探検家ジョン・カボットの名が付けられている、セントジョンズの見所の一つだ。さいわい天気が良かったので、彼方に小さな氷山を見つけることができた。もう少し夏になれば、クジラなども泳ぎにくるという。散歩コースも整備されているので、ゆっくり散策するのに良い。

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カボット・タワーでIさんと話していると、一人のカナダ人女性が「日本人ですか」と話しかけてきた。そうですよと答えると、日本の埼玉県狭山市で二年間、英語を教えていたという。「じゃあ、日本語で話しましょう」と言うと「もう忘れてしまって駄目だわ」という。カナダでは、日本で英語を教えていたというカナダ人とよく出会う。これは向こうから日本語を聞きつけて話しかけてくれるからだ。カナダ人の気さくさがよく出ている。

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つづく

コメント

  • Michiko Arisawa

    カナダの旅第二期のスタートおめでとうございます。楽しみに待っていました。
    今回は文体がシャープですね。以前の旅と雰囲気まで違うような気がして、いい意味で大人の味わいです。
    長い旅になるとのことですが、健康に気をつけて、いい時間をお過ごしください。

    • 上原善広

      コメントありがとうございます。第Ⅰ期のカナダの旅は、観光名所などを中心に紹介していましたが、来年のカナダ建国150周年に向けて、このブログも単行本として出版する予定もあることから、特に観光と限らないで、文章を多めにして書くことにしました。今回の文章が、本当のぼくの文章です(^^) 3日に一度の更新を目標につづっていきますので、これからもご愛読よろしくお願いいたします。

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