カルガリー 優雅な生活

カナダ - 150年 街道をゆく

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カルガリー 優雅な生活

エドモントンからは、バスで移動することにした。

いくつかの会社がカルガリーまでバスを運行しているが、今回はアメリカと同じくグレイハウンド・バスで、途中の町に寄りながら5時間ほどかけてカルガリーに向かうことになった。

カナダではバスがもっとも安い移動手段だから(エドモントン~カルガリー300キロで50ドル)、一風変わった人々が乗り込む。普通にお洒落している女性から、どう見てもホームレスのような汚れた男もいる。

やがてカルガリーにバスが着くと、そこからはCトレインという路面電車でダウンタウンに向かう。片道3ドル15セント。タクシーで向かっても良かったのだが、地図で見たところ、バス・ターミナルからダウンタウンは近いので、せっかくだからCトレインで向かうことにした。

カルガリーもエドモントンと同様、ダウンタウンでは博物館くらいしか見るものがない。あとはオイル系企業の本社などが入った商業ビルが立ち並んでいる。エドモントンをそのまま小さくした感じだ。

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↑カルガリータワーから見たカルガリーの町。アルバータはカナダの中でも裕福で知られている。

 

カルガリーでは、20年ぶりにユースホステルに入った。まだ旅が始まって一か月も経っていないので、経費節約のためだ。

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↑カルガリーのユース。きれいにリノベーションされている。

前回のカナダ東海岸では野宿やキャンプしたりもしたが、ホテルについては刑務所跡のユース(オタワ)からフェアモント(カナダの最高級ホテル)まで泊まることになる。とにかくこのカナダの旅では、野宿以外のほとんどの宿泊を経験している。

べつにわざとそう決めていたわけではないが、広大なカナダだ。計6カ月もカナダを旅するのだから、豪華なホテルにばかり泊まり歩いていては資金がいくらあっても足りない。だからそこは臨機応変に対処することにした。各地を取材するときはホテルに泊まり、時々、安宿を挟むのだ。

カナダの町には、基本的に日本の安いビジネスホテルというものが存在しない。1泊40ドル程度のユースがもっとも安価とすれば、次は100ドル以上のホテルになってしまう。もちろんその州や町にもよるが、中間の価格帯があまりない。B&Bでもまともな所に泊まろうと思えば、100ドル以上は出した方が無難だ。

これは一つには、車社会だからということもある。郊外に出れば80ドル程度の安いモーテルがあるのだが、これは基本的に車でないと行けない。さらに100ドル以下のホテル・チェーンでは、Wi-Fi環境が悪かったりするので仕事に使えない。100ドル以上のホテルやモーテルであればWi-Fi環境も問題ないが、それ以下だと部屋でつながりにくかったりする。そうかと思えば、郊外の個人経営のモーテルでWi-Fiがよくつながったりもする。

そのためカナダでも「民泊」が流行ってきている。普通のアパートメントの一室を借り切ることができるので、カナダで暮らすようにして滞在できる。ダウンタウンでもようやく中間価格帯での宿泊ができるようになった。ただし個人と個人のやり取りになるので、今のところは私も様子見で、民泊は使っていない。

ユースの場合、合計で5泊以上する場合は会員になった方が安くなるので、何度か使う人は会員になっておいた方が良い。私も25ドル払って会員になった。

20年ぶりに手にする会員証は、当時は紙製だったと思うのだが、今はさすがにカードになっていた。あとは、ユースというブランドの「保険」みたいなものだ。だいたいどこも共同キッチン付きで朝食無料、コインランドリーもある。つまりサービスが均一だ。

ユースが面倒なのは、相部屋で共同バス・トイレだということだろう。プライベート空間が一切ない。カルガリーのユースには個室もあるが、一泊100ドルする。町で遊んだカップルが深夜、飛び込みでくることがよくあるが、個室が一泊100ドルと聞いて出ていく若者もいる。逆にこの個室にしばらく滞在する上品な老夫婦がいたりするし、小さな子連れで泊まる夫婦もいる。

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↑ユースのロビー。写真だけ見ると、どこかのデザイナーズ・ホテルのようだ。

カナダのユースでは、規則で2週間以上泊まれないはずなのだが、ずっと泊まっている老人が何人か必ずいる。オーナーと話がついているのかもしれない。

私は料理するのが好きなので、キッチンをよく使う。長居している老人の一人はスペイン人で、キッチンで大量のジャガイモを蒸かしてひたすら皮をむいていた。きっと作り置きしているのだろう。彼とは同室になったが、たがいに英語が苦手なのでほとんど話さない。それでも目が合うと、うむ、という挨拶だけは交わす。

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↑キッチン。前後に二つあって便利だ。右側の棚のようなものは共同の冷蔵庫。

私の使っていた物置と、彼の物置がとなり合っているのだが、時々、彼の私物が私の物置にまで進出してくることがある。ある日はぶ厚い本がはみ出していたので、どんな本を読んでいるのかと思ってちょっとタイトルを見てみたら、トーマス・マンの大著『ヨセフとその兄弟』シリーズの『エジプトのヨセフ』だった。聖書の一節をテーマにした壮大な小説で、全四巻になる。不思議な老人だ。

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↑左が私の物置で、右が老人の。すでに帽子が浸食してきているが、これはご愛敬。

もう一人のルームメイトは、スーダンからきた30代くらいの男だ。日中はジャケットを着て、香水を大量に振りかけて出かけていく。いつの間にか戻ってきたなと思っていたら、夜9時頃に民族衣装を着て再び出ていく。朝、私が目覚めた頃には帰ってきて寝ているといった具合だ。

以前までのユースでは、客同士で仲良くなって一緒に出掛けたりしたものだが、最近は違う。山谷などの寄場と同じで、互いのことはあまり詮索したりしない。これは私が無口になってしまったのか、それとも時代がそうなってしまったのか、よくわからない。フリーフード(客が残していった食材)だけで生活している老人もいるし、まあ、見ていると飽きることはない。若者から老人までいるわりに、その中間層があまりいない。とにかく客層が極端だ。

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↑六人部屋が標準。パズルの中で寝ているような、不思議な感じがした。

夜になると、ドレスを着て出ていく女性、スーツを着て町に出る男もいる。いったいみんなどこに出かけているのだろうと思ったが、仕事を探して滞在しているカナダ人や外国人も滞在しているから、そう考えればべつに不審でもない。大方、夜のクラブにでも出かけているのだろう。ただしみな一応に香水を大量にかけて出ていくので、横を通られるとしばらく嗅覚がおかしい感じになる。

私はもっぱら、共用スペースで原稿ばかり書いていた。日中は出かける以外、ほとんど原稿をやっていたので、仕舞には掃除のおぱさんから「あんた、仕事を探しにきたのかい?」と訊ねられた。

カルガリーのダウンタウンには、大型デパートなどはあるものの、チャイナタウンも廃れているし、特に週末になると店も早々に閉まってしまい、人通りもまばらで寂しくなる。これは郊外に生活の場が分散されているためだ。在住日本人も、ダウンタウンでなく郊外に散らばって住んでいる。

カルガリーには日本総領事館があるのだが、そう思えないほど、歩いている日本人が少ない。ユースに滞在している間も、日本人客はほとんど見なかった。20年前にカナダに滞在していた頃は、どこの町でも日本人をよく見かけたものだが、今はその影すらない。

宿泊はユースだが、夕食はしっかりと食べることにした。ガイドさんお薦めの、ジャパニーズとイタリアンの創作料理「カリーノ リゼルバ」というお店。カルガリーでは二号店になるらしい。

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↑アルバータ牛のミートソース・パスタ。

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↑アルバータ牛のステーキ。醤油とソース、お好みで選んで食べる。カナダのステーキ店では、一般的にガーリックが付け合わせでは出てこない。

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平日だったが、満員だった。創作系料理は苦手なのだが、この店のはおいしかった。店内では日本人スタッフによる堂々たるブロークン・イングリッシュによる注文が飛び交っていたのも良かった。

 

ある天気が良い日、ダウンタウンの書店に出かけた。前号で紹介したウクライナ系カナダ人の画家、ウィリアム・クレレクの画集を買おうと思ったのだ。

ウィニペグやエドモントンでは他の取材に忙しくて、購入するのをすっかり忘れていた。カルガリーでは「インディゴ」という書店がもっとも大きいが、残念ながらクレレクの本は一冊もなかった。カナダ版Amazonで検索してみると、ほとんどの本が絶版になっているようだ。古書だと200ドル以上もするから、ちょっとしたプレミアがついているようだ。

ダウンタウンの外れ、フォート・カルガリーの近くに「フェアズ・フェア」という古書店があるので、歩いてこちらに向かった。1時間ほどかけてアートと絵本の書棚を探してみたら、『プレーリー・ボーイの冬&夏』という廉価版の絵本を見つけた。これはそれぞれ『プレーリー・ボーイの夏』、『プレーリーボーイの冬』という絵本として出版されていたものだが、クレレクが亡くなった翌年(1978)に合冊して出版されたものだ。

古書店のスタッフとも話したが、クレレクの存在を知らなかった。20ドルするのでちょっと考えたが、クレレクがカナダでも忘れられた画家になりつつあることを思えば、今度いつ会えるかわからないので買っておくことにした。

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つづく

コメント

  • 野本 毅

    はじめまして。ブログが再開してからずっと上原さんの宿泊事情に興味があったのですが、今回くわしく書かれていて納得しました。それにしても、経費削減のためとはいえユースホステルにも泊まられたのですね!私はもうとても無理です- -;このあとも気をつけて旅をつづけてください。

    • 上原善広

      コメントありがとうございます。宿泊は「野宿から五つ星まで」というのが基本スタンスなのですが、さすがに野宿はもう無理ですね(原稿が書けない)。ユースもそろそろ卒業したいとところですが、今回は三ヶ月という長旅なのでちょこっと入ってしまいます。また面白い宿があればアップしますね。

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