ロッキー バンフ編

カナダ - 150年 街道をゆく

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ロッキー バンフ編

この辺りは山ばかりで、しかも岩山だから荒涼とした景色だ。ロッキー(岩)と呼ばれるだけある。ただし絶景だ。

私はロッキーというと、ブリティッシュコロンビア北部の方を歩いたことがあるが、そこはロッキーの端だったからか、大体が低い山ばかりだった。これはBC北部のロッキーの標高が比較的低いためにそう勘違いしたのだが、さすがにロ編ッキー山脈の中に入ると、日本の富士山級くらいは次々に出てくる。

やがて、バンフに入った。

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↑バンフの町

バンフといえば、「世界有数のリゾート地」である。この旅では特に見るものもないだろうと思っていたのだが、荒々しいロッキーの中に突如として現れた小さな町は、まさにオアシスそのものだった。人であふれて、歩道を歩くにも渋滞している。観光客は、やはり中国系が圧倒的に多い。最近の中国系観光客は、ブランド物を身に着けてきれいな格好をしているので、日本人と区別がつかない。通訳のH氏も、「今では見分けるのは難しい」と言っていた。

バンフがリゾート地として有名になるのは、太平洋横断鉄道を建設中、三人の作業員によって発見された温泉がきっかけだった(もちろんそれ以前に、先住民が発見していたのだが)。

これに目をつけたのが、「鉄道王」「鉄路の皇帝」などと呼ばれたウィリアム・ヴァン・ホーンである。彼は、あまりに壮大な計画だった大陸横断鉄道建設のためにアメリカから呼ばれ、建設工事の総監督に就任する。

「景色は輸出できないのだから、観光客の方を輸入するのだ」というのが彼のモットーで、自分用の特別列車を作って東西を行き来して鉄道建設に奮闘していた彼は、その一方で、かねてからこのロッキーに目をつけていた。そこに作業員が温泉を発見したとの一報を聞くと、この地に一大リゾート地を作ろうと決心する。

温泉が発見されたのが1883年(明治16)で、4年後の1887年にはカナダ最初の国立公園として指定されている。バンフの名は、当時の鉄道会社社長がスコットランドのバンフシャイアの出身だったことから、バンフと命名された。そしてヴァン・ホーンはこの地にホテルを建てるのだが、それがバンフでもっとも有名なホテル、バンフ・スプリングス・ホテルとなる。

ヴァン・ホーンは、このホテルの設計を、モントリオールのウィンザー駅や、ケベックの高級ホテル、シャトー・フロンテナックの設計を手掛けたブルース・プライスに依頼した。鉄道建設に従事するためにやってきていた中国人労働者も参加してホテル建設は進んだが、ヴァン・ホーンは自分で好き勝手に設計図に手を入れたという。

こうして1888年に完成したホテルだが、建設当時は今のような巨大な建物ではなく、4階建ての木造・石造混合の質素なものだったという。その後、改築と増築を重ねて、1930年代末には現在のような姿になり、世界有数の高級ホテルとして知られるようになる。宿泊客も歴代のイギリス国王からマリリン・モンロー、果ては「名犬ラッシー」までが名を連ねている。

バンフの始祖、ヴァン・ホーンは現在、バンフ・スプリングス・ホテルの前に銅像として立っている。でっぷり太ったおじさんで、自信満々にホテルの方を指さしている。

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ヴァン・ホーンの優秀なところは、依頼された鉄道建設だけでなく、そうしたリゾート開発にも興味をもっていたということだろう。今も昔も、世界中どこでもそうなのかもしれないが、温泉と景色はリゾート地をつくるうえで欠かすことのできない要素なのだ。

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↑バンフの温泉。大人気である。

バンフではまず、最初に3人の作業員によって発見された温泉「ケイヴ・アンド・ベイスン国定史跡公園」に出かけた。

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この日は昨夜の落雷のため、バンフからレイク・ルイーズ辺りまで停電していた影響で、洞窟も電灯なしでの見学となった。昔はここが大温泉プールになっていて、周囲の環境を汚しまくっていたらしい。それは廃止され、現在は入浴も禁止されている。入浴できる温泉は、ホテルの近くにある入浴施設だけだ。

この場所を保護するようになったのは、環境汚染もあるが、希少な生物が発見されたこともある。温泉の成分を食べて生きている微小なカタツムリなど、貴重な生物がここにはたくさん見られるということだ。スタッフに話を聞いた。

「ここは、バンフ温泉の源泉になるんですか?」

「そうです、ここが源泉になります。以前はバンフ・スプリングス・ホテルにも引いていたんですが、現在は温泉プールのみに引いています」

「温度はだいたい一定ですか」

「そうですね、だいたい年間を通して40℃くらいです。冬でも暖かいので、ここに微小な生物が住み着いたんでしょう。非常に小さなカタツムリなんですが、絶滅寸前だったのですが、ここを保護するようになって、また数も増えました」

よく見てみると、確かに小さなカタツムリが「湯の花」に乗っている。時々、鳥に食べられてしまうのだという。

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バンフでは、通訳のH氏お薦めの「P」というレストランに行った。プライム・リブ(ローストビーフの厚切り)が有名だというので行ったのだが、残念ながらオーナーが代替わりして、味が落ちてしまっていた。カナダの牛肉は旨いのだが、味が淡泊なので、グレービー(肉汁)ソースなどが付いていないとおいしくない。特に店で食べる場合は、このグレービー・ソースが楽しみなのだが、それさえも付いていないのでガッカリした。

その代わりというわけではないのだが、日本食ともだいぶん久しくなっていたので、バンフに一軒だけあるラーメン屋「茶屋」に入った。するとひどい混みようで、開店前から並んでいる。私たちは午後6時頃に行ったのだが、すでに2時間待ちだと言われた。小さな店なので仕方ないが、日本食レストランの激減と、中国人客の激増でいつも満席だという。バンフが日本人であふれていたのはもう20年前の話で、今は中国人であふれかえっている。

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↑おっさん2人でカヤックに乗る。これは楽しい。

味は一般的なもので、バンフにこうした手頃な日本食屋があるだけ有難い。カナダもこの辺りまでくると、日本食の味がどうのというよりも、とにかくその料理が日本食に近ければ近いほど良いということになる。味などその次である。白系カナダ人客などは、流暢な日本語で「担々麺ください」などと注文しているので驚いた。しかし日本人観光客が少なくなったといっても、バンフにはまだ多くの日本人が住んでいるという(全住民の約6パーセント)。

次に向かったのは、レイク・ルイーズである。私は観光地にはあまり興味ないのだが、そんな私でも行ってみれば、それなりに楽しいのが観光地の妙なところだ。

レイク・ルイーズも確かにきれいだと思うが、繊細な日本の自然美に比べると、ちょっと色がどぎつ過ぎる。この湖がエメラルド・グリーン色になるのは、氷河から流れ出す水が乳白色だからだという。それがたまったところに陽光がさすと、空の色を映してあのような美しいグリーンになるのだという。

こういうところには、やはり女性と一緒に来た方がいいのだと思う。なにしろおっさん2人で来ているので、べつに面白くないのだ。通訳のH氏は仕事で何度も来ているし、私も観光には興味がないときている。高級ホテルシャトー・レイク・ルイーズも、ディズニーにある偽物の城のようになってしまう。ようは場違いなのだ。

観光客と写真をとるために突っ立っている「酋長」の衣装を来た先住民を見て、以前に北海道の阿寒湖でも、アイヌが同じような仕事をしていて体を壊すという話を読んだことがある。あの仕事は突っ立っているだけなので楽そうだが、恥ずかしいので酒を呑んでしまう。だから夏はまだいいのだが、冬は体を壊してしまうのだ。冬は酷寒の地となるレイク・ルイーズだから、さすがに冬期は立っていないと思うのだが、しかし、「酋長」を見てはしゃいでいる各国の子供たちを見ていると、そう悪い仕事ではないのかもしれない。

私はリゾート地に来たら、ゆっくりしたい。行動は半日だけにしてもらい、あとはロッジで原稿を書くことにした。これがまた、格別なのである。特にカナナスキスのように静かで、一階の広場に日本食があってという環境は最高である。

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↑野生動物との事故を防ぐために高速道路に作られた獣橋。良くも悪くも人間の偽善を現しているように思える。 

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↑バンフ近郊で見かけた野生動物たち。

 

※現在、ユーコン準州のホワイトホースでこのブログをアップしていますが、ユーコン自体のWi-Fi(ネット)スピードが大変遅いため、ほとんどの写真がアップできませんでした(このブログもアップするだけで2時間かかりました)。もうちょっと工夫しますので、次回にまた期待してきださいね。

つづく