バンクーバー出発 映画『ランボー』の町ホープへ

カナダ - 150年 街道をゆく

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バンクーバー出発 映画『ランボー』の町ホープへ

バンクーバーに滞在していると、あっという間に再出発の日にちが近付いてきた。地図をじっと凝視して今後の予定などを決めていくが、出発するとなると心が挫けてくる。H氏宅での生活が快適なので、出たくないのだ。

 そうこうするうちにH氏はコーディネートの仕事で、長期の予定で出て行ってしまった。私だけが居候の分際で、いつまでものんびりするわけにはいかない。私も荷物をまとめて、レンタカーをピックアップして出発することになった。

  バンクーバーの高速道路は入り組んでいる。

だからナビ無しで脱出するのは容易ではないと思ったのだが、一号線をひたすら東へ移動するだけだったので、意外にスムーズに抜けることができた。数時間後にはすんなりとホープという町に着いた。

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ホープは人口5000人ほどの小さな町だ。30分も歩けば町を出てしまう。

20年前の徒歩旅行のときにも一泊しているのだが、まるで覚えていない。町外れのキャンプ場に泊まったからだろう。カナダでは北に行くほどキャンプ場が安くなるが、当時は下で1,000円くらい、高くて2,500円ほどだった。現在は2,000から4,000円まで上がっている。ただし、これはカナダだけではない。物価の上がっていない日本が異質なのだ。

 ホープは、もともと鉱山開発などでできた町で、町の名が「希望」となっているのはそのためだ。現在はハイウェイ一号線沿いの商店街、鉱山列車の跡地などが観光地になっている。カナダを東西に横断するとき、ここで休む人が多いので、それで成り立っているような町だ。

有名なところでは、シルベスター・スタローンの映画『ランボー(原題ファースト・ブラッド)』の撮影はここホープでおこなわれたので、立ち寄るファンも多い。

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この映画は、日本ではただのアクション映画として捉えられているが、実はシリアスなストーリー映画という一面ももつ。原作のタイトルは『一人だけの軍隊』。

公開された1982年当時は、ベトナム戦争について触れるにはまだ生々しいためにアメリカ映画界でも忌避されていたテーマだった。そこに敢えて焦点を当て、ベトナム帰還兵役のスタローンが戦友を訪ねて旅をしていてこの町に行きつくところから映画は始まる。町の警察署長はランボーを逮捕して虐待、ベトナム戦争のPTSDに悩まされながらも、ランボーは脱走して警察署長への復讐を始める。

この辺りからアクション満載のストーリー展開となるが、それは娯楽作品として成り立つようにしただけのことであり、この映画のテーマはあくまで帰還兵問題にある。原作ではランボーと敵対する署長も実は朝鮮戦争の帰還兵で、これはいわば帰還兵同士の闘いという一面ももつ。

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国内における帰還兵への冷遇など、当時のアメリカ事情を色濃く反映した映画だが、アクション・シーンの連続がテーマの暗さを意識させないよう工夫されている。

とはいえ、テーマの深刻さからかアメリカ国内ではヒットせず、アクション映画として売り込んだ日本などの外国でヒットを飛ばした。そのため続編以降はただ中身のないアクション映画に変貌してしまったが、商業的に考えれば致し方ない。ただし続編が作られたのも、第一作のストーリーがしっかりしているから可能だったのだろう。

原作のラストは、説得にきた元上官によってランボーが射殺されるところで終わるのだが、映画では暗すぎるのと続編が難しくなるということで、投降して終わっている。投降によって救済が暗示されるから、アメリカ映画的なラストといえるだろう。

この映画がホープで撮影されたのは、カナダはアメリカより物価が安く製作費を抑えられること、アメリカ国境からも近いので便利だったからだ。これは現在でもそうで、アメリカ映画の多くがカナダで撮影されている。

映画ではホープの町は、閉鎖的な田舎町として描かれているが、実際は観光客も立ち寄り、古い建物があちこちに並んでいる古き良きカナダの町といった佇まいだ。

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スーパーでは安く食料が手に入るし、モーテルも充実している。物価高で安いモーテルが少ないバンクーバーから来ると、生活のしやすいのんびりした田舎町だ。ブリティッシュ・コロンビア州南部の中では、比較的、滞在者にやさしい町だといえる。

バンクーバーで日本食などは買い溜めしてきたが、生鮮食品などはホープでそろえた。一日だけの滞在だったこともあるが、べつに他所者だからといって白い眼で見られることもない。住民は白人が多く、その他は後から移民できた中国系が多い。中心部は初めてにも関わらず、なんとなく訪れた感があるのは映画を見ていたからだろう。「こんなに小さな町だったのか」とちょっと驚くほど小じんまりしている。

生鮮食品を買いだめして準備を整えて、私は北極海へ向けて北上を開始した。

 つづく

 

コメント

  • 冨田信夫

    以前にも書き込みをした者です。別のブログでカナダのご本のことを知り、さっそく予約しました。こちらのブログの断片的な記録が、どんなふうに一冊の本になっているか楽しみにしています。

    • 上原善広

      コメントありがとうございます。本は5月10日発売予定です。前半は大きく変わっていて、後半は本の執筆と同時並行だったので重なる部分は多少ありますが、ほぼ書き下ろしになっています。どうかご期待ください。

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