14. 1つだけ聞いてほしいこと

僕とアンが見つけた14の物語14. 1つだけ聞いてほしいこと

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「『あの子を育ててよかったじゃないか?マリラ』とアンが論文を読み終えると、マシュウが式場にはいってからはじめて口を開いた。 『よかったと思ったのははじめてではありませんよ』とマリラはやりかえした」-(モンゴメリ著/村岡花子訳/新潮文庫刊「赤毛のアン」より)

アンの卒業式に出席したマシュウとマリラは、この身寄りのない女の子を引き取り、育てたことを喜びを持って振り返る。

自分たちも年をとってきた、だから働き手として孤児院から男の子をもらおう―。それが、ちょっとした行き違いで「GREEN GABLES」にやってきてしまった女の子。

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送り返すことだってできたはずなのに、アンを引き取り、愛情を注いだことで、自分たちもアンから大きな幸せを与えられることになる。

PEIには「ストーム・ステイ」という慣習があると聞いた。大雪の夜、自分の家に帰れなくなった時、知らない人の家をノックしても、当たり前のように一晩、泊めてもらえるんだそうだ。

もっともそれは馬そりの時代のことで、今はそう簡単に帰れなくなったりしないだろうけど、その精神は生き続けている。

例えば、「甘い甘いケーキ」でお話を聞いたテリー神川さんによると、東日本大震災の時、PEIの人たちはごく自然に、当たり前のこととして日本の被災者への募金活動をしてくれたそうだ。

PEIを車で走っていると、日本では見たこともない信号に出くわすことがある。色だけでなく丸や四角で構成された信号。

色の識別が困難な人でも、形だけで分かる信号だ。日本だったら、そんな少数派のための予算、まず通らないだろうと思う。

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PEIでは本当にたくさんの教会に出会った。こうした助け合いの心は、キリスト教をベースにしたものなのかもしれない。

あるいは、ヨーロッパから見知らぬ土地に渡ってきた者同士、助け合わなければ生き抜けなかったという過去の記憶がそうさせているのだろうか。

トム・ハンクスとメグ・ライアンが共演した映画「ユー・ガット・メール」は、大型書店の進出によって街の絵本屋さんが閉店に追い込まれるというストーリー。メグ・ライアンが母から受け継いだ店を閉じる日、1人の女性客が泣きながらこう言うんだ。

「この店でおばあちゃんに『ANNE of GREEN GABLES』を買ってもらったの。でも読むときはティッシュを用意しなさい、涙が止まらなくなるからって」

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こんなふうに世界中で、数え切れない人たちに愛され続ける「ANNE of GREEN GABLES」。それなのに、取材で出会ったPEIの人たちは、それがどのくらいすごいことなのか、気にもとめていない「ゆるさ」でいっぱいだった。そして、誰もが人が良すぎるぐらい、「人のいい」人たちだった。

ブルーベリー畑や、ロブスター漁の船の上や、ポテト・トラックの助手席や。そうそう、秘密の酒の、あそこでも。

振り返ると、人の良すぎるところや「ゆるさ」に思わず吹き出してしまうことばかりだった。

さて、僕もそろそろ日本に帰らなくちゃいけない。旅につきあってくれたアンとも、ここでお別れだ。

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みんなもPEIを旅したあと、どうしてもアンとの別れがつらいという時には、こんなお土産がある。「アンづら」と呼ばれていると聞いた。ストレートにアンを思い出すなら、もってこいだ。

ただ、カナダ観光の関係者の方々に、1つだけ聞いてほしいことがあるんだ。何かいい名前をつけてあげてもらえないだろうか。「アンづら」じゃない、いいやつを。

どうだろう、一番いい名前をつけてくれた人をPEIに招待するなんて企画は。

だって、自分の一番のトレードマークが「づら」と呼ばれているのを知ったら、あのアンのことだ、またつま先立ちで猛烈に抗議するのは間違いない。

旅の間じゅう、ずっといっしょにいたんだ。そのあたり、アンがどう思うかなんて、僕にはすぐに分かるんだよ。

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