バンクーバーが幸せな理由

02. 旅の終着点

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「本当はイタリアのコーヒーの店をやりたかったんだよ、スターバックスが登場する前にね。そうしたら今ごろはなあ」。

そんなふうに言いながら僕に魅力的な笑顔を見せてくれたのは、マウロ・ドゥーソーさん。バンクーバーの人気観光スポット「グランビルアイランド」のパブリックマーケットにあるイタリア食材店「Duso's(ドゥーソーズ)」の創業者だ。

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イタリア移民のマウロさんがどうしてバンクーバーで暮すことになったのか。僕が繰り返し理由を尋ねても、マウロさんは「なんでだろう」とニヤニヤするばかりだ。

自分でここを選んだのかと聞けば、「もちろん」と即答するけれど、その先はいくら聞いてもなんだかよく分からない。

「旅の終着点だったし。レイク・ルイーズもよかったんだけど。やっぱりトロントには戻れない、というのもあったしなあ」

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一家がイタリアからカナダにやって来たのは1956年、マウロさんが4歳の時。

それまでイタリアでの一家の生活を支えてくれていたレストランは、第2次世界大戦中の爆撃によって破壊されてしまった。

生きる「糧」を失ったマウロさんの家族は、生きるために大西洋を渡り、カナダへとやってきたのだ。

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イタリアにいた頃のマウロさんのお父さんは、オートバイを乗り回したり格好いい人だったらしい。しかしトロントのイタリア人街で再びレストランを営むようになったお父さんは、なかなかカナダに馴染めずにいたそうだ。

そんな雰囲気を重苦しく感じ、10代後半のマウロ青年は家を出る決心をする。マウロさんによれば、そのころの風貌はまさに「ヒッピー」。頭はアフロヘア、ヒッチハイクでただただ遠くへと向かう。誰も乗せてくれない日は、勝手に貨物列車にもぐり込んだ。

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バンクーバーにたどり着いたのは1971年。確かにトロントから西へ、西へと進んでいけば、バンクーバーは旅の終着点となる。

マウロさんはそこで学校に通ってエンジンの勉強をし、メカニックとして漁船に乗り込む生活を始めた。

そんなマウロさんがグランビルアイランドで店を出すことになったきっかけは偶然そのものだ。

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1979年、いっしょに山登りに行った友人がふざけて落石を引き起こしてしまい、足を怪我したマウロさんは漁船に乗れなくなってしまう。生活のために急きょ、マウロさんはイタリア食材の店を出すことを決める。

それが、のちに一大観光地となるグランビルアイランドのマーケット開設からわずか1週間後の出来事。まだまだ空き店舗ばかりのマーケットの中に、マウロさんの店「Duso's」が誕生したのだ。

周囲の心配をよそに、店はすぐに、日に何度も仕入れに走らなければならないほどの人気店になった。

当時はあまり認知されていなかったイタリアの味をバンクーバーの人たちが求めていたのではないか、というのがマウロさんの見立てだ。

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「Duso's」の店頭にはおいしそうな食材やパスタ、チーズなどがぎっしりと並べられていて、見ているだけで楽しくなってしまう。パブリックマーケットのオープン当時から今も続いている店は「Duso's」を含めて3軒だけなんだそうだ。

マウロさんに、バンクーバーで暮らすと決めた理由ではなく、バンクーバーの魅力について聞いてみた。

「海も山も近くてすごく住みやすい。トロントの人は『バンクーバーなんて』と言うかもしれないけれど、ここは仕事だけじゃない、やりたいことがいっぱいあって、住んでいる人がみんなハッピーなんだ」

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マウロさんはスキーもやるし自転車に乗るのも大好きだ。おいしい食べ物と自然があって、働くだけじゃない、暮らしそのものがハッピーなのが、マウロさんにとってのバンクーバーなのだ。

バンクーバーを目指したわけではないけれど、偶然たどり着いた旅の終着点。若き日のマウロさんはそこで、これ以上ない開放感を感じたんじゃないだろうか。

ドゥーソーズ・イタリアンフード(Duso’s Italian Food)
陽気なマウロさんが創業したイタリア総菜の店、「Duso’s」があるのはグランビル・アイランドのパブリック・マーケット。オリーブ、ディップ、マリネ、サラダなど本場イタリアの味が人気で、お惣菜としてではなく、ワインのおつまみにもぴったりなメニューがずらり。チーズやパスタなどの食材も豊富で、店頭の品ぞろえを眺めているだけでも楽しくなってしまいます。

営業時間 毎日9:00~19:00
120 - 1689 Johnston Street
TEL 604-685-5921
http://dusos.com/

文・写真:平間俊行

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