バンクーバーが幸せな理由

03. ボウといっしょに

お気に入りに追加
03. ボウといっしょに-イメージ1

フェアモント・ホテル・バンクーバーのコンシェルジュデスクの横で、1頭の犬が寝そべっている。名前はボウ(BEAU)。

人間なら80歳以上。足元がおぼつかないけれど、れっきとしたホテルの現役アンバサダー犬だ。立派なネーム入りの制服だって持っている。

「長いフライトでイライラしているお客様もいますが、ボウを見てぱっと機嫌が良くなったり。ボウに助けられることもあります」

03. ボウといっしょに-イメージ2

そう語るのは、このホテルのコンシェルジュで、ボウの飼い主でもあるデビー・ワイルドさん。

しかし、ボウの本来の役割は別にある。愛犬を家に残してきた宿泊客の寂しさを紛らすために滞在中、いっしょに散歩に行ったり、ボウが愛犬の代わりを務めるのだ。

ここでは1泊プラス25ドルで愛犬と宿泊できるのだが、実際には連れて来られない人も多いため、アンバサダー犬が導入された。

03. ボウといっしょに-イメージ3

実はボウは、もともとホテルと協力関係にある訓練施設で盲導犬を目指していたものの、残念ながら不合格となった「過去」がある。

といってもボウの能力が低かったわけではない。ボウは人の前ではなく、横や後ろを歩きたがる癖があって、盲導犬には不向きと判断されたのだ。ちなみにもう1頭のアンバサダー犬、エラ(ELLA)も人の顔を舐める癖などがあってこのホテルにやってきた。

世界各地のフェアモントホテルに計20頭ほどのアンバサダー犬がいるけれど、最初に導入されたのは同じバンクーバーにあるザ・フェアモント・ウォーターフロントだそうだ。

03. ボウといっしょに-イメージ4

バンクーバーは何かできそうな気分にさせてくれる街だと思っていたけれど、犬にまで「人の心を和ませる」という立派な役割を与えてくれているのだ。

2006年、ボウがホテルにやってきた時、その引き取りを申し出たのがデビーさんだった。飼い主になる代わりに、デビーさんはホテルと3年間は辞めずに働くという契約を結んだ。この仕組みにより、ボウはデビーさんの飼い犬であり、かつアンバサダー犬というホテルの"従業員"となったのだ。

03. ボウといっしょに-イメージ5

さて、バンクーバーという街は、犬と暮らす喜びを大切にする街であるだけでなく、犬自身も幸せに暮らせるよう様々な工夫を施している。

市内には首に付けたリードを外して自由に愛犬を遊ばせることのできる公園や海岸がある。

03. ボウといっしょに-イメージ6

公園では見知らぬ犬どうしが出会い、じゃれあい、全力で駆け回っている。

いろいろな大きさ、種類の犬が入り混じり、中には輪になかなか入れない犬もいる。まるで犬の「公園デビュー」だ。

それしても犬の散歩は見ることがあっても、街中で全力疾走している犬ってなかなかお目にかかれないと思う。

ましてや海岸で楽しそうに走り回る犬なんて、日本で見ることができるだろうか。バンクーバーは犬の暮らしやすさまで大真面目に考えている街なのだ。

03. ボウといっしょに-イメージ7

さて、デビーさんは30年前、父親の仕事の関係でイギリスからやって来た。まだ小さかったデビーさんは、カナダは雪深くてエスキモーのような人たちが暮らす国だと思い込んでいたそうだ。

でも今の思いを聞くと、こんな答えが返ってきた。

「海、山、森が街の近くにあるバンクーバーが好きだし、歴史あるホテルでボウといっしょに働けるのも本当にラッキー」

03. ボウといっしょに-イメージ8

ボウはデビーさんの家で暮らし、朝はいっしょにホテルまで歩いて通勤する。ただし、高齢のため勤務は週3回に減り、通勤に要する時間もどんどん長くなっているけれど。

でもそれは日本ではまず見られない、バンクーバーならではの微笑ましい通勤風景じゃないだろうか。

03. ボウといっしょに-イメージ9

フェアモント・ホテル・バンクーバー(The Fairmont Hotel Vancouver)
青銅の三角屋根を持つお城のようなホテルは、1939年の創業以来、バンクーバーのランドマークとして親しまれています。各国の要人が滞在する最高級のホテルのひとつ。優雅で落ち着いた雰囲気と、ダウンタウンの中心というロケーションの良さが人気です。

900 West Georgia Street
TEL 604-684-3131
日本の予約先 0120-951096
http://www.fairmont.com/hotel-vancouver/

文・写真:平間俊行

コメントを残す