マニトバ ― Heart of Canada

02. 結節点としてのウィニペグ

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初めて訪れたウィニペグで僕が宿泊したのは、「Inn at the Forks」というホテル。文字通り、ザ・フォークスと呼ばれるエリアの中にある。

“Forks”と名付けられたのは、ここが食事に使うフォークのように、川が「ふた股」になっている場所だからだ。

ザ・フォークスの目の前を川幅およそ200メートルというレッド川が流れ、そこにアシニボイン川という川が合流する。こうして力を増した新たなレッド川は、ウィニペグの北に位置するウィニペグ湖へとさらに進んで行く。

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先住民の主要な移動手段はカヌーだったから、川の合流地点であるザ・フォークスは必然的に交通の要衝、そして人と文化が交錯する結節点となった。

ホテルの周辺は公園のような雰囲気で、かつての鉄道駅は改装されてショッピング・センターになっていた。

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そしてきのう僕がクラフトビールを堪能したザ・フォークス・マーケットもすぐ隣りだ。ここでは食事をしたりお酒を飲んだり、2階でお土産なども購入できる。

頭の中に、いろいろな先住民の部族が集まってワイワイ、ガヤガヤやっていた昔の光景を思い浮かべてみる。きっとその雰囲気は、目の前に広がるマーケットのフードコートと同じだったに違いない。ここは何千年も前からずっと、人と文化の結節点なのだ。

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ザ・フォークスを出て西に向かい、VIA鉄道駅の反対側に行くと、石造りの歴史ある建物がいくつもあって、近代的なビルと混ざり合っている。このことは、ウィニペグがプレーリーの中に人工的につくられたのではなく、歴史ある街であることを示している。

なにしろここは、ウクライナやドイツなど、さまざまなヨーロッパの国からの移民が、大地を開墾する担い手としてやってきた際の玄関口なのだ。船で大西洋を渡った移民たちはケベックシティかモントリオールに上陸し、そこから「移民列車」でウィニペグに到着した。だから当時のウィニペグは1日に1800両もの列車が通過したという。

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マニトバに留まる人も、さらに西のサスカチュワン州やアルバータ州へ向かった人もいる。先住民の部族が集まったザ・フォークスと同様、ウィニペグ自体もまた、様々な国の人が降り立ち、西と東、人と文化が交錯する結節点となっていったのだ。

ところで急に話は変わるけれど、みなさんは「クマのプーさん」をご存じだと思う。僕は結節点という意味で、不思議な縁(えにし)のような“ウィニペグ・ネタ”を探しているうちに「プーさん」に行きついた。「クマのプーさん」の原題は「Winnie-the Pooh」。なんとこの「Winnie」は、ウィニペグからとったものなのだ。

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第1次大戦中、カナダ軍の従軍獣医のハリー・コルバーン中尉がオンタリオ州で出会ったメスの小熊を引き取り、自らの故郷ウィニペグにちなんでWinnieと名付けたのがことの発端だ。

Winnieは中尉や部隊とともにイギリスに渡り、フランスに移動する際、安全なロンドン動物園に預けられる。そして、のちに小説「クマのプーさん」を執筆するA・A・ミルン氏の息子さんが動物園で見たWinnieを気に入り、自分のテディベアをWinnieと命名したのだ。

その後の経緯は割愛するけれど、調べてみたところ、ウィニペグと「プーさん」の関係はかなり薄かった。Winnieはウィニペグ生まれじゃないし、ブラックベアだから黒い。そしてそもそもがメスだ。残念でならない。

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なにかいいネタはないだろうかとオズボーン通りというところを歩いていると、ちょっと歩いただけで寿司屋を5軒ほど見かけた。

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そして、極めつけはこれ。オズボーン通りで「KAWAII CREPE(カワイイ・クレープ)」なるクレープ店に出くわした。そもそもがフランス文化も色濃く残るウィニペグで、フランス式のガレットではなく原宿式のカワイイ・クレープでいいのだろうか、などとも思ってしまう。

ウィニペグは先住民、フランス、イギリス、混血のメイティ、さらにスコットランド人が入植したところにヨーロッパ各国の移民がやってきたという都市であり、多文化主義を研究するには格好のフィールドなのだそうだ。

そして大昔から人と文化の結節点だったからこそ、外のものを気軽に受け入れる土壌があるのだろう。

まあ、過剰な数の寿司屋と原宿式クレープも、そうした土壌のなせる「わざ」と言えるのかもしれない。でも、もしかしたら「プーさん」同様、僕の単なる思い込みで、本当はあまり関係ないのかもしれないけれど。

文・写真:平間俊行

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