07. 日本酒とはワイン?

バンクーバーが幸せな理由07. 日本酒とはワイン?

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カナダの大地に水田をつくり、苗を植え、実った酒米で酒を作る。バンクーバーで今、材料の100%がブリテッシュ・コロンビア(BC)州産という日本酒がつくられている。

こんなとんでもないことを成し遂げたのが、白木(しろき)正孝さん。バンクーバーのクランビル・アイランドで「酒工房」という店を営んでいる。

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そのこだわりぶりから、会って話を聞くまではよほどの日本酒好きだろうと思っていた。つまり、カナダでは美味しい日本酒が飲めない、だったら自分で作ってしまえー。僕はそんな話だと思い込んでいた。

しかし、僕が会った白木さんは、もともと酒が飲めない人だった。飲まないのではなく、飲めない。だとすると、これは一体どんなストーリーなのだろうか。

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「カナダで暮らして40年以上になるけれど、頭の中も人との付き合い方も自分は日本人です。だからここで生きてきて、ここに日本的な伝統を守っていくようなものを残したいと考えたんです」

白木さんは、「わたしから日本を取ることはできない」とも言う。そうしてたどり着いたのがコメであり、日本酒だった。

しかし、こんなふうに紹介すると、なにやら肩に力の入った信念の人のように思うかもしれない。でも白木さんによれば、自身の性格は「飽きっぽい」とのこと。

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「コメとか酒文化なんて偉そうなことを言っているけど、結局好きなことを追求していただけかもしれない」と笑いながら前言を否定したりもする。

酒づくりのきっかけは2000年、当時勤めていたBC州政府の方針転換によって職を失ったことだった。

そこで日本酒の輸入販売を始めてみたものの、BC州の酒税が高率だったため、あまり売れなかったそうだ。

一方で、自分の土地でBC州産の材料を使って酒をつくれば酒税がゼロになることを知り、白木さんはコメづくりに動き出した。

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カナダと気候が似た北海道の農業試験場を訪れたり、付き合いのあった日本の酒造メーカーに足を運んだりして日本酒のつくり方をおぼえていった。

2011年にコメづくりを開始し、15年に100%BC州産の日本酒にたどりついた。

全工程が手づくり。僕が白木さんを訪ねた日には、ちょうど、日本では既に使わなくなった古い機械を使って「もろみ」を搾る作業をしていた。

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これだけのこだわりを持ちながら、白木さんは「日本酒とはワインだ、というメッセージを発信したい」と語るのだ。

「OSAKE」が入っているのはワインのボトル。それをワイングラスで飲むのが白木さんのやり方だ。

日本食に会う日本酒、というだけではカナダで広く受け入れられない。カナダの食材やカナダの人たちが普段食べている料理に合う日本酒なら、きっとカナダの人たちに喜んでもらえるはず。それが「日本酒とはワイン」の意味だ。

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だから白木さんの店のラインアップには、「にごり酒のスパークリング」などという驚きの日本酒も登場する。

そして白木さんは言う。

「カナダは寛容な国。自分のカルチャーやバックグラウンドはそのまま持っていて結構です、でもカナダ人であることを忘れないでくださいという国です。その中でもバンクーバーは特にオープンで、異質なものを受け入れてくれる土地です」

カナダは、世界中からやってきた人たちが、母国の文化をそのまま大切にできる国。だからカナダと言えば「多文化主義」と言われるし、さまざまなピースが組み合わさった「モザイク」とも表現される。

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その中でも、特にオープンで、とびきり「モザイク」なのがバンクーバーなのだろう。

ワインのように親しまれ、カナダの料理にぴったりあう。しかし「OSAKE」という名の正真正銘の日本酒。

その佇まいこそ、バンクーバーが幸せな理由を物語っているように思えてきた。

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酒工房 Artisan Sake Maker
白木正孝さんがBC州産の酒米で日本酒を製造・販売しているのは、グランビル・アイランドの中でもビール醸造所や劇場などが並ぶエリア。お酒は2カナダドルで試飲できるので、味わってから好みの1本を選ぶのも可能。ご飯として食べるオーガニック米や、酒粕をつかったアイスクリームも人気です。

営業時間 毎日11:30~18:00
1339 Railspur Alley
TEL 604-685-7253
http://artisansakemaker.com/

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