バンクーバーが幸せな理由

08. バンクーバー 居場所のある街

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バンクーバーが幸せな理由を探す旅。その最後に僕が会っておきたいと思ったのは、創業から70年、昔ながらの手作りによるブーツ製造を続けている「デイトンブーツ」の職人さんたちだ。

バンクーバー、そしてブリティッシュ・コロンビア州にとって、林業は昔から変わらぬ最大の基幹幹業だ。

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例えば、バンクーバー発祥の地ガス・タウンは、“ギャシー(おしゃべり)”ジャックと呼ばれたイギリスの船乗りが、1867年に酒場を開いた場所だ。そして、客の多くが近くの製材所で働く人や木こり、さらにその材木を国外へと運んでいく船乗りだった。

デイトンブーツの創業者は、そんな街の一角で木こりの足を守る頑丈なブーツの修理をしていた。

1946年、木こり用ブーツのデザインをもとに、ファッション性の高いブーツを提供する店として創業したデイトンブーツ。最初のモデル「デイトン64」は、創業者がブーツの修理をしていたガス・タウンの番地からとった。

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頑丈で格好いいブーツは警察官や作業員などの間であっという間に人気となる。さらに1965年発売の真っ黒なバイク用ブーツ「ブラック・ビューティー」は最大のヒット商品となった。皮を継ぎ足すことなく、1枚の皮だけで膝まであるロングブーツが作り上げられる。

現在は、ジョニー・デップやアンジェリーナ・ジョリーらハリウッドスターも愛用するおしゃれなブーツとして知られている。

しかし「おしゃれ」であっても、木こりのブーツから生まれただけに、デイトンの代名詞はその「頑丈さ」だ。なにしろかつては、デイトンブーツを履いた人はバーへの入店が禁止され、入口に「NO DAYTON」と掲げられたそうだ。

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もちろん理由は、酔って喧嘩になった時、その「頑丈さ」が“凶器”になるからだ。

ブーツづくりは昔と同じく丁寧な手作業で行う。工程は120もあり、注文から出来上がりまでおよそ12週間もかかるそうだ。その工程を見せてもらえることになった。

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案内してくれるのは、デイトンブーツの若き靴職人、バンクーバー出身のアンドリューさんだ。

もともとスニーカーなどのデザインを勉強したいと考え、靴づくりで有名なロンドンの学校に進んだ。しかし、デザインに加えて実際の靴づくりを学ぶうちに、興味の方向性が変わっていった。

バンクーバーに戻ってデイトンブーツの門をたたき、1カ月間のタダ働きののち、ここで働くことになった。

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そのアンドリューさんが、「アメージング」と言うのが、このアジア系の女性。店の一番の古株だ。年代物のミシンを使い、2枚の皮を素早く、かつ正確に縫い合わせていく。この確かな作業がその後のすべての工程のベースになっていく。

アンドリューさんが「なんでもできる人」といろいろ教えてもらっているのが、イラン人のデイビッドさんだ。テヘランでも靴職人をしていたが、イラン革命を機に国を離れ、今、バンクーバーでやはり靴作りを生業(なりわい)としている。

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「俺の人生で最大のミスは靴職人になったことだ。親父には帽子職人になれ、足元の靴なんて誰も見ないぞと言われてたんだけどね」とデイビッドさんはジョークを飛ばしてくれた。

実は北米には靴づくりを学べる店や学校はない。だからデイビッドさんのようなベテラン職人は貴重な存在なのだ。

同じくイランからやってきた若者がデイトンブーツで働いていた。言葉の問題があるため、職人になるのは、ほかの国からやってきた人にとって1つの道なのだという。

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120という工程それぞれに、役割を持った人たちがいる。そんな作業場を見ていて、なんとなくバンクーバーで暮らす人々の笑顔の理由が分かってきたような気がした。

バンクーバーはカナダの中でも飛び抜けて寛容で、オープンで、若い街だ。だからここにはきっと自分の居場所があるはずだと、誰もが信じられるんじゃないだろうか。

居場所があると感じられない日々はひどくつらいはず。ではその逆はー。きっとそれが、バンクーバーの笑顔の理由なのだろう。

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デイトン・ブーツ(Dayton Boots)
カナダの老舗ワークブーツブランド。全工程が手作りのため量産もしておらず、日本ではなかなか手に入れることができません。ハリウッドスターやアーティストも愛用するこのブーツ、旅の最中に「一生モノ」としてオーダーメイドするのもいいかもしれません。

営業時間
月曜日~水曜日、土曜日 10:00~17:00
木曜日~金曜日 10:00~20:00
日曜日 12:00~17:00
カナダの休日、祝日は休業の可能性あり。(ショップにお問い合わせください)

2250 East Hastings Street
TEL 604-253-6671
https://www.daytonboots.com

文・写真:平間俊行

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