マニトバ ― Heart of Canada

04. 僕にはどうしても食べられない

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今回は、このトップ写真にある「ペミカン」なる食べ物についてお話ししたいと思う。

食べ物といっても、今の世界にペミカンを作ったり食べたりする人はまずいないだろうと思う。なにしろ昔カナダで、ビーバーの毛皮交易が行われていた頃、カヌーでの長距離移動の際に保存食として食べられていたものだ。

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ペミカンがあるとすれば、昔作られて残っていたものぐらいだろう。だから僕はずっとペミカンを見たい見たいと思いながら、これまで一度も実物を見ることができなかった。

ペミカンは実は白人と先住民の混血であるメイティが生み出したものだ。彼らは、レッド川流域で暮らし、春と秋にはバッファローを狩るための旅に出た。ペミカンはもともとその際の保存食だった。

材料はバッファローの肉。まずは干し肉をつくり、ベリー類や脂を混ぜて棒で突いてつぶし、革の袋に詰める。

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旅にはこんなレンズつきの道具を携行し、太陽の光で火をおこしてスープをつくり、その中にペミカンを入れて食べたりしたそうだ。

バッファロー狩りにはペミカン以外にメイティが生み出したもう1つの傑作、レッドリバー・カートが使われた。

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カートには狩りのための道具や食料、そして捕えた獲物などが積み込まれたけれど、すごいのは「水陸両用」という点だ。

川に差し掛かると左右の車輪を外して横倒しにし、浮かべて車体を乗せる。するとカートは浮き輪付きの「いかだ」のようになって川を渡ることができたのだ。

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ところで、当時は「ノースウエスト会社」という会社がウィニペグに拠点を置き、ビーバーの毛皮交易を行っていた。そして毛皮を入手し、運ぶためのカヌーの旅の食料として、いつしかペミカンが活用されるようになったというわけだ。

ペミカンはメイティにとって貴重な収入源だったし、彼らは屈強なカヌーの漕ぎ手としてノースウエスト会社に雇われたりもした。またレッドリバー・カートで会社の荷物を運ぶような仕事もしていたらしい。

だから、メイティはノースウエスト会社と良好な関係にあったわけだけれど、そこに1811年、毛皮交易のライバルである「ハドソン湾会社」の手で「レッドリバー植民地」が建設される。ルイ・リエルが生まれる30年ほど前のことだ。

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事業を主導したのはスコットランドのセルカーク伯という人物。当時のスコットランドは羊の放牧のため農地が次々とつぶされ、土地を借りて工作をしていた農民たちが生活の糧(かて)を失い、困窮していた。

セルカーク伯は彼らを助けるためにハドソン湾会社の大株主となり、のちにマニトバ州となるあたりの土地を同社から買い取り、農民を入植させることにしたのだ。

このストーリーの実に悲しいところは、白人から差別を受けていたメイティの土地に、農地を奪われたスコットランド人が生きるために入植してきた、ということだ。

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しかも入植者たちの耕作はうまくいかず、食料不足を救済するため、植民地の総督はペミカンなどの食料を植民地外に持ち出すこと禁止する「ペミカン宣言」を発し、これに反発したメイティたちが植民地を襲うという事態にまで発展してしまう。

とにかくペミカンは、ウィニペグの歴史やビーバーの毛皮交易と非常に関わりの深い食べ物なのだ。

そして今回、僕はザ・フォークスでのガイドツアーで初めて小瓶に入ったペミカンを見ることができた。実は敬愛する木村和男先生も同じこのツアーで初めてペミカンに出会っている。

僕はガイドの女性から小瓶を借りて地面に置き、何度も何度もシャッターを切った。きっとペミカンに異常に反応する日本人など、木村先生と僕ぐらいのものだろうと思う。

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しかし木村先生はさらに僕の上を行く。先生は著書の中で、「(瓶の中のペミカンを)指ですくってみようとしたら、彼女が血相を変え、あっという間に取り上げられた。まるで毒物みたいな扱いだ」と書いておられる。

先生、すみません。僕は食べたいとか、指ですくってみたいとか、そんな気持ちには全然なりませんでした。

先生、僕はまだまだ甘ちゃんのようです。

文・写真:平間俊行

コメント

  • Bear Walker

    え~~~~!? 
    せっかくペミカンに出会ったのに、食べなかったんですか!?
    でも、写真を撮られたのは流石です。ペミカンの写真は初めて見ました。
    匂いを嗅いだりはされましたか?

    メイティのソウルフード、ペミカン。相当ヘンな味だとは聞いています。
    もしかして、発酵食品みたいに、慣れたらとても美味しく感じるのかも。

    ウィニペグのフォートジブラルタルでも
    セルカークのロワーフォートゲリーでも観られなかったペミカン。
    ザ・フォークスでのガイドツアーに参加すれば拝めるんですね。
    次回ウィニペグに行ったら、参加しようと思います。

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