ずるぎつねの故郷を訪ねて

02. 超リラックス!先住民ホテル

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ケベック市内にある先住民の国

観光客でにぎわうケベックのダウンタウンから、北西へ約10キロ。車で15分ほど走ったと思ったら、そこはもう、ヒューロンの国、ワンダケ(Wendake)だった。

「ケベックの近く」どころか、周囲はケベック市のラ・オート・サン・シャルル区だ。右の地図を見ればわかるように、ワンダケはケベック市のほぼ中央に位置している。

「ヒューロンの国」の正式な名前は「ヒューロン-ウェンダット ネーション(Nation Huronne-Wendat)」。

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ワンダケの「玄関」

「ヒューロン」はフランス人がつけた通称、「ウェンダット」は彼らの自称だ。

ところで、私の趣味は、北米先住民の歴史を調べること。このちょっと変わった趣味、きっかけは他ならぬヒューロンだった。子どもの頃、歴史小説『モヒカン族の最後』を読み、登場する悪役キャラクター、ヒューロン族の「ずるぎつね(原作ではマグア)」に、なぜか強く心惹かれたのである。

そのヒューロン-ウェンダット国が、今、観光の分野で注目を集めていると聞いた。なんでも、カナダの「先住民観光」を代表する成功例なのだそうだ。
数あるファーストネーションズの中で、ヒューロン‐ワンダット国の観光ビジネスが特にうまくいっているとしたら、それはなぜなのだろうか? 

ワンダケに来たのは、「ずるぎつね」の故郷にどっぷり浸かり、彼が活躍したような時代に想いを馳せたかったからだ。それと同時に、今を生きるヒューロンの人たちに会い、彼らの観光ビジネスが成功している理由を知りたいと思ったからでもある。

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オテルミュゼ プルミエ ナシオン

ワンダケに着いた私は、早速ホテルにチェックインした。「カナダシアター」にも既に何度か登場の「オテルミュゼ プルミエ ナシオン(Hôtel-Musée Premières Nations)」だ(日本の宿泊サイトでは「ホテルミュゼ プリミアズ ネーションズ」と表記されることが多い)。

ミュゼは「博物館」。プルミエ ナシオンは英語のファーストネーションズにあたる「先住民の国々」。だから、直訳すれば「先住民ホテル-博物館」だ。

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伝統家屋「ロングハウス」をイメージした客室棟

客室は55部屋。他に広間が5つあり、会議や結婚式、イベント会場などに利用される。

従業員のほとんどをカナダ先住民が占め、経営にあたる理事会は、ウェンダットの人たちが構成する。まさに「先住民のホテル」である。

「オテルミュゼ…」の開業は、2008年。シャンプランがケベックを築いてちょうど400年経った年だ。2018年にようやく開業10周年を迎えることになる。
しかし、歴史こそ浅いが、このホテル、ヒューロン国の観光事業の目玉だという。

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ロビーでは外の風景を楽しみながら寛げる

ホテルを訪ねてみて、まず感じたのは、抜群の居心地のよさだ。
静かで、綺麗で、快適なリゾートホテルという印象を受けた。

ロビーに、にょきっと立つ生木や、薪ストーブから立ち籠める木の焦げる匂いが、「野趣」を演出していた。

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客室は川辺の木立ちに面している

ホテルは、サンシャルル川のほとりに建っている。

全ての客室が川に面していて、客室から、木立ちに縁取られた川辺の風景を眺めることができた。

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ロビーに飾られたノーバル・モリソーの作品

「先住民の経営するホテル」とあって、ロビーや廊下には、カナダ先住民のアート作品が配されていた。

「先住民のピカソ」と評される、アニシナベ(オジブワ)出身の画家、ノーバル・モリソーの作品も飾られていた。

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ヒューロン-ウェンダット博物館

「ホテル-博物館」という名前の通り、「ヒューロン-ウェンダット博物館」も併設されている。ホテルとは渡り廊下でつながっていた。

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博物館内

博物館の建物は燻製小屋をモチーフにしたという。「記憶と知識を保存する」という意味合いがあるそうだ。
館内には、ヒューロン-ウェンダットの伝統文化と歴史、そしてワンダケの地場産業の産品などが展示されていた。

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レストラン「ラトレイト」

ホテルのレストラン「ラトレイト(La Traite)」のシェフは、「先住民料理(Gastronomie des Premieres Nations)」という著書もあるマタン・ガニエさん。

彼が腕をふるった、現代風にアレンジした先住民料理を賞玩することもできる。

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オテルミュゼ…の客室

このように、「先住民らしさ」はしっかりとある。
しかし「先住民のホテル」という物珍しさだけでは、泊まりに来る客は限られるだろう。
ところがこのホテル、客室稼働率がよく、また、数々の賞も獲るなど、成功している。

泊まってみて思ったのだが、「オテルミュゼ…」が人気なのは、「寛げるリゾートホテル」という基本がまずしっかりとあって、それを先住民の文化で味付けした施設・・・だからではないだろうか。

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セバスチャン・ピカードさん

「ケベック州先住民族観光」に勤める、ワンダケ在住のセバスチャン・ピカードさんに、成功の理由を聞いてみた。

彼がまず挙げたのは、立地の良さだ。
ケベックの都心からわずか15分ほどで、喧噪を離れ、ゆったりとした気分に浸れるのだから、とても便利だ。観光客だけでなく、ケベックの住民も気軽に利用するのだろう。

また、セバスチャンさんによると、ワンダケは治安が良く、誰でも安心して寛げることも、評価されているという。

なるほど、立地がよいのは確かだ。しかし、モントリオールやバンクーバーの近くにも先住民のコミュニティーがある。その中で、ワンダケの観光産業が特に成功しているのは、なぜなのか。

一つの理由は、ワンダケの人たちに、起業精神と経営の手腕があったからに違いない。

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セバスチャンさんの話では、ホテルを始めるに当たって、1200万ドル、邦貨にしてざっと10億円ほどの資金を集めなければならなかった。

そんな大金を投資して、「失敗しました」では済まない。

いくら大都市に近くて集客が見込めるといっても、大きなリスクを背負って事業を始める気概がなければ、ホテルを建設しようという話にはならないだろう。

また、せっかくホテルを建てても、経営の手腕がなければ、失敗に終わるはずだ。

では、なぜ、ワンダケの人たちには、起業精神や経営の手腕があったのだろうか? そこには、きっと、ヒューロン-ウェンダットの人たちならではの、何かがあるに違いない。

その「何か」を求めて、ワンダケ探訪はつづく。

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【ホテル近くの「くつろぎスポット」】
■ホテル前
ホテルの敷地でカナダの自然を味わうことができる。
ワンダケ_2 (1415) サンシャルル川の流れ(左)、ホテル前の木立ち(右)

■キャビール・ク―バ滝
ホテルから徒歩10分ほどのところに、「キャビール・ク―バ崖と滝公園(The Park of the Kabir Kouba Cliff and Waterfall)がある。デートにぴったりな場所だ。
水音のシャワーがストレスを忘れさせてくれる(左)、滝の下流は、岩肌を削って流れるサンシャルル川(右)

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ヤナリスクワさん

【文化体験+宿泊セット】
オテルミュゼ プルミエ ナシオンでは、ヒューロンの伝統文化に触れる体験を宿泊とセットで提供している。

冒頭で触れた「語り部」、ヤナリスクワさんからヒューロンの創世記を聞いたのも、そんな企画のひとつ「神話と伝説」に参加してのことだった。ちなみに、ヤナリスクワはヒューロン語で「狼」の意味。

ほかにも、伝統家屋ロングハウスで一夜を明かすプランなどが用意されている。

文・写真:横須賀孝弘

コメント

  • 流れ河童

    カナダの京都という表現に魅力を感じた。大自然の一端も味わうことができそうだ。実はクベック州には別な側面があって訪問を検討している。それはインド発祥のヨガ。
    ヨガの本流とも言える「クリア」ヨガの聖地でもある。インドは6回訪問したけれど毎回苦痛を味わった。ヨガ修行のため滞在したいのだけれど、ためらいと覚悟を要する。
    カナダだったら先進国、安全・安心に滞在できそう。

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