ずるぎつねの故郷を訪ねて

05. 伝統のワザを世界へ

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ワンダケは面積4.4k㎡(少し前まで2.4k㎡だったが、近年土地を買い増した)。ここに約2千人のヒューロン―ウェンダット人が住む。ケベックの都心にほど近いとあって、市内の会社に勤める人も多い。
その中で、ワンダケに根差した企業として頑張っているGVスノーシューズ社を訪ねた。

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スノーシューは北米先住民の発明

スノーシューは、日本では「西洋カンジキ」とも呼ばれるが、実際には西洋人ではなく北米先住民の発明だ。

スノーシューを履けば、深い雪の中を逃げるシカをどこまでも追うことができた。
また、冬に毛皮獣を捕えるための罠を掛けて回るのにも欠かせなかった。

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アレックス・マハーさん

ヨーロッパから来た人たちは、先住民に教わったスノーシューで、雪深いカナダの冬を乗り切った。
やがてスノーシューは、世界の雪国に広がった。
GVスノーシューズの製品も、世界の様々な国に売れている。

GVスノーシューズ社の技術担当、アレックス・マハーさんに、工場を案内してもらった。

GV社は、木枠にガットを張った伝統的なスノーシューから、最先端のアルミ製まで、現在市販されているあらゆるタイプのスノーシューを生産している。こんな会社は、世界にも他にないという。

伝統的なスノーシューにはいくつかの型がある。地域の環境に合わせて違う形が発達したと、アレックスさんは教えてくれた。

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"うちわ"タイプ

藪が多く、雪の深い地域に住むイヌー(モンタネー)のスノーシューは、円い”うちわ”タイプだ。
体重を分散させ、ふかふかとした雪に身体が沈むのを防ぐ。

しかし、幅が広いだけに、これを履くと、脚を大きく開いて「ガニ股」になってしまう。
そのため、長い距離は歩きづらい。

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オジブワ型

比較的開けた土地に住むオジブワの人たちは、細長くて、前後の端が尖った紡錘形タイプを愛用した。
クロスカントリースキーのように使って、長距離を楽に移動できる。

ただ、長いだけに、茂みが多いところで向きを変えようとすると厄介だ。

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ヒューロン型

ヒューロンのスノーシューは、水滴型。後ろに突き出た部分があるので、安定し、長距離を歩ける。また、前が丸いので藪での方向転換も楽だ。
だから、開けた土地にも、藪の多いところでも使えるという。

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GV社の壁に展示されている最新型スノーシュー

伝統的なスノーシューは、あまり音を立てないで雪の上を歩けるので、今もハンターなどに人気があるとの話。

とは言え、GV社の主力商品は、やはりアルミやカーボンで作った最新型スノーシューだ。

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工場内の組み立て作業場

世界で市販されるスノーシューは1年に5~60万足。同社はその1割に当たる5~6万足を製造し、販路はカナダだけでなく、日本を含めて15の国々に輸出しているそうだ。
カナダや北欧の軍隊にも納品しているとのこと。

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ワンダケには、モカシンの工場もある。
モカシンは、北米先住民の伝統的な靴だ。鹿などのなめし革で作られた、柔らかなモカシン靴は、足音を忍ばせて獲物を追うのにも向いている。いわば元祖スニーカーだ。

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ビーズとヘラジカの毛を使った装飾

ワンダケのバスティン産業(Bastien Industries)は、現代風にアレンジしたモカシンを製造し、「ハイアワサ(HIAWATHA)」のブランド名で販売している。

特に、ヒューロンに伝わる、ヘラジカ(ムース)の毛を使った装飾は、同社ならではだ。

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ジネット・バスティンさん

社主のジネット・バスティンさんの話では、モカシンの製造は一家の家業で、会社は1878年の設立。
現在の従業員は10人、年産は4万5千~5万足だという。主な販路はカナダとアメリカだが、日本にも輸出しているとのことだった。

北米先住民から世界に広まったモカシン。
先住民の国で、彼ら自身が作るモカシンには、履き心地の良さだけではない、何だかワクワクするような、特別の値打ちがあるように感じられる。

ところで、ワンダケの人たちは、次章に述べるように、17世紀末に現在の居住地に移り住んできた。
当初は、伝統的な農耕をつづけたが、付近の土壌は痩せていて、収穫は乏しかった。そこで、18世紀に入ると、毛皮や木材を売って暮らしを立てるようになった。

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ワンダケ内の作業場でスノーシューを作るヒューロンの人たち。20世紀初め頃に撮影

さらに、18世紀の末ごろには、カヌーやスノーシュー、モカシンなどを製造して、ケベックで売りさばくようになった。その方が、毛皮や木材より儲かったのだ。

ワンダケの伝統産業は、このようにして誕生したのである

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【ユニーク・ショッピング】■材料店「インディアン・クラフトメン」(The Indian Craftsmen of Quebec)
…先住民の工芸家に材料や素材を供給。ワンダケの東急ハンズ?
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皮、ビーズ、動物の爪など、クラフト材料が揃う(左)、品数が豊富で、見飽きない(右)

■ギフトショップ
「グロルイ スノーシュー&クラフト」(Raquettes et artisanat Gros-Louis)
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いろいろなクラフト類がずらり(左)、スノーシューは、伝統型も最新式も各種揃う(右)

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「スターウォーズ」ファン御用達のショップ

ギフトショップの隣は、店主が趣味で作った(?)「スターウォーズ」グッズの専門店。

店内には、スターウォーズ関連の大小さまざまなフィギュアが、所狭しと陳列されていた。ワンダケのアキバ系?

文・写真:横須賀孝弘

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