マニトバ ― Heart of Canada

12. なぜ「カナダ」なのか

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いつのまにか僕はイスに座ったまま、うたた寝をしていたようだ。気がつくと外は真っ暗で、列車はどこかの駅に停車していた。

運転士や乗務員の休憩のための停車なのだろうか。動き出す気配がまったくしない。

他の乗客は既にベッドを下ろして安眠しているに違いない。そして眠りこけた僕はというと、乗務員さんのノックに気づかず、ベッドを下ろしてもらえないまま放置されたと思われる。

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ベッドはこんな金具を穴に差し込んで回さないと降りてきてくれない。指を突っ込んでみたもののどうにもならず、何度か乗務員さんを探しに行ったけれど姿は見えなかった。

面倒だからこのまま寝るか、とイスに座って目をつぶってみたけれど、やはり寒いし体の節々もそこそこ痛い。

こうなってしまうと、もう寝付けない、などと思っていたにも関わらず、いつのまにかウトウトしたのだろう、気が付くと列車は再びガタガタと動き始めていた。再度のうたた寝で体がさらにミシミシいっている。

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深夜というか未明になって、ようやく乗務員さんと出会い、ベッドでの安眠にありついた。そして数時間。目を覚ますと、明るくなった窓の外には7月のマニトバの青空が広がっていた。

緑の豊かさによって、既に自分が秘境から遠ざかったことが実感できる。そして車窓には、延々と黄色いキャノーラ畑ばかりが続くようになってきた。

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よく見ると、黄色い畑の中を鹿が飛び跳ねている。実はこの光景、このあとも列車の中から何度か見かけることになる。

鹿がキャノーラ畑を好きなのか、キャノーラ畑ばかりだから必然的に畑を横切らざるを得ないのか、それは定かではない。どっちなんだろう。

広大な大地に小麦畑や黄色いキャノーラ畑が広がるマニトバ、そしてサスカチュワンとアルバータは「プレーリー3州」と呼ばれている。

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この見事な穀倉地帯を生み出したのは、船で大西洋を渡り、ぎゅうぎゅう詰めの移民列車に何日も揺られ、ようやくウィニペグ駅に到着した移民の人たちだ。

同じ列車だけれど、移民列車とは比較にならないほど快適なVIA鉄道に揺られながら、僕はカナダを旅することの意味を考えていた。

あのイケメン、カナダのジャスティン・トルドー首相は、「多様性はカナダの強みである」と言っている。つまり、世界中のさまざまな国から移民が来てくれることがカナダの活力になっている、ということだ。それは150年前の建国のころも今も変わらない「カナダ」らしさだ。

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現在のカナダは5人に1人が国外生まれで、英語とフランス語だけでなく200の言語が母語として使われている。

建国から150年間で受け入れた移民の数は約1500万人。ここ15年間では370万人以上がカナダの新規永住者となっている。

カナダは毎年、3600万人超の総人口の約1%を目安に、コンスタントに移民を受け入れ続けている。その「多様性」が生み出した結果と言っていいと思う、「移民・難民・市民権大臣」はソマリア出身で、難民としてカナダにやってきた方だそうだ。

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「国防大臣」と「中小企業・観光大臣」は、ともにインドからカナダに移住してきた。「女性の地位大臣」はアフガニスタン出身の女性。やはりかつては難民だったと聞く。

そして、僕が乗っているこの列車は、かつてのカナダ経済の「エンジン」、毛皮交易に携わった先住民の暮らしを支えるために走り続けている。

きのうの朝5時すぎにギラムを出発した列車も、そろそろウィニペグに近づいてきた。窓からはレッド川を望むザ・フォークスも見えてきた。もうすぐ夜の9時になろうとしている。36時間の予定はおよそ40時間の旅として終わりを迎えることになりそうだ。

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カナダでは、さまざまな国の人々、そして先住民やメイティが暮らすことによっていろいろな出来事や矛盾が引き起こされてきた。

でも、そこから逃げずに正面から向き合い、建国150周年の今も「多様性」を活力にし続けているのもカナダであり、その象徴的な場所こそが“Heart of Canada”、マニトバなんだろうと思っている。

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「秘境」を走る列車の名前を伝え忘れていた。僕を乗せた「ハドソン・ベイ号」は、遅れに遅れてウィニペグ駅のホームに滑り込んだ。

いつも温かな方へ向かおうとし続けていることがカナダの魅力だと思う。

そして、それを感じることこそ、僕がカナダを旅する意味なのだと、“Heart of Canada”は改めて気づかせてくれるのだ。

文・写真:平間俊行

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