恐竜と受難劇

恐竜と受難劇

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アルバータ州の南にドラムヘラーという町がある。そもそもアルバータは昔海底にあり、海底動物や貝類が石油と化して、人類が今日までに使った以上の石油が埋蔵されているという。

何億年も昔、現在のドラムヘラー一帯には恐竜がのし歩いていていたと推測されている。その証拠として40種類にも及ぶ恐竜の骨が此処で発掘されている。現在のドラムヘラーは非常にユニークな地形で、こんなところを恐竜がのし歩いていたと想像したくなるが、実際には恐竜が歩き回っていた時代は海からの砂州が広がっていて現在の地形とは全く異なっていた。現在の地形については後ほど語ろう。

恐竜と受難劇-イメージ1

ともかくプレートが動いて海底が押し上げられて、海とは関係のない内陸アルバータ州のドラムヘラーに恐竜の骨発掘されているのであるから面白い。最近は恐竜の骨を岩から何年もかけて掘り出し、剥がしている専門家の姿を見せてくれるマイクロバスでの旅があるが、旅行者が骨を見付けてもそこから持ち出すことは禁止されている。だが、この見学は専門家でなくても面白い。実際に恐竜が歩いていた姿を想像するのはいとも簡単だからだ。あまりにも大きく、あまりにも奇異な骨からさもありなんと思えるのである。

近くのロイヤル・ティレル博物館を見学した後に行くと、ますまず迫力をます。サボテンやチョロチョロ歩くトカゲなどを見掛けるとそれを想像で一寸大きくすると恐竜を彷彿させる。汗を流して掘り出し丁寧に削りはがしている専門家たちが親切に説明をしてくれる。そこを出るとタイムスリップをしてきたような感覚に陥るから不思議だ。

恐竜と受難劇-イメージ2

-受難劇-
恐竜のドラムヘラーで受難劇?と思われる方もいるだろうが、これは知る人ぞ知る、それでいてこのユニークな背景を背に演じられる受難劇がまた非常に印象的なのである。ドイツの Oberammergau の受難劇ほど知られていないが、人口8000人余りのドラムヘラーで、毎年町民全員参加の受難劇が演じられる。背景がエルサレムに似ていることもあって1994年に始められたのが発端のようだ。

受難劇はご承知のように新約聖書のユダに裏切られたキリストの最後の場面である。新約聖書、マルコ伝 (これは大抵のキリスト受難の映画やミュージカルはマルコ伝から取られているという講義による。)あたりを日本語で前もって読んでおけば英語が分からなくてもだいたい内容は把握できるはずである。

恐竜と受難劇-イメージ5

キリスト教信者であろうとなかろうと、誰でもがキリストが経験したイバラの道を大なり小なり味わったことがあるかもしれない。キリストの受難はキリストのアイデンティティーとの葛藤とも言えよう。すなわち私たち誰もが「自分のしている事は正しいであろうか」と自問したことがあり、そして大なり小なり自分に課せられ、解答の出ないある種の苦しみの十字架を背負ったことがあるはずである。自分の出した解決に対する葛藤、自ら辿り着いた結果への不安または後悔など全てがキリストの受難と結びつく。だから、受難劇を自分の身に置いてみるとキリストの苦しみが自分の苦しみと重なり、事実となって力任せに押し寄せてくる。そして十字架上の苦しみが、人類を救う為にキリストが私達の犠牲になったことへの感謝と復活への希望となって、素朴な不思議な地形を背景にした最後のシーンに溢れ出るのである。つまり、苦しみ、悲しみ、喜び希望は普遍的な物であるから宗教に関係なく、この古い物語に誰もが何かしらの共感と感動を味わう。

これはバッドランドと呼ばれる何万年も洪水、氷河などにさらされて出来たこの地の非常にユニークな地形を背景に行われる野外劇である。小さなこの町の人々がこぞって出演し、演出し、舞台を作り上げ、数々の馬や犬も登場する。最も印象深いのが自然を見事に取り入れた演出である。背景の合唱隊はその年に寄ってカルガリーや他の都市のプロを使う。これだけ多くのコーラスの練習は時間的にも人数的にも無理があるのであろう。

受難劇はカルガリーの最大の西部の特徴を活かしたお祭り、スタンピードの日にちと並行して10日間行われる。2015年は7月10日から26日の9日間。素人の劇であるが、自然を最大に使ったこの野外劇はプロにも負けない。素人といえども、20年もの経験を経ている故、身についた力強さがある。ユニークな背景も手伝い二千年も前の世界に吸い込まれる様な気がする。時には自然が必ずしも偶然とは言えない役割を果たし、キリストの十字架上の死と同時に黒雲が覆い、稲妻が走り、雷が鳴る事すらある。私が行った時に2回とも偶然にそれがおこった。驚くべき現象だと思った。もっともこの地の7月の天候ははいとも変わりやすいことにも繋がっているのであろう。

自然の中なので、即席のホットドッグ屋などの屋台も立つが、お弁当を用意して近辺の公園で、ピクニックを楽しむのも思い出になる。野外劇なので、雨が降ることもあるが、この辺の天候は変わりやすので、予定していた時間より早く、または遅く上演されることもあることを覚えておこう。

コメント

  • kuroe jinniti

    創世記とそのままに つながっているような力を感じさせる場所に 私も行って祝福されたい。

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