高所恐怖症、気球に乗る(1)

忘れられないモントリオール

高所恐怖症、気球に乗る(1)

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2018年6月、成田空港と「北米のパリ」モントリオールを結ぶエアカナダの直行便が就航する。

これまでケベック州のモントリオールに行くには、隣のオンタリオ州にあるトロントで乗り継ぐ必要があったけれど、直行便によって日本とモントリオールは距離的にも気持ちの面でもぐっと近くなるはずだ。

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モントリオールと言えば、まさにフランスを思わせる趣ある石畳の町並みや、映画「タイタニック」の主題歌を歌ったセリーヌ・ディオンが結婚式を挙げたノートルダム大聖堂などが知られているかと思う。

しかし、僕にとってのモントリオールの思い出と言えば、まずは何と言っても熱気球なのだ。

カナダの取材旅行ではたびたび起きる出来事なのだけれど、高所恐怖症である僕がなぜか凍った滝を登ったり、崖から川に飛び込んだりすることがある。どうしてそんなことになってしまうのか、僕にはいまだによく分からない。

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2014年の秋、とにかく僕はモントリオール郊外で熱気球のツアーに参加し、上空から紅葉のケベックを取材することになったのだ。

そもそも高所恐怖症なのだから熱気球にはまったく馴染みがなく、見るものすべてが初めての出来事だった。

まだ暗さが残る早朝、芝生の空き地にトラックがやってきて、荷台から巨大なバスケットのようなものが次々と下ろされた。どうやら今朝は計4つの熱気球にお客さんが乗り込み、空の旅を楽しむようだ。

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軽量化のためなのだろうが、この人が乗るところは、「ごついカゴ」といった感じで、強度は大丈夫なのだろうかと心配になってくる。

準備としてはこの「カゴ」を横倒しにして風船部分をつなぎ、勢いよく炎を向けて中の空気を暖めるという寸法だ。

実際に「カゴ」に乗り込んでみると中はかなり狭くて、まるでぴったりはまって動けない「テトリス」のパーツのような気分だ。

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乗客全員が「カゴ」に乗り込み、注意事項の説明などを受けたあと、熱気球はふわりと浮き上がり、上空へとゆっくり上昇し始めた。

この窮屈な状態で紅葉の写真を撮らなければならない。

ただし、窮屈だからかえって幸せ、という輩(やから)もいるようで、フランス系のカップルだと思う、隣では2人で窮屈な「テトリス」状態を楽しんでいる。面倒なことだと思う、まったく。

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すると男の方が僕の肩をつつき、何やら下を指差した。フランス語は分からないが、どうやら眼下の川の水面に気球が映っているから撮ったらどうだ、とアドバイスしてくれているようだ。

確かにきれいではあるが、下を見ると余計に恐怖心が募ってくる。怖い。

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ふと横に目を転じると、すばらしい光景が目に飛び込んできた。昇り始めた太陽をバックに、3つの気球がゆっくりと朝の空を進んでいる。

そのうちに、今度はほかの気球との距離が縮まり、オレンジ色っぽい気球が間近に見えるようになった。

隣のフランス系カップルが少々面倒ではあるけれど、それさえ除けば僕の周囲はまったくもって壮大、かつ清々しい雰囲気に包まれている。

自分で希望したわけではないけれど、生まれて初めて気球に乗ってみて本当によかった。こんな景色はそうそう見ることはできない。もちろん、かなり怖くて腰が引けているけれど。
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そう言えば以前、ワイヤー1本にぶら下がって猛スピードで森の中を移動するアクティビティ「ジップライン」に誘われたことがあるけれど、いつかはこんな感じでチャレンジすることになるのだろうか。

ああ、そうか、怖いけれど何事も経験だなあ、などと最後には妙に受け入れてしまうから、高所恐怖症なのに高所取材がセッティングされてしまうのかもしれないなあ。(続く)

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