忘れられないモントリオール

高所恐怖症、気球に乗る(2)

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高所恐怖症、気球に乗る(2)-イメージ1

身動きのとれない「テトリス」状態で上を見上げると、気球が大きく膨らんでいるのが分かる。この膨らみこそ、落下はしないであろうという大きな安心材料だ。

向こうにはやはりオレンジ色の気球が、伴走するかのように飛び続けていた。

気が付くと、気球は徐々に下降を始めている。そう言えば、着陸は、ただただ農地にドスンと降りるだけだと聞いた。

しかも何回かバウンドするはずだから、着地の瞬間は「カゴ」の縁にしっかりつかまっているようにとも言われている。ちょっと嫌な予感がしてくる。

高所恐怖症、気球に乗る(2)-イメージ2

朝靄がかかってはいるものの、高度が下がったおかげで見事な紅葉が少し鮮明に見えるようになった。

農地としっかり区切られながら、その区画内には紅葉した木々がびっしりと生えそろっている。

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日本でも航空写真で整然と並んだ田畑を見たことがあるけれど、真下に広がるのは小麦畑だろうか、本当にきれいな光景だと思う。

もとは森だったのか荒地だったのか分からないけれど、人が手をかけて耕し続けた結果が、この見事な農地となって広がっているのかと思うと実に感慨深い。

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さあ、そろそろ着地のようだ。お隣の黄色い気球も、紅葉の森に包まれた同じ農地に降りるようだ。

着地の瞬間は危険だから、きっと「さあ、気をつけて!」という掛け声があると思いこんでいたら、突然ガツンという衝撃が走り、事前の説明通り、「カゴ」がゴワン、ゴワンと数回バウンドした。

油断していたため、足のスネを「カゴ」の内側にしたたかに打ちつけてしまった。ものすごく痛い。

それでも急いで「カゴ」から抜け出し、痛みをこらえながら自分が乗っていた気球から距離を取り、カメラのシャッターを切った。

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それにしてもスネが痛い。高いところでの取材って、最後はいつもこんなことになる。凍った滝を登った際は、見事に足の親指の爪を剥がしてしまったのを思い出した。常に腰が引けているのがケガの原因だろうか。

地上に着いた気球は、出発前とは逆に「カゴ」がはずされ、風船部分が空気を抜かれて地面に横たえられた。

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すると、なんだか分からないが、スタッフから「さあさあ、みんなも片付けて」みたいに言われ、乗客も風船部分をたたむ手伝いをさせられることになった。客を働かせるなんて、一体どういうシステムなんだろう。

そう思って改めて見てみると、どうもスタッフのみなさんはご高齢というか、たぶん仕事は既にリタイアされている年齢の方が多いようだ。

人生の大先輩たちが楽しく気球ツアーのスタッフを務めておられるらしい。こうなると、システムが分からないなどと言ってはいられない。彼らこそがルールブックなのだ。

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すると今度はワインのボトルが出てきた。そして、カップを手に乗客全員が並ばされ、なにやらスタッフによる詩の朗読みたいないものが始まった。

フランス語だから何を言っているのか分からない。まあ、英語だって分からないが。

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とにかく何かに感謝し、明るく乾杯するらしい。そして、乾杯のあとには“スケジュール感ゼロ”な感じで勝手な雑談が始まった。なんとまあ、いいかげんな。「終了予定時刻」とかはないのだろうか。

フランス系の人は、とにかく人生を楽しむ天才だ。何しろ彼らの好きな言葉に「Joie de Vivre」(ジョワ・ド・ヴィーヴル)というのがある。生きる喜び、みたいな意味だ。

そして、モントリオールのあるケベック州は、カナダの中で最もフランス系の人が多い土地。だから、とにかく明るく楽しんですべてを受け入れるのが基本なのだ。

文・写真:平間俊行

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