忘れられないモントリオール

愛され続けるアップルパイ

お気に入りに追加
愛され続けるアップルパイ-イメージ1
写真:Stephane Lemire

6月に成田からモントリオールへの直行便が就航することで、これからはモントリオール周辺のエリアへも足を運びやすくなるに違いない。

そんな中、行くべき候補に挙がってくるであろう場所がモントリオールの南、アメリカとの国境にあるイースタンタウンシップスだ。

このエリアはその昔、「ロイヤリスト=王統派」と呼ばれる人々が、イギリスからの独立を企てるアメリカから逃れてやってきた土地だ。

愛され続けるアップルパイ-イメージ2

「ロイヤリスト」とは、イギリス国王を支持し、アメリカの独立には反対だった人たちと考えればいい。だから彼らは国境を越え、イギリスとともにあるカナダへとやってきたのだ。

そして今のイースタンタウンシップスは言うと、メープルシロップを生み出す砂糖カエデの森やリンゴ畑が広がる農業の盛んなエリアだ。

昔ながらのメープルシロップづくりにこだわり、僕が尊敬してやまないアンドレさんのシュガーシャック(砂糖小屋)があるのも、このイースタンタウンシップスだ。

愛され続けるアップルパイ-イメージ3

そして、カナダシアターでも以前紹介しているけれど、ここでは「レ・ヴェルジェール・ドゥ・ラ・コリン(Les Vergers de la Colline)」というリンゴ農家が、地元の人たちが愛してやまないアップルパイを作っている。店頭では、カゴに入ったきれいなリンゴが僕を迎えてくれた。

アップルパイの話をする前に、リンゴを発酵させてつくるお酒「シードル」についても触れておきたい。

カナダでは結構、シードルに出会うけれど、日本ではそれほど馴染みがないように思う。お酒を飲むのがかなり好きな方である僕ですら、日本ではあまりシードルにお目にかかることはない。

愛され続けるアップルパイ-イメージ4

あるいは僕が出入りしないような上品な店では、みんな普通にシードルを飲んだりしているのだろうか。

シードルの製造方法は、簡単に言ってしまうと大量のリンゴをつぶし、タンクの中で発酵させることでお酒にするということのようだ。

だから店の奥にある製造場では、つぶされる前の大量のリンゴを見ることができたし、あたりいっぱいにリンゴの甘酸っぱい香りが漂っていた。

愛され続けるアップルパイ-イメージ5

試飲させてもらったシードルは、リンゴが持っていた甘さと酸味を受け継ぎつつ、熟成された香りを漂わせていた。そしてアイス・シードルも本当に美味しかった。

メープルシロップと並ぶカナダ土産の定番、アイス・ワインをご存知の方も多いと思う。アイス・シードルはその「リンゴ版」だ。

愛され続けるアップルパイ-イメージ6

秋に実った葡萄の実を収穫せずにそのままにしておくと、氷点下の冬を迎えて凍ったり溶けたりを繰り返し、やがて実は干しぶどうのようになり、中に濃厚な葡萄のしずくが蓄えられる。そこから作られるのが写真のようなアイス・ワインだ。

アイス・シードルは同じことをリンゴで行う。どちらも手間のかかる高級品だ。

そしてシードルに負けないぐらい僕の印象に残っているのがこの話の本題、アップルパイだ。それほど甘いもの好きというわけではない僕にとっても、ここのアップルパイは忘れられないほどに美味しかった。

愛され続けるアップルパイ-イメージ7

このパイには、リンゴが持つ酸味と、あのシャリシャリとしたリンゴの食感がしっかりと残っていた。もちろん、カナダのことだからかなりの甘さではあったけれど。

甘くて柔らかいリンゴは生で食べるのに向いていて、アップルパイにはもう少し酸味があってシャリシャリ感のあるリンゴがちょうどいいということだろう。

「レ・ヴェルジェール・ドゥ・ラ・コリン」の店舗の周囲には広大なリンゴ畑が広がっていた。地域の人たちの目の前でリンゴがつくられているのだから、安全安心な食べ物であることは間違いないと思う。

店には次々と地元の人がやってきて、ホールでアップルパイを買っていく。この店のアップルパイが、地元の人たちから愛され続けていることがひと目で分かった。

愛され続けるアップルパイ-イメージ10
写真:Claude Parent

メープルシロップもシードルもアップルパイも、僕らが旅の中で味わうべきは、地元の人たちに愛されている食材や料理なのだと改めて思った。

「お土産用」につくられたものを否定はしないけれど、長年、地元の人たちが食べているものを味わいたい。だって直行便で就航で便利になったとはいえ、せっかくはるばる日本からモントリオールまでやって来たんだから。

文・写真:平間俊行

コメントを残す