写真家・吉村和敏のカナダ新絶景

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絶景。それは、世界第2位の広大な国土を誇り、雄大な自然を有するカナダではありふれた光景かもしれない。しかし、カナダには日本ではあまり知られていない、あるいは私たちが気づいていない絶景がある。 かつてカナダに暮らし、現地に精通している写真家・吉村和敏は、一年をかけて西から東、南から北へ大陸を踏破した。そこで見つけたのは物語を語りかける数多くの”新絶景”。そんな新時代に訪れてみたい新絶景の中から、今回は吉村和敏がおすすめするスポットを写真とともに紹介する。

 


 

1.BC桜
1. バンクーバーの八重桜
これまで何度かバンクーバーを訪れたことがあるが、実は春シーズンの訪問は初めて。4月下旬に訪れ、現地観光局の「桜ガイド」をもとに桜の名所を巡った。写真は住宅街で撮影した一枚。色鮮やかな八重桜が美しい。そしてその前を歩く地元の人々の日常の姿が、桜の花が咲き誇るバンクーバーの暮らしを感じさてくれる。
日本人は、こじんまり咲き、儚く散ってしまうソメイヨシノやオオヤマザクラを好むが、バンクーバーで暮らす人々は、色鮮やかな「八重桜」を好む傾向がある。ちなみに、バンクーバーの桜は、第一次世界大戦の後、戦死した兵士たちの慰霊のために日本から寄贈されたのがきっかけ。今では世界中の人々を魅了する新絶景だ。

 

2.BCキャピラノ
2. キャピラノ吊り橋公園(ツリー・トップ・アドベンチャー)
バンクーバー中心部から車で15分、まるで都会にいるとは思えないほど自然豊かな場所、キャピラノ吊り橋公園がある。ここは、長さ140mを誇る吊り橋で知られているが、橋を渡って奥まで進むと、ユニークなトレイル、ツリー・トップ・アドベンチャーがあり、森林浴を楽しみながら、空中散策の気分を味わえる。地上を歩く時では感じられない空気や匂いを感じることに感動する。
ちょっと歩いたら、少し立ち止まってシャッターを切ってみよう。森と太陽光のコントラストは最高に美しい。ここで体験した空気の新鮮さや森林浴をする気持ち良さを、いつでも感じさせてくれるだろう。

 

3.BCトフィーノ
3. トフィーノの巨木
バンクーバー島の西海岸にあるカナダのビーチリゾートとして有名なトフィーノ。今回訪れた時期は冬が近かったが、波が打ち寄せる静かな海岸には多数のサーファーが波乗りをしていた。
今回、私が選んだのはビーチではなく、樹齢1000年の巨木。ここは、伐採されてしまいそうな危機もあったが、市民の運動によって守られたという。写真の下側に写っているトレイルに注目してほしい。自然の力で盛り上がっているのが見える。木の成長を感じる。それが、この風景の最大の魅力。ちなみに森の巨木を撮影するなら、コントラストが弱くなる雨天がおすすめ。晴天ならサーフィン、雨天なら森を散策。トフィーノに外れはない。

 

4.AB-アイスバブル
4. アイスバブル(アブラハム湖)
人間では表現できない美しさ。自然には勝てないと感じる美しさ。それが冬のアブラハム湖で出会ったアイスバブルだ。これは、湖底の植物から発生するメタンガスが湖面にたどり着く前に凍り付いてできる現象。まるで時が止まっているかのような感覚になり、氷点下の寒さを忘れてしまう。これまで数多くのアーティストが訪れており、インスピレーションの源泉になっているという。
写真をアップで見ると、大きな泡から、さらに小さい泡が出ていることもわかる。ちなみにカナディアン・ロッキーには、他にも同じ現象が起こる湖はあるが、ほとんどは雪が降り積もって、その姿を見せることはない。ここは、風が吹き抜けるため、この芸術的な美しさを見せてくれているのだ。毎年1月末~2月末までが見ごろ。

 

5.AB-lakelouise
5. レイク・ルイーズ
レイク・ルイーズは「カナディアン・ロッキーの宝石」と称され、夏になると美しい風景を求めて、世界中の観光客がやってくる。しかし、山が雪化粧をする冬こそ絵になる。この写真は、午前10時頃に撮影したもの。
こんな白銀の雄大な絶景の中、目の前をクロスカントリーで進む人々の姿が、人と自然の共存を感じさせてくれる。わずかに差し込む太陽の光。そして霧が晴れる瞬間には格別な美しさがある。マイナス20度を体感しながら、朝焼けのレイク・ルイーズの絶景を。

 

6.AB-カウボーイ
6. カウボーイ
絶景とは、自然や建物によって描かれる素晴らしい景色だが、時に人物が見せる表情が「絶景」のようなインパクトを与えることがある。アルバータ州の牧場を何軒か巡ったときに出会った、この男性はそんなワンシーンのひとつだ。今でも畜産業に従事している人たちには、昔ながらのカウボーイスピリットが脈々と流れており、私たちは「カウボーイ」と呼んだりする。牧場で出会った男たちのカッコよさは、まさにカウボーイの姿だった。

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なお、カルガリーでは、毎年7月にカウボーイの祭典「カルガリー・スタンピート」が開催されるが、他の地域でも負けず劣らずのロデオ大会が各所で行われている。この写真は、私自身がロデオ体験をした”貴重な”一枚だが、想像以上に興奮してしまった。

 

 

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7. ドーソン・シティ
8月頃に訪れたドーソン・シティ。19世紀末のゴールドラッシュ当時の雰囲気が残る町は、道路がコンクリートで舗装されていないので、車が通るたび土ぼこりが巻き起こる。それはまるで、開拓時代にタイムスリップしたかのようだ。
この写真は、夕暮れ時に撮影したもの。ホテルの明かりから、地元の人々の活気を感じる事ができるが、白夜のような、青い空の美しさは、言葉では表現することができない。

 

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8. トゥームストーン準州立公園
写真家・星野道夫氏のツンドラの写真にインスピレーションを受け、ずっと撮影したいと思っていた場所。前日に雪が降ったおかげで、雪化粧した山を背景にした写真を撮影できた。東部カナダの紅葉とは違ったスケール感がある。
今回は車で行ける範囲内での撮影だったが、いずれはキャンプをしながら奥地も目指したいと感じた。

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トゥームストーンでは思わぬ来客も。車を出て、周辺を少し撮影して車内に戻ると、開いていた窓から一羽の鳥がやってきた。エサを期待していたのか、人懐っこい鳥だった。人と動物が共存していることを再認識した瞬間だ。

 

7.ナイアガラ
9. 冬のナイアガラの滝
世界三大瀑布のナイアガラの滝は、滝の一部が凍てつき、まるで映画「アナと雪の女王」のような神秘的な世界が広がる。私自身、ナイアガラの滝はカナダの中でも最も多く訪れた場所で、これまで10回くらい訪問しているが、おすすめは冬だ。
冬になると木々に細かい水滴が付き、その水滴が凍って美しい景色を作り出している。カナダ滝もアメリカ滝も、滝の幅が広く、一枚の写真に収まり切らないほど。この写真を見ていると、神秘的な絶景と滝の轟音を思い出すことができる。

 

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10. サウザンド・アイランズ
オンタリオ湖の東側を流れるセント・ローレンス川には、無数の島々が浮かぶ景勝地があり、サウザンド・アイランズ (1000の島々)と呼ばれる。この写真は、7月初旬にヘリコプターから空撮したもの。空から見ると「1000の島々」と呼ばれる理由がわかり、特別な感動を味わえる。
もちろん、ボートクルーズも外せない。キングストン発やガナノクエ発など、いくつかのクルーズがあるが、食事などたっぷりと満喫したい方にはキングストン発がおすすめ。クルーズ船から島にある家を眺めるのは楽しく、中でも豪華なボルト島は圧巻だ。夏になると、セント・ローレンス川の風を感じてみたくなる。

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ヘリコプターから降りた後のワンショット。いかに感動したかが伝わると思う。

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キングストンで味わったビーバーテイルズ。独特な甘さで、地元の人々にとても人気だ。

 

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11. トロント(トロント・アイランドフェリー)
冬のトロント・アイランドフェリーから撮影したトロントの風景。この写真のポイントは、凍結したオンタリオ湖にできたフェリーの道。そしてその先に見える街並みは、不動産バブルの影響で常に変化しているので、二度と同じ風景を見ることはできないかもしれない。
フェリーのデッキでガリガリと氷を削る音を聞きながら、対岸のトロント島へ行くのは冬ならではの旅。ちなみに私はここで最終便に乗り遅れそうになり、”冷や汗”をかいた経験をした。

 

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12. ノートルダム大聖堂(モントリオール)
すでに観光名所のひとつとして知られているが、私が訪れた時も平日にも関わらず、想像以上の来場者で賑わい、写真撮影のために三脚を立てるのに苦労したことを覚えている。
この写真は何といっても教会内の「青」が印象的だ。写真集「Du Canada」の表紙で青色が映えるウォータートンレイクの写真を使用したが、裏表紙にも青を使用したいと考えていたところ、この大聖堂で青が映える美しい写真を撮ることができた。
この写真を見ていると、1000本のパイプオルガンが奏でる音楽が聴こえてくる。

 

10.PEI13. プリンス・エドワード島の民家
私にとって第2の故郷ともいえる、プリンス・エドワード島が30年前とどのように変わったのかを知りたくて、再訪した。この写真は7月初旬に撮影した農家の風景。人工物によって島の景色が変わったという印象はなかったが、一番感じたのは木の成長。以前の景色と比べると、木の存在感が強くなり、見えていたものを遮るようになったから。風景を変えたのが人ではなく、自然であることを感じさせられた。
こんな何気ない風景が絵になるのも、世界で一番美しい島と称されるプリンス・エドワード島の特徴だ。

 

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13. ペギーズ・コーブの灯台
ノバ・スコシア州のライトハウスルートにあるペギーズ・コーブの灯台は、映画のシーンで登場するなど、人気スポットのひとつ。もちろん、灯台そのものも美しいが、こうやって花崗岩に立つ姿を写すことで、この場所の風情が伝わってくる。
そして灯台の周りにいる人たちが絵を描いたり、写真を撮ったりしている姿を見ると、ドラマを感じることができる。朝焼け、日中、夕焼けなど、さまざまなシーンがあるが、個人的には日没の1時間後がおすすめ。夜空に光輝く星空と灯台という構図は、また違った感動がある。


もっとカナダの絶景に触れたい方は、2019年5月10日(金)から5月23日(木) まで、FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)で開催する吉村和敏写真展「Du CANADA」へ。ここで紹介した写真の他にも多くの絶景を展示している。
撮影はすべて最新の中判デジタルカメラによって行われ、その繊細な描写力によって現地の空気感や光の艶、彩りをストレートに作品に置き換えている。東京では約2年ぶりとなる大規模写真展。30年間の集大成となる写真集『Du CANADA』(日経ナショナル ジオグラフィック)も同時出版する。

コメント

  • 荒巻 圭士

    カナダは大好きな国の一つです!と言ってもバンクーバーとカルガリーに飛びバンフに移動、レンタカーでジャスパーを往復したカナディアンロッキーの旅の2回の訪問のみ‥また行きたい。モントリオールのノートルダム大聖堂も素敵ですね。パリ・モンサンミッシェル・サンモリッツ・ツェルマット・ヴェネツィア等々ヨーロッパ各地が好きで何回も旅しましたが、カナダは一国でいろいろ楽しめそう!

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