STORY

絶景 絶景

風と波に揺られながら、夏のオーロラに包まれる

再びのイエローナイフ

ノースウェスト準州

一度来たことがある街だったが、夏の終わりに訪れたイエローナイフは、雪と氷に覆われた3年前の冬とはまるで違っていた。

ノースウェスト準州イエローナイフ。その名の通りカナダ北西部の州の都は、北極圏から400キロほどの、グレート・スレーブ湖のほとりにある。およそ大都市とは呼べないこの小さな街はかつてゴールドラッシュに沸き、現在ではダイヤモンド鉱業が盛んだという。

冬、と言っても3月なのだが、商店やホテルが建つ中心部の温度計はマイナス27度を示していた。雪は片付けられているものの「刺すような冷たい空気」ではなく、本当に痛さを感じるほどの冷気だった。建物の排気口から、自動車のマフラーから、そして街頭にたむろする男たちの口から、とにかく街中のあらゆるところから白い煙が吹き出していたような気がする。一緒にいた記者はちょっと散策のつもりで、上着を着ずにホテルの周りを歩き、帰ってきてからあまりの寒さ(痛さ?)に少し怒っていたほどだった。

それがどうだろう。

真っ白だったオールドタウンは緑に満ち、小さな家々がなだらかな丘に連なって建っている。中心街のビル、住宅街、そして海のように広いグレート・スレーブ湖の、美しく調和した風景が目の前に広がっているのだ。冬には凍ってしまう湖面には水上家屋がいくつか浮かび、小さなボートが係留されている。暖かい日差しを浴びているからか、行き交う人々もどこか楽しそうだ。ゆったりとした時間を刻む小さな街の表情を、今回初めて知ったのだった。

3年前にこの街を訪れたのは、取材でオーロラの写真を撮るためだった。イエローナイフはオーロラの出現率が高く、厳寒の地にもかかわらず大勢の観光客が訪れる。気象条件が合いやすい冬は、街から少し離れれば高確率で夜空に降りてくるオーロラを観賞することができるのだ。

その時は、どうせなら、あまり人が行ったことがない場所にしようと記者と話し合い、観光局に紹介された、イエローナイフから約100キロほどの「ブラッチフォードレイク・ロッジ」に滞在することにした。観光局の人からは、「ロッジの周りには一切何もないけれど、大丈夫ですか。オーロラが出なくても恨まないでくださいね」と事前に釘を刺され、「出なかったら恨みます」と答えてやってきたのだった。

そして−。

その年は特に「当たり年」だったようで、到着した数時間後にはオーロラが出現するという幸運に恵まれたのだった。それも5段階あるオーロラの最高レベル「Break Up(爆発)」が2晩続くという幸運に。空に吹き出してきた光のカーテンが渦を巻いていく様を目の当たりにし、なかなか観ることができないという赤いオーロラにも遭遇した。

必死になってシャッターを切り、そして凍った湖に寝転がって頭上の光景をしばし眺める。今ここに光が伸びてきたと思ったら、次はもう別の場所で揺らいでいる−。何かが意思を持って動いているのか?朝の4時、5時まで外にいたけれども、寒さなどまったく気にもならなかった。

それは本当に楽しい時間だった。そしてこんなにもオーロラに夢中になるとは思いもしなかった。

そう、見事にヤラレテしまったのだ。

「もう一度、オーロラを見たい。今度は夏のオーロラを」。帰路についたときにはそう考えるようになっていた。

あれから3年。夏が終わろうとしていた8月下旬、念願が叶ってまたイエローナイフにやって来た。目指すはもちろん「ブラッチフォードレイク・ロッジ」だ。

文・写真:多賀茂里生

string(0) ""

コメントを残す

  • Facebook
  • Twitter
  • YouTube

SEARCH