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絶景 絶景

風と波に揺られながら、夏のオーロラに包まれる

「オーロラが出た!」

ノースウェスト準州

2日目。どこか張り詰めた気持ちがあるのか、前夜の疲れもあまり感じずに日中を過ごす。

気分転換に、午前中はカヌーに乗ることにした。ボランティアのティボに教わりながら、胴体が細いカヌーになんとか乗り込む。止まっているとバランスを取るのがとても難しい。

櫂を漕いで湖面をスルスルと進みながら、水草をかき分けてビーバーの巣に近づいたり、目前に浮かぶ水鳥を眺める。青空が映る水面から見上げる景色が実に気持ち良い。

昼食後は湖畔の周りを散策してみた。ロッジの周囲はいくつかのハイキングルートが整備されており、林を抜け、湖を見渡せる展望ポイントに連れて行ってもらう。

ガイドに付いてくれたジェイデンが昨晩のオーロラ不発に同情し、励まして?くれる。

「ここのところ天気は良くないけれど、何日も続けてオーロラが出ないことはなかった。滞在中にはきっと観ることができるさ」。

試しに「今晩、どうかな?」と聞いてみたが、答えはやはり「Nobody knows.」だった。

この日はとても天気が良く、夜になるにつれて空から雲が消えていった。無数の星が瞬いているのが見える。いつしか湖の波音も聞こえなくなっていた。

何か予感がする。

夕食後、機材を持って外に出た。林を抜けて湖を見渡す広場で待機することにした。昼間カヌーを漕いだ湖は鏡面のように、ほんのりと少しだけ青みを残した空を映している。

ほぼ空から色が消えようとしていた、その時だった。

数百メートル離れた小島の上が突然、ボワッと白くなり、シュルシュルシュルと光の帯がこちらまで伸びてきたのだ。

初めはぼんやりとしていた光の帯はやがて太く、立体的になり、すぐに何層にも重なるヒダになっていく。

「オーロラが出た!」

すぐに林の向こうのロッジからも「オーロラだ!」と大声が聞こえてきた。3年前の冬と同じように、それは突然始まり、縦横無尽に動き始めた。

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写真に写すと緑色になるオーロラは、実際にはシャープなエッジを持った白い霧が動いているように見える。同じところに留まらず、シャー、シャーと(音はしないが)空の至るところに現れては消える。
直線的なものもあれば、渦を巻くこともあり、形を予測することなんてとてもできない。自在に変化するオーロラに、ただ「おぉ、おぉ」と唸りながら、シャッターを切り続けるのみだ。

カーテンのヒダのように揺れていた光が消えると、今度は視界の端から端まで伸びる1本の筋が現れた。そして空一面に幕を引くように、オーロラが降りてくる。

自然現象の仕組みの知識はあっても(そんなにはわかっていないが)、目の前で起きている、このリアルな自然の営みに、何ともいえない興奮が沸き上がってくる。

ずっとこれを待っていた。様々な言い伝えを残す先住民たちが畏怖した、計算や予測を超えたオーロラとの遭遇を。

とうとう夏のオーロラに出合うことできた。

その夜は、明るくなるまで空を見上げて過ごしたのだった。

文・写真:多賀茂里生

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