STORY

自然体験 自然体験

風と波に揺られながら、夏のオーロラに包まれる

最後の夜、そしてイエローナイフへ

ノースウェスト準州

滞在最後の日は、のんびりと周辺を散策したり、銃の点検の様子を見学させてもらった。

スタッフのキャサリンたちが、古株ボランティアのディミトロから猟銃の撃ち方を教わっていた。説明を受けながら、3種類の弾丸を銃に詰めて的を狙う。猟銃は狩りのためではなく、たまに出る熊を威嚇するのに必要なのだそうだ。では無人島では、トランシーバーだけで良かったのだろうか?

最後の夜、夕食後にボランティアたちから湖で泳ごうと声を掛けられた。明日、イエローナイフに戻る飛行機でディミトロとフロがブラッチフォードを離れるのだ。お前ともお別れだから、その前に湖で泳ごうぜというのだ。

何度か誘われて断っていたら、ビキニにタオルを巻いたジャニスがやって来た。「明日でお別れだから一緒に泳ぎましょう、ね?」そっと耳元でささやく。

はい、と言ってすぐに海パンに着替え、桟橋まで走った。

親分のディミトロが全員に号令をかける。「お別れの儀式は飛び込み3回!」

順番にザッブーンと水しぶきを上げていく。最後に自分の番になると、水の中から皆がこちらを見ている。意を決して頭から飛び込んだ。

泳ぐのは何年ぶりだろう。歳も取って運動不足、身体はたるんでいる。腹を激しく水に打ちつけながら、言われたとおり3回繰り返した。夏の終わりの湖の水はちょっとだけ冷たかったが、気分は爽快だった。

水から上がった後はたき火をおこして皆で暖まる。女性陣はホットジャグジーに優雅に浸かっていた。調子に乗って一緒に湯船に入ったら、「お前、やりたい放題だな」とあとで男たちに叱られてしまった。

その夜はロッジの前でたき火をしながらオーロラを待った。星は見えていたが、最後の夜にはオーロラは出なかった。

それでも、もう良かった。

翌朝−。
イエローナイフからのブッシュ・プレーンは午後にやってくる。朝から皆ソワソワしていた。
午前中は、マルセルに誘われて釣りをしに行った。

「ここで過ごす最後の思い出は君になったね」と言うと、彼は「イェーイ」と笑った。

そして午後、ブッシュ・プレーンが新しいゲストを連れて飛んできた。
フロが少し泣きそうな顔をしている。

皆の荷物が機内に運び込まれ、お別れの時がやってきた。
ボランティアやスタッフが握手をしに来てくれた。マネージャー補佐のアンソニーが「来てくれてありがとう」と言った。他のボランティアたちとも抱き合って言葉を交わした。いつもはこの時間に姿を見せないジャニスもいる。おお、見送りに来てくれた?と思ったが、それは違った。

ディミトロとフロを囲んで、スタッフ、ボランティアが一つの塊になった。そう、彼らの儀式だ。世界中から集まってきたボランティアたちが、旅人のように別れを惜しんでいた。

機内に乗り込み窓から覗くと、皆が手を振っているのが見えた。後ろの席には涙を流しながら外を見るディミトロとフロ。

ブッシュ・プレーンが動き出し、ゆっくりと湖面を走り始めた。やがてうなりを上げて飛び上がると、ロッジの上を一回、旋回しながらブラッチフォード湖から離れていった。

夏のオーロラが見たい。そう思ってまたやってきたブラッチフォードレイク・ロッジ。冬に遭遇したような「Break Up(爆発)」とは違ったが、5泊のうち2回もオーロラは現れたのだから、運が良かったに違いない。

でも本当に良かったのは、このロッジで過ごした時間そのものだった。いい人たちと出会い、飯を食べ、話をしながら過ごした時間。そのためにオーロラに導かれたのかなぁ、とさえ思えた。

今、満たされた気持ちで帰路についている。

それほど楽しかった。

楽しすぎて、ちょっと寂しい。

文・写真:多賀茂里生

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