03. ラストスパイク

カナディアン・ロッキーを越えて03. ラストスパイク

お気に入りに追加
03. ラストスパイク-イメージ1

旅の目的、カナディアンロッキーを拝むことができるのは、明日のことになる。初日のロッキーマウンテニア号は、まだまだずっと手前をやはり、カタタン、カタタンと走り続けている。

それでも徐々に周囲に山々が広がり始め、水流の激しい川や、その川にかけられた橋など、なんだかワクワクするような風景が増えてきた。

川の向こう岸では、カラフルなコンテナが延々と続く貨物列車が、何だか呑気そうに走っている。

03. ラストスパイク-イメージ2

もっとも、ロッキーマウンテニア号の方も人のことは言えないぐらい呑気なもんで、チーズなどをつまみながら、昼間からワイン三昧だ。

もう至れり尽くせりで、飲み終わるかどうかというところで、再びちゃんと注文を取りに来てくれる。

03. ラストスパイク-イメージ3

ところで急に話が変わるけれど、「ラストスパイク」と聞いて何か思い浮かぶだろうか。日本人にはピンとこないのが当然だけれど、カナダでは誰もが当たり前のようにこの言葉を知っている。

「スパイク」とは、レールを木の枕木に固定するための大きな釘のことで、日本語では「犬釘(いぬくぎ)」と呼ばれている。

ラストスパイクとはつまり、「最後の犬釘」。カナディアンロッキー越えを目指して東西から伸びてきた線路が最後の最後に結ばれる時、関係者が見守る中で打ち込まれたのが、ラストスパイク=最後の犬釘だ。

03. ラストスパイク-イメージ4

1885年、カナダ太平洋鉄道(CPR)の機関車「374号」がバンクーバーに到着する2年前にラストスパイクが打ち込まれ、その時ついに、大陸の東と西が1本、というか2本というか、とにかく鉄路でつながれたのだ。

ただし鉄路はつながったものの、開通に向けた準備がさらに続き、「374号」がバンクーバーに到着するまでには、ラストスパイクからさらに2年を要した、ということだ。

03. ラストスパイク-イメージ5

ラストスパイクの写真は多くのカナダの教科書にも掲載されていて、「カナダ史で最も有名な写真」と呼ばれているそうだ。

最後の犬釘を打ち込んでいる⑤の人物は、CPRの筆頭株主で、ハドソン・ベイのカナダ代表、ドナルド・スミスという人物。

ハドソン・ベイはビーバーの毛皮交易から出発して、今ではカナダの各都市で「ザ・ベイ」というデパートを経営するカナダを代表する企業の1つだ。

そして、エッグベネディクトのメニュー名となった測量技師、サンドフォード・フレミング卿は、背が高くて山高帽に白い立派な髭をたくわえた④の人物。

03. ラストスパイク-イメージ6

僕が乗っているロッキーマウンテニア号が、このラストスパイクが打ち込まれた「クレイゲラキー」を通過するのは旅の2日目のことになる。

でも、初日の昼食で僕の前に出てきたこのステーキは、一足先に僕をクレイゲラキーへと連れて行ってくれた。

メニューの名前は、「LAST SRIKE‘D BEEF SHORT LIBS(ラストスパイクド・ビーフ・ショートリブ)」。世界的に知られるアルバータ牛のショートリブを、ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)を代表するワイン産地・オカナガンのメルローで煮込んでいる。

ラストスパイクによって鉄路がつながったことを象徴するかのように、このひと皿はロッキー山脈をまたぐBC州とアルバータ州の見事なコラボとなっている。なんとも芸が細かい。

03. ラストスパイク-イメージ7

ホロリ、ホロリと身ばなれがよくて、ボリュームたっぷりのアルバータ牛がどんどん、口の中へと入っていってしまう。付け合せのマッシュポテトもガーリック風味で最高だ。

メインの前にはこんな新鮮サラダも出てきた。さすがに酪農の盛んなカナダだけある。振りかけられたチーズがセロリをはじめとする香草をいいぐあいに包み込んで、マイルドな仕上がりになっている。

03. ラストスパイク-イメージ8

昼からビーフはちょっと、という人にはこんなメニューもある。「CRISPY WONTON INUKSHUK(クリスピー・ワンタン・イヌクシュク)」。

イヌクシュクというのは、カナダ北方の先住民、イヌイットの人たちが石を積み上げてつくった、人の形のような目印だ。

それぞれのイヌクシュクにどんな意味が込められているのかは、さまざまな解釈があるようだけれど、少なくともイヌクシュクは旅人を助けてくれる存在であって、決して悪いメッセージを発するものではない。

03. ラストスパイク-イメージ9

イヌクシュクに導かれ、ロッキーマウンテニア号は流れの激しい渓谷へと差し掛かった。ここが「ヘルズ・ゲート」だ。

サイモン・フレーザーという冒険家が発見したと言われる急流で、大陸横断鉄道の建設にあたっても、困難な工事を強いられた難所の1つだ。

03. ラストスパイク-イメージ10

写真を見てもらえれば分かると思うけれど、急な水の流れが白く激しい渦を作り出している。

そして、鉄道建設の工事のために、この狭い渓谷が一層狭くなってしまい、サケの遡上が難しくなってしまったんだそうだ。

このため、人の手でコンクリートの「魚道」が作られ、サケが生まれ故郷へと遡上できるようにしている。写真の赤い橋の下のコンクリートの建造物が「魚道」だ。

冒険家サイモン・フレーザーにちなんで名づけられたフレーザー川は、数えきれないほどのサケが遡上する川として世界的に知られている。その源流はカナディアンロッキーから発している。

ロッキーマウンテニア号もまた、フレーザー川に寄り添うようにしながらロッキー山脈を目指して進み続けている。

コメントを残す