もっと知りたい グリブル島

もっと知りたい グリブル島

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位置

【地図①】赤印はグリブル島のおおよその位置。黄色い枠内を拡大すると【地図②】に

【地図①】赤印はグリブル島のおおよその位置。黄色い枠内を拡大すると【地図②】に

【地図②】赤印は、グリブル島の位置。黄色い枠内をさらに拡大すると【地図③】に

【地図②】赤印は、グリブル島の位置。黄色い枠内をさらに拡大すると【地図③】に

【地図③】矢印の先の赤く塗られた島がグリブル島。黄色く塗られた島はプリンセスロイヤル島

【地図③】矢印の先の赤く塗られた島がグリブル島。黄色く塗られた島はプリンセスロイヤル島

今回の動画を撮影したのは、ブリティッシュコロンビア州のグリブル島(Gribbell Island)。面積は206k㎡。沖縄県の石垣島(222k㎡)と同じぐらいの広さである。

高い「白いクマ率」

白いクロクマが見られる場所は他にもあるが、この島は、特に重要な生息地である。
まず、グリブル島では、クロクマ全体に占める白いクマの割合が、ずば抜けて高いのだ。
グリブル島の南に隣接するプリンセスロイヤル島には、850~1250頭のクロクマが生息すると考えられているが、そのうち白いクロクマは17%と推定されている。
プリンセスロイヤル島の東にあるロデリック島・プーリー島では、推定190~260頭のクロクマのうち白いクロクマは10%、つまり、19~26頭に過ぎない。
一方、グリブル島に住むクロクマは、100~150頭と考えられているが、そのうち43%にあたる45~65頭が白いクロクマだと推定されている。

「白いクロクマ」研究の舞台

動物学者のウィリアム・ホーナディは、白いクロクマを、新種のクマ、「カーモードグマ」と考え(…もっと知りたい「白いクロクマ スピリッベア」参照)、1905年に、新種としての学名をつけるための論文を書いた。その際、基準として指定した標本(タイプ標本)は、グリブル島で採取された白いクロクマだった。
つまり、「カーモードグマ(Ursus kermodei)とはこういう特徴を持ったクマですよ」という、基準になったのが、グリブル島のクマだったわけで、グリブル島はいわば「白いクロクマの本場」なのだ。

グリブル島の川。秋にはサケやカラフトマスが遡上する。

グリブル島の川。秋にはサケやカラフトマスが遡上する。

動画で紹介した、「白いクマの方が黒いクマよりもたくさんサケを捕る」という研究も、グリブル島が舞台。
研究を行ったビクトリア大学のデニス・クープランド博士らは、クマのサケ捕りを2千回近く観察した。その結果、夜間の成功率は黒いクマも白いクマもほぼ同じだったが、昼間は、黒いクマの成功率が25%なのに対し、白いクマは、34%と、白いクマのほうが9ポイントも高かったのだ。
この差は、体の色の違いが原因なのではないか、とクープランド博士は考えた。
それを確かめる実験、動画でも紹介したが、より詳しく説明すると・・・

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これは、黒いクマの模型。この模型を中心に、半径2メートルの円を描く。この内側は、クマが一撃でサケを捕れる範囲だ。この中に、5分間で何匹のサケが入るかを数える。
次に、同じ場所で、白いクマの模型を使って、同じように5分間に入るサケの数を調べる。

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実験を、何度も繰り返した結果、黒い模型に近付いたサケは平均で9.2匹。一方、白い模型には20.4匹。なんと倍以上の数のサケが近寄ってきたのである。
その理由は、動画でも紹介したとおり、水中のサケの目線で、クマを見上げると、白い方が、島独特の曇り空によくとけこんで、目立ちにくいからと考えられる。
この結果、白いクマと黒いクマでは、サケの捕り方が大きく異なる。
黒いクマは、サケを追いかけて捕らえようとする。この方法では、狩の成功率はあまり芳しくない。
一方、白いクマは、1ヶ所に留まったままじっと動かず、サケの方から近付いてくるのを待ち伏せる作戦。じっくり狙いを定めて飛びかかるので、成功率が高く、多くのサケを捕らえることができるのだ。

スピリットベアと共存する先住民

グリブル島は、もともと、「チムシャン族」と総称される地域の先住民族の中の、ギットガット族(Gitga’at)と呼ばれる人たちの土地。

ギットガットの人たちの集まり

ギットガットの人たちの集まり

白いクマの紋様

白いクマの紋様

彼らにとって、白いクロクマ、スピリットベアはとても神聖な生きもので、テレビなどで広く知られるのを嫌っていた。番組を担当したディレクターも、かつて彼らに取材を申し入れて、
「申し訳ないが、白いクマの事は神聖すぎてあなた方にお話しすることはできない」
と断られている。
しかし、グリブル島のクマはけして安泰ではない。島の周りは海上交通が盛んで、大きなタンカーも行き交う。万一事故が起こって、狭い海峡に油が流出すると、クマにも大きな影響を及ぼす。また、島にはサケが上る川が二本しかないが、この川の周囲の森で無秩序な伐採が行われると、サケの遡上が減り、また、クマのすみかも狭められる。
そこで、ギットガットの人々は「白いクマのことをよりよく知ってもらう事こそがクマたちを守ることにつながるのだ」と考え方を変え、テレビの取材なども受け入れるようになっていった。
おかげで、一度は断られたディレクターも、番組を制作することができた。その間、6年の歳月が流れていた。

ギットガット族の長、アルバート・クリフトンさん

ギットガット族の長、アルバート・クリフトンさん

ギットガット族の長は、ディレクターに次のように語った。
「私たちとクマは、同じ川をさかのぼる同じサケを食べている。森に実るベリーはクマの大好物であり、私たちにとってのご馳走でもある。我々はこの地で共に行き、同じ空気を呼吸している。白いクマがこの世にいなくなる時、それは私たち一族がこの世からいなくなる時なのだ。
このかけがえのない白いクマと、このクマが生きていくために必要な自然全体を守ることの大切さを、伝えていってほしい」

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