グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1

Group of Sevenグループ・オブ・セブンの画家たち vol.1

お気に入りに追加
グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ1

カナダ最大の都市トロントから車で北西に45分程走った所にアーティストが集まるおしゃれな街、ヴォーン市クラインバーグがある。その一角の緑に囲まれた美術館が「マクマイケル・カナディアン・アート・コレクション」だ。ここに自宅を設けた実業家、ロバート・マクマイケル氏(1921~2003)が、こつこつ集めたカナダのアート作品を近所の人たちも見に来るようになり、それではと1965年にオンタリオ州政府に収蔵品を建物や土地ごと寄贈した。住宅として建てられた当初から徐々に土地を買い増して7倍に増やしたという美術館敷地には、谷や川、遊歩道があり周囲は保護区になっている。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ2

地形に合わせて起伏を設けた平屋建ての美術館で、各ギャラリーをつなぐ廊下の窓からは、季節ごとに色彩を変える豊かな森が目に飛び込んで来る。秋にはこれが美しい紅葉に彩られる。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ3

この美術館が異彩を放っているのは、集められた美術品がすべてカナダの芸術家の作品だと言うこと。先住民イヌイットの絵や彫刻、仮面など興味深い作品も集められているが、一番のセールスポイントはカナダの美術愛好家ならだれでも知っている「グループ・オブ・セブン」という画家集団の絵を大量に収蔵しているということである。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ4

グループ・オブ・セブンは、1920年代から1930年代にかけて、カナダの画壇に新風を巻き起こした画家集団で、1920年に7人の画家が集まって展覧会を開いたことから、この名がつけられた。その時のメンバーは、フランクリン・カーマイケル、ローレン・ハリス、A.Y.ジャクソン、フランク・ジョンストン、アーサー・リズマー、J.E.H.マクドナルド、フレデリック・ヴァーリーの7人。カナダの絵画史上、最も重要なアーティストたちとも言われる。

ただし、グループ・オブ・セブンとは言いながら、このグループの生みの親とも言うべきトム・トムソンはグループ誕生直前の1917年に事故で亡くなっており、その後も出入りがあったりしたので、メンバーの数は計10人になる。
それまでのカナダ画壇は、風景を描くにしても古典的な写実主義が中心だったが、ヨーロッパのポスト印象派(マティス、ルノワール、ゴッホなど)の影響も受けて、彼らはそれぞれ独特な手法でカナダの雄大な風景を描いた。それが、東と西が一体になってカナダが一つの国としてまとまって来た「時代のムーブメント」と相まって、カナダの大自然を見出した芸術として人々の心を掴んだのである。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ7

<新風を巻き起こした絵画たち>
当主のマクマイケル氏は気に入った絵があると、熱心に何度も足を運んで、家族とも仲良くなって譲って貰ったというが、収集家としての一途な情熱が今の貴重なコレクションにつながっている。美術館を訪ねた日、案内をしてくれたのは学芸員のミリアン・ウェブさん。
ここに来て7年と言う彼女は、自身もイヌイットアートやコンテンポラリーアートの収集家で、学校などでも教えて来た人である。「グループ・オブ・セブンはカナダそのもの。今でも新鮮に感じるし、彼らの絵をとても誇りに思っています」という彼女は、早速、グループ・オブ・セブンの絵が並んだギャラリーに案内してくれた。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ8

メンバーが描いたのは殆どがカナダの自然や風景。それまでのカナダの風景画と言えば、オランダなどヨーロッパの写実画の流れを汲んで、写真で写したような静かで精密な絵が主流を占めていた。それを1890年代にヨーロッパに出かけたメンバーたちが、ポスト印象派の刺激を受けて大胆に変えた。それぞれが、それぞれのスタイルでカナダの大自然を力強く描くようになった。
例えば、これはコレクターのマクマイケル氏が250ドルの分割払いで最初に手に入れたローレン・ハリス(1885-1970)の絵。前景に木々を配置した、当時としては斬新な構図で、湖の向こうに秋の紅葉を描いている。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ9

ローレン・ハリスは、後に静謐で神々しいような抽象化された風景画を描くようになるが、次の絵は既にその特徴が現れ始めているような絵だとウェブさんはいう。

トロントの北200キロに位置するアルゴンキン公園で描いた絵(1917年)だが、静かで平和な自然のリズムを大事に表現しており、それ以前の写実派の絵のような細かい描写を巧みに省いている。それでいて力強さも感じさせる。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ10

ローレン・ハリスは、後に独特な抽象化された風景画を描くようになった。これは湖の右上から光が差している風景画。ウェブさんは、これを神の光のようで高い精神性を感じると言う。別のスペリオル湖の広がりを描いた絵も、カナダの広大な自然の中に一人いる時の、孤独を感じさせる。彼の絵は、神秘的な体験に触れるような霊的な光を描き、魂の浄化を感じさせるまでになっていく。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ11

これは、A.Y.ジャクソン(1882-1974)の風景画(写真①)とJ.E.H.マクドナルドの絵(1919年)(写真②)。

それぞれ、太めの筆で荒いタッチで大胆な色遣いで力強く描いていて、グループ・オブ・セブンの画家たちの絵が当時、いかにセンセーションを巻き起こしたかが想像できる。登場した当初は、その絵があまりに大胆すぎて、当時の人々には気に入られなかったという。

グループ・オブ・セブンの画家たち vol.1-イメージ12

ところで、グループ・オブ・セブンの画家たちは、どのようにして当時は交通の便も悪く、滅多に人々が立ち入らないような手つかずの自然や景観を描いたのだろうか。それを物語る2枚の絵を見せて貰った。一方は縦30センチほどの小さな絵。そして一方はそれをキャンバスに拡大した油絵。これは1922年にアルゴンキン公園の紅葉を描いた、フランクリン・カーマイケル(1890-1945)の絵である。グループ・オブ・セブンの画家たちは、多くがこうした大小二つの絵を残しているが、その秘密については、次回に。

コメント

  • Keiko

    2010年カルガリーの語学学校に短期で通っていた時、カナダ人の担任の女性にバースデーカードを貰いました。それがグループ・オブ・セブンの一人A.Y.Jacksonの絵という事を知り、そのシンプルで大胆なタッチに惹きつけられました。その後オンタリオ美術館で本物を観た時は、とても感動しました。毎年カナダに行くので、必ずグループ・オブ。セブンのカレンダーを買って帰り、一年中眺めています。

コメントを残す