グループ・オブ・セブンの画家たち vol.2

Group of Sevenグループ・オブ・セブンの画家たち vol.2

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1920年代から30年代にかけて、カナダ画壇に新風を巻き起こした画家集団「グループ・オブ・セブン」。
美術収集家マクマイケル氏が、彼らの絵を中心に収集し寄贈したのが「マクマイケル・カナディアン・アート・コレクション」だ。美術館に問い合わせると、結成当初の7人の絵が405点、後にグループに加わった3人を合わせると557点の絵が所蔵されている。その他に、(後述するが)グループの生みの親とも言うべき若い画家で、グループ結成の3年前に謎の事故死をとげたトム・トムソン(1877-1917)の絵が84点ある。まさに、カナダで最大級のコレクションと言える。

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<キャンバスの代わりに持って行ったもの>
その中でも、目を引くのが小さな合板に描かれた絵と、それを拡大したキャンバスの絵である。その一例が、J.E.H.マクドナルドの絵(1919年)。縦横30センチ×20センチの板の絵を拡大再現した油絵(写真)だが、大きなキャンバスに描かれたエッセンスは、すでに小さな板絵にしっかりと描かれていて、その板絵がおろそかに描かれたものではないことを物語っている。
また、中にはトム・トムソンのように板絵を描いた時点の早春の冷たさを、日差しが暖かい春の息吹に描き変えるような工夫をとりいれた絵もある。

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実は、ここにこそカナダの大自然の景観や風景を発見したグループ・オブ・セブンの特徴が隠されているという。彼らは、当時交通の便も悪く、滅多に人が踏み入れないカナダ各地を旅してカナダの風景を切り取って来た。その足跡は広大なアルゴンキン公園やスペリオル湖、ロッキー・マウンテン、ノヴァスコシア、そして極北にまで及んでいる。
そういう所に出かける時に、大きなキャンバスを担いで行くのは不可能。そこで、厚さ数ミリの薄い合板を5枚くらい重ねて木製のカバンに入れて出かけた。

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写真はJ.E.H.マクドナルドが1920年から30年にかけて使っていたカバンだが、説明文によると、彼はこのかばんを持って3万6千マイルを旅し、7回もロッキー・マウンテンに行ったそうだ。

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その代表格がトム・トムソン。オンタリオ州の西部に生まれた彼は、絵の学校にもヨーロッパにも行ったことがない。独学で絵を始め、39歳の若さで死ぬまでの5年間にすべての絵を描いた。
彼は、彼の死後3年にグループを結成することになる画家仲間を連れて北の自然や北極圏にまでよく足を延ばした。アルゴンキン公園では、カヌーを漕ぎ、魚を釣って、キャンプしならがスケッチを重ねた。その旅の中でカナダの大自然に触発されて、「これがカナダだ」とカナダ人の心に訴える、新しい風景画のパイオニアになった。

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家に戻ってから大きなキャンバスの油絵に拡大再生したものも、小さな板絵のままのものも沢山残された。その数は300点に上る。彼が短い人生の中で残した板絵について、学芸員のウェブさんは「小さな絵だけれど、すでに完成している」という。

大地の上に広がる大きな空や、今にも嵐が来そうな空。

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湖の向こうに林があり、その向こうに山が見える。しかし、それらは極端に低い位置に描かれていて、画面のほとんどを占めているのは連なる雲と青い空である。手前に来るほど大きく描かれている雲と青い空。小さく描かれている木々が、逆に空のスケール感を引きだしている。その画面一杯の解放感は、とても、これが横30センチほどの小さな絵とは思えない。

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一方、こちらも同じ場所から描いたのだろうか。今度は、空いっぱいに怪しい雲が立ち上っている。ウェブさんは「今にも嵐が来そうな空」というが、雲の上の方には、まだ(夕日だろうか)太陽の光が当たっている。手前の林はもう暗く沈んでいる。小さいのに、ドラマティックな絵である。

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中には、縦が15センチほどの小さな絵もあるが、描かれてから100年も経過したとは思えないほどの新鮮な感じがする。

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1917年7月8日、彼はアルゴンキン公園の湖にカヌーで魚釣りに出掛け、翌朝カヌーだけが発見された。遺体が見つかったのは7月16日。その死は謎とされたが、画家としてこれからと言う時の死は、仲間たちに大きな衝撃を与えた。
しかし、その足跡はグループ・オブ・セブンに受け継がれ、新しい潮流を形成して行った。美術館には、ローレン・ハリスの小型の絵も残されているが、こうした小さな絵の多様な集合が、カナダの自然の豊かさの表現となり、カナダ人の自然に対する新たなイメージを作り上げて行ったのである。

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<森の中にある墓地>
美術館の出口からすぐの森の中に、カナダの自然石をサークル状に並べた墓地がある。ここにはマクマイケル夫妻の墓のほかに、グループ・オブ・セブンの画家たち6人(ローレン・ハリス夫妻、A.Y.ジャクソン、アーサー・リズモア夫妻ほか)の墓がある。

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木漏れ日の中で、自然石に刻まれた名前を確認しながら美術館で見た絵の数々を思い起こす。それも楽しいひとときだった。

(次回は、グループ・オブ・セブンを所蔵する、もう一つの美術館「国立美術館」を訪ねます)

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