グループ・オブ・セブンの画家たち vol.3
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マクマイケル美術館のほかにも、カナダ国内でグループ・オブ・セブンの絵画をまとまって見られる美術館が2つある。オタワにある国立美術館(National Gallery of Canada)と、トロントにあるオンタリオ美術館(Art Gallery of Ontario)だ。マクマイケル美術館を訪れた後、このうちの一つ、国立美術館を訪ねた。ガラス張りのメインホールを有するユニークな建物は、1988年に完成したものだが、美術館としての組織そのものの歴史は古い。かつては、国立自然博物館の中に同居していたが、1960年に国立美術館として独立した。

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ユニークな建築を少し紹介しておこう。設計したのは、イスラエル系カナダ人のモシェ・サフディ。美術作品は自然光の下で鑑賞するのが一番という考えで、巧みに自然光を取り入れる構造にした。しかし、太陽光は作品を傷めるという短所もあるため、ブラインドによって調節する。ガラス張りのメインホールでは、そのブラインドが帆船の帆のように見える。時にはここで結婚式なども行われるそうだ。建物の前面にはカナダの自然を摸した庭が作られ、周囲の風景と調和するようになっている。オタワの観光名所の一つで、夏だけで110万人が訪れる。

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<グループ・オブ・セブンのギャラリーを見る>
美術館に入ると、最初にカナダ先住民の芸術の部屋、次いでヨーロッパの古典主義のような肖像画、宗教画、あるいは写実主義的な風景画の展示室があり、その次にグループ・オブ・セブンのギャラリーがある。やはり、彼らの絵はカナダ絵画史の中でも重要な位置を占めているのが分かる。案内してくれたのは、広報担当のアンドレア・ガンパートさん。ここでのグループ・オブ・セブンの絵画は、1910年に作品収集を委任されたキュレーターのエリック・ブラウンが収集したのが始まりだという。主に初期の絵画を集めている。ローレン・ハリスなどのほかに、トム・トムソンの有名なNorthern River(1915)やPine Island(1914)などの絵もある(残念ながら、これらは著作権上載せられない)。

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ガンパートさんによれば、グループ・オブ・セブンの絵は、ヨーロッパのポスト印象派の影響を受けているために、感覚的であると同時に情念的(エモーショナル)でもあると言う。その代表的な絵がJ.E.H.マクドナルドのThe Tangled Garden(1916年)。夏の終わりの庭を描いたものだが、庭の草花や節くれた木が“もつれた”ように入り乱れて描かれている。カラフルでルース・ブラッシングと呼ばれる荒い筆使い。一見20世紀初頭のフォービズム(野獣派)の絵のようにも見える。こうした絵は、今ではカナダの人々に受け入れられているが、当時の人々にはさぞショックだったろうと思う。

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例えば、それはグループ・オブ・セブンが登場する一世代前の19世紀後半のカナダの風景画と比べてみれば分かる。これは、国立美術館にある1880年に描かれた風景画(Sunrise on The Saguenay)だが、如何にも写実主義的な静的で精密な絵だ。2つの絵は年代的に36年ほど離れているが、比べてみると全く描き方が違う。J.E.H.マクドナルドの「The Tangled Garden」は、ヨーロッパの伝統を重んじる当時のカナダ画壇で、様々な論評の的となったが、新しい時代の到来を告げるような大きなインパクトを与えたに違いない。

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<カナダの大自然に相応しい描き方を模索>
グループ・オブ・セブンのギャラリーには、トム・トムソンの小さい合板に描かれた絵も沢山なら並べられている。彼が39歳で亡くなるまでの、わずか5年の間に北のアルゴンキン公園やスペリオル湖、カナディアンロッキー、そして極北まで。時に仲間とともに足を運んで切り取って来たカナダの手つかずの風景である。その数64枚。厳しい雪山の風景、春の日差しを受ける雪原、人影のない湖に映った美しい紅葉などなど。

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カナダの自然を描いた1枚1枚の板絵を見て行くと、彼らが如何にカナダの大自然や景観を愛し、それに相応しい描き方を真剣に模索していたかが伝わって来る。グループ・オブ・セブンの画家たちこそ、カナダの自然の素晴らしさ、豊かさ、奥深さを見出し、カナダの人々に「自分たちの国の自然が如何に素晴らしいか」を気付かせた画家たちだったと言える。

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◆森の魂を描いたエミリー・カー
グループ・オブ・セブンのギャラリーの入り口近くに、同じ頃にカナダの自然のもう一つの顔を描いた、ある女性画家の絵が展示されている。女性画家エミリー・カー(1871-1945)。グループ・オブ・セブンがカナダ東部で活躍していた頃、彼女は西海岸のバンクーバー島ビクトリアをベースに独自の画風で先住民のトーテムポールや森を描いた。先住民と触れあう中で、先住民の文化を吸収し、彼らの精神文化を尊敬しながらカナダの「森の魂」を描いた。孤立し孤独の中で絵を追求していたエミリー・カー。その彼女を見出し励まし続けたのも、グループ・オブ・セブンの画家たちだった。
(エミリー・カーの絵とその物語については、次回以降に)

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