03. 素朴な疑問

永遠のカヌー03. 素朴な疑問

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日本を出発する前、僕は現地のガイドさんからカヌー用の「持ち物リスト」を送ってもらっていた。その中には、「カヌー用短パンまたは速乾性の長ズボン」とか、「カヌー用の運動靴またはカヌーシューズ」といった記述があった。

どうもよく分からない。短パンと長ズボン、どっちがいいんだろうと思ったし、カヌーシューズってそもそも何なんだろうか。

ネットで調べたところ、水が入っても外に抜けていくメッシュのような靴がカヌーにはいいらしい。船内に水が入ってきて、底に水がたまったりするからなんだろうか。

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いずれにしても本格的にカヌーを始めるわけでもないので、どうしようかと思っていると、スポーツ用品店の店頭で「マリンシューズ」なるものを発見した。

海辺や磯で遊ぶときのシューズなんだろう、夏の終わりのセール用品らしく1800~1900円ぐらいのお手頃価格だったので、「こんなんでいいんじゃないか」と適当に購入した。

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さあ、レンタルした黄色いカヌーでいよいよ出発、というところで、ガイドさんがジャブジャブと水の中に入っていった。なるほど、こういうことなんだ。

考えてみれば、カヌーは川でも湖でも、「はしけ」なんてない場所でも自由に乗り降りできるのが便利なわけだ。だからジャブジャブ、ということになる。

こうなると「カヌー用の短パンまたは速乾性の長ズボン」の意味も分かってくる。濡れないように短パンをはくか、濡れてもいいよう、最初からすぐに乾く素材の長ズボンをはくか、ということだ。

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カヌーを水際に浮かべたような状態で、中に荷物を積んでいく。陸地で積んでしまうと、そのあと土の上でカヌーを引きずらなくてはならないからだ。この過程で当然、ジャブジャブ、となっている。

キャンプのためのテントや食料などは、水に濡れても大丈夫な専用の「カヌーパック」に入れてあって、途中でずれたりしないようカヌーの中にきれいに詰めていく。

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パドルの握り方はこう。一番上を手のひらで包み込むようにした上で、もう一方の手でパドルの中ほどをつかんで水をかく。これはかつて、ディズニーランドでも教えてもらった。カヌーへの乗り込み方や降り方などについてレクチャーを受けて、さあ、出発だ。

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最初は揺れが少し怖いけれど、すぐに慣れてくる。そんなに懸命に漕がなくてもカヌーはすべるように湖面を進んでいく。

生意気を言うようだけれど、カヌーって意外に簡単だ。

漕ぎ進んでいくと、たくさんのカヌーとすれ違う。おお、女性2人に愛犬のトリオでインテリア・キャンプ、ということか。子供の頃からカヌーに慣れている、という感じだ。

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こちらのカップルは、水着になって湖畔の岩の上でくつろいでいる。声をかけると手を振ってくれた。なんだかピクニックみたいな感覚でカヌーとキャンプを楽しんでいる感じだ。

日本でのアウトドアというと、ウェアとか道具とか便利グッズとか、どうも本格的になりすぎる傾向があるんじゃないだろうか、と僕は思う。形から入る、というか。

ほら、アウトドア料理とか言って結構、本格的な料理を作ったりするのをテレビで見るけれど、僕はひねくれ者なので、家の台所の方がおいしく作れるんじゃないの、などと思ってしまう。

テレビの撮影だから仕方ないんだろうけれど、雨にもかかわず「キャンプで本格イタリアン」なんてやっていると、もう早く店に行けよ、などとつぶやいてしまう。

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それに比べて、このアルゴンキンの自由な感じときたら、どうだろう。水着のカップルの女性の方なんて、この直後にオレンジにパクついておられた。そんな感じでいいんじゃないか、自然の中の、もっと自然なキャンプでいいと思う。

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こっちのカップルは後ろの男の方が、ふざけてヒゲをつけて遊んでいる。この写真で分かってもらえるだろうか。アイツ、さっきから全然、漕いでいないなあ。

今回の旅に出発する前、僕は日本でカヌーとボートの違いについていろいろ調べてみた。得られた情報を総合した結果、僕は前を向いて漕ぐのがカヌーで、うしろを向いて漕ぐのがボート、という結論に達した。

そして、ここからは僕の勝手な解釈になるけれど、ボートにはどうも「上下関係」があるような気がしてならないんだ。例えば昔の海軍なら、オールを手にボートを漕いでいる水兵さんと、行く先をじっと見つめている上官、みたいな関係だ。

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これがカップルになると、懸命にオールを漕ぎ、女性のために献身的に労働する男と、それを見つめながら何もせずに微笑む女性、ということになる。ここには明らかな「上下関係」がある。

ボートだといつも見つめ合っているから、これはもう正統派のデートになるけれど、カヌーでは見つめ合うことはないし、「上下関係」なんて生まれようがない。それは「上下関係」などない、先住民の人たちが生み出した乗り物だからではないか、というのが僕の勝手な推論だ。

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西洋で生まれた、漕ぐ人と漕がない人の「上下関係」を前提としたボートと、みんなが同じ方向を向いて漕ぎ進んでいく共同作業のカヌー。

だからさっきのヒゲのおにいちゃん、そろそろ「ふざけてないでさっさと漕げ」と彼女にこっぴどく怒られていると思う。

カヌーも夫婦もカップルも、同じ方を向いての共同作業が基本なんだから、この推測に間違いはないはずだ。きっと間違いない。

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