04. ハード・シュガーとの邂逅

メープルシロップ ワンダーランド04. ハード・シュガーとの邂逅

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砂糖カエデの樹液、メープル・サップに含まれる糖分は2~3%程度。これを煮詰めていくとメープルシロップになる。しかし、その糖度は「66%」と決まっていて、煮詰める温度が違っただけでもメープルシロップにはならない。

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では、糖度や温度が違うと何になるのか。「ウィーラーズ・パンケーキ・ハウス」の経営者で、メープル博物館まで作ってしまったバーノンさんによると、(1)煮詰める温度(2)冷やし方(3)かき混ぜ方―によって、5つの違った「メープル・プロダクツ」が作られるんだそうだ。

それはメープル・バターだったり、メープルのグラニュー糖だったりする。専門家に聞けば、簡単に説明がつく理屈があるに違いないけれど、僕にとっては、これってなんとも不思議なことだ。

例えばこの写真。砂糖カエデの樹液からはこんなにきれいな砂糖の結晶も生み出される。メープルシロップの糖度が66%なのに対し、結晶を作る場合の糖度は70%。煮詰める温度や冷やし方だけで、こうも違う「メープル・プロダクツ」に変身するんだ。

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ただし、きょうのお目当てはきれいな結晶でもないし、メープルのバターやグラニュー糖でもない。先住民が作っていたという、石のように硬いハード・シュガーだ。

僕は以前、メープルシロップは先住民からフランス、イギリスの入植者たちにどのように伝えられたのか、という「謎」を追っていくうち、バーノンさんと出会うことになった。

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その際に到達した答えは、ヨーロッパで高級帽子の材料となるビーバーの毛皮を手に入れたい入植者たちと、ビーバー猟を行う先住民との間には一定の協力関係があり、その中でメープルの存在が伝えられた、というものだった。

ただし、そのころ作られていたのはシロップではなく、石のようなハード・シュガー。だからメープルシロップを作っている施設は、シュガー・シャック=砂糖小屋と呼ばれる。シロップ小屋じゃないんだ。

「メープル・プロダクツ」の中心が今のようなシロップになるのは、保存や運搬が容易なブリキのような容器が登場してからのことだったんだ。

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石のような砂糖の存在を知って以来、僕は先住民とヨーロッパからの入植者たちの「架け橋」とも言うべきハード・シュガーを是非見てみたいと思い続けていた。

それをきょう、バーノンさんが実現してくれるというわけだ。もちろん先住民と同じやり方というわけにはいかない。

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なにしろ彼らは、丸太をくり抜いた中に砂糖カエデの樹液をため、火で焼いた石を次々に投入して水分を蒸発させる、という気の遠くなるような作業を経てハード・シュガーを作っていたんだから。

しかし僕らは、樹液ではなくメープルシロップの状態から煮詰めることにより、1時間ほどでハード・シュガーを作ることが出来る。もちろん、焼いた石ではなくガスストーブの炎で、だ。

日本じゃあ、なかなかお目にかかれない巨大な瓶から、メープルシロップが鍋へと注ぎ込まれる。ここから華氏260度(摂氏126~127度)までシロップを煮詰めていく。

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鍋の中にバターがふたかけほど投入された。バターの油がふきこぼれを防ぐんだそうだ。

「先住民は杉の葉を使っていたそうだ。常緑樹の葉の油がバターのようにふきこぼれを防いでくれるんだ」とバーノンさん。人間ってのは実にいろいろな工夫を考えつくもんだと痛感させられる。

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鍋の中のメープルシロップがふつふつと泡立ってくる。ちょうどいい状態で鍋を火から降ろし、泡がおさまるのを待つ。

泡が落ち着いてこんな状態になったら、へらでかき混ぜていく。そうすると、この暗いカラメル色が金色に変化していくんだ。

「この時、最後までかき混ぜ続けないといけない」とバーノンさん。

なるほど、かき混ぜ続けると黒かった色が明るい金色になっていく。まだ液体ではあるものの、だいぶ粘りというか、固まってきた感じだ。

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ちなみにグラニュー糖を作る場合は、鍋を火から下ろしたらすぐにかき混ぜ始める。煮詰める温度と冷やし方、それにかき混ぜ方―。これがポイントなんだ。

金色になったメープルを型に流し込んでいく。どろりとした感じで、まだ相当の熱を持っている。火山から流れ出る溶岩みたいだ。

それにしても本当にきれいな色だ。バーノンさんによると、先住民のハード・シュガーは、焼いた石を使うことや長時間温め続けることによって黒っぽかったんだそうだ。

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部族の女性や子供たちが昼も夜も、焼いた石を丸太の中の樹液に投げ入れ続け、貴重なハード・シュガーを作ったという。時にはこの貴重品をめぐって部族間で戦争も起こったらしい。

かつて先住民の人たちは、色が黒くて形も不細工なハード・シュガーを持って、極寒の中でのビーバー猟に向かったのだろうか。

そこで捕まえた動物の肉を食べる時、貴重なハード・シュガーを石のトマホークやナイフで削り、甘く味付けをしたのかもしれない。

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勝手な想像だけど、そんな先住民の人たちの記憶が、メープルシロップをベーコンやソーセージなど「肉」の味付けに使う発想につながっていったんじゃないだろうか。

もちろん、これは僕の単なる想像でしかないけれどー。

コメント

  • 匿名

    旨そう

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