07. サップが春を連れてくる・その2

メープルシロップ ワンダーランド07. サップが春を連れてくる・その2

お気に入りに追加

アンドレさんの親戚や友人たちによるシュガーリング・オフ・パーティーは、まだまだ続く。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ1

結構、高齢の方も、自分で皿にたっぷりと料理を盛り付け、楽しそうに食べている。

おいしいものを楽しく食べること、それに気のおけない人たちとの楽しいおしゃべりが何歳になっても元気の源なんだとつくづく思う。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ2

さて、シュガーリング・オフ・パーティーのキーワードは、もちろん「春」。寒い冬が終わり、待ちに待った春の到来を親戚や友人たちと祝うのがその目的だ。

ただし、このパーティーにはもう1つのキーワードがあると僕は思っている。それは「甘さ」だ。

今、日本には甘い飲み物や食べ物が溢れかえっていて、それこそコンビニに行けば24時間365日、いつでも甘いものを手に入れることができる。日本のようにコンビニだらけではないにせよ、カナダだって甘いものにはまったく不自由しないはずだ。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ3

でも、かつての日本は、かつてのカナダは、そうじゃなかったと思う。

世代によってその感覚はまったく違うかもしれないけれど、デパートに行ってチョコレートパフェを食べるとか、誕生日やクリスマスに大きな丸いケーキを食べるなんてことは、特別なことだった。

かつて甘いものが特別で貴重なものだったという事情は、日本もカナダもきっと同じだったろう。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ4

だからこそ砂糖カエデの樹液、メープル・サップで作った石のようなハードシュガーは、装飾を施された型に流し込まれ、贈り物として利用されていた。

シュガーリング・オフ・パーティーは、ようやく今年の「甘さ」を味わえるという喜びにも包まれている気がしてならない。

パーティーのテーブルにはメープルシロップの瓶が必ず置かれていて、ハムやソーセージ、スフレなどの料理にどんどんメープルシロップをかける。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ5

最後に出てくるデザートにだって、さらにたっぷりのメープルシロップで甘さを加えるんだ。

ただし、シュガーリング・オフ・パーティーにおいて、デザートは本当の「シメ」じゃあない。最後の最後に必ず登場するのがメープル・タフィだ。

温めたメープルシロップを平らにならした雪の上にたらし、少し固まってきたらアイスキャンディの棒みたいなやつでクルクルと巻いていく。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ6

ケベックの人はみんな、メープル・タフィが大好きだ。子供のころのシュガーリング・オフ・パーティーの思い出を尋ねてみると、結構な割合で「おじいちゃんがメープル・タフィをつくってくれた」という返事が返ってきた。

そして、ずっと昔のカナダの人たちは、今よりももっと、メープル・タフィに強い思い入れがあったんだと思う。なにしろ今の時代に比べ、圧倒的に甘いものに接する機会が少なかったはずだから。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ7

この古い写真を見てほしい。こんなおいしいものはない、という表情で、女性がメープル・タフィを楽しんでいる。

春が来て、みんなに会えて、そして今年のメープルの甘さに出会えた喜びをタフィとともに感じているんだと思う。

「ピック・ボア」に集まったアンドレさんの「小さな親戚」たちも、メープル・タフィが始まると一斉に集まってきた。アンドレさんがタフィを作っているのをじっと見つめる子供たち。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ8

自分が子供のころ、正月に田舎に帰った時に、親戚のおじさんたちが餅つきをしていたのを思い出した。つきあがった餅にあんこやきな粉がまぶされ、僕やいとこたちにふるまわれる。

シュガーリング・オフ・パーティーと同じように、日本でもこんな光景が確かにあった。シュガーリング・オフ・パーティーは花見のようでもあり、正月のようでもある。

07. サップが春を連れてくる・その2-イメージ9

お父さんに抱かれて、小さな子がメープル・タフィをおいしそうになめている。

この子がお父さんのように、ヒゲを生やし、子供を抱き上げる日がいつか必ず来るんだと思う。

そして、その子供の手にはやっぱり、メープル・タフィが握られているはずだ。

メープルはいつまでもいつまでも、春の訪れととともに、「甘さ」を味わうことの幸せを伝え続けてくれるんだろうと僕は思っている。

広がり続けるメープルシロップの世界。僕が出会った幸せ&満腹のメープル料理や、メープルを使った至高の調味料など、とても1度には書ききれない話がまだまだたくさん。だから「メープルシロップ ワンダーランド」の続編をなるべく早く、みなさんにお届けしたいと思っているんだ。【メープルシロップ ワンダーランド(続編) 今夏公開予定】

コメント

  • 高松克志

    こんにちは。とても楽しく読ませていただきました。
    僕は3年前にカナダにホームステイしたことがあり、その時の風景をとても鮮明に思い起こしました。

    僕は高校で食品について勉強をしています。メープルシロップの歴史やカナダの人々の思いなど、とても勉強になりました。
    僕には将来カナダに住もう!という夢があります。
    平間さんの記事を読んで、一層その思いが強くなりました。
    本当にありがとうございます。

    長くなってしまい、申し訳ありません。
    では、失礼します。

コメントを残す