10. カヌーの舳先

永遠のカヌー10. カヌーの舳先

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10. カヌーの舳先-イメージ1

アルゴンキン州立公園では、ムースやビーバーといった動物だけでなく、様々な植物を間近で見ることができる。

この口を開けたような植物の名前は、ピッチャー・プラントという。

ピッチャーは、生ビールをピッチャーで頼む時の、あのピッチャー(pitcher)のこと。この中に雨水が溜まり、文字通りピッチャー=水差しのような状態になっている。

10. カヌーの舳先-イメージ2

この植物は虫が好むような臭いを出して、ピッチャーの中へと誘い込むらしい。しかし、中に足を踏み入れたら最後、内側の繊毛がすべて下に向いているため、虫はすべって底に溜まった水の中に落ちてしまうのだ。

そう。これは食虫植物の一種で、水に落ちた昆虫を消化・吸収して生きている。

こちらも同じ食虫植物で、和名で言うところのモウセンゴケ。「コケ」といっても本当は「苔」ではない。この先っちょの雫のようなものが実は粘着液で、このネバネバで虫を捕まえるのだ。

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こちらは既に紹介した睡蓮だ。正確には睡蓮の一種で、ブルヘッドリリーという名前なんだそうだ。

ビーバーはこの植物が大好物で、あの巨大なムースも、もしゃもしゃと睡蓮を食べていた。

こんなふうに睡蓮が生えているところは、水深はさほど深くはなくて、場所によっては下の写真のように、水底が見えていたりする。

しかし、カヌーという乗り物は実によくできていて、底が結構フラットな感じで喫水線というんだろうか、それが浅いので、こんな水底が見えているところでも苦もなく進んで行ってくれる。

10. カヌーの舳先-イメージ4

既に僕は原稿の中で、カヌーとボートの違いを調べた結果と、それに関する僕なりの「私見」を披露している。

つまり、後ろを向いて漕ぐボートには上下関係があるけれど、みんなで前を向いて漕ぐカヌーには上下関係はなく、カヌーは平等な共同作業だ、という見解だ。

ほかにもせっかく出発前にいろいろ調べているので、その結果をもう少しお知らせしておきたいと思う。例えばカヌーとカヤックの違いだ。

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もちろん、カヤックというのは真ん中にマンホールのような穴が空いていて、そこに下半身を入れるという特徴がある。

けれど決定的な違いは、水をかく部分が両方にある「ダブルブレード・パドル」か、片方だけの「シングルブレード・パドル」なのか、という点だ。

この写真にあるように、ダブルブレードで漕ぐのがカヤックで、カヌーはシングルブレードだ。そして、このカヤックとカヌーをあわせて、広義の「カヌー」と呼ぶようだ。

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そもそも、昔のカヤックというのは、いわゆるイヌイットと呼ばれるような人たちが、海でアザラシなどを採るために使っていた乗り物だ。

木や骨で作った枠組みにアザラシなどの皮が貼り付られていて、銛(もり)のような道具も船体に取り付けられるようになっている。

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カヤックをやったことがある人ならもちろん知っているだろうけれど、エスキモーロールというテクニックを皆さんはご存知だろうか。

カヤックがひっくり返っても外に投げ出されることなく、さらにそのまま回転して体が水の上に出るよう元に戻る、という技術だ。

これはまさに、極寒の海でアザラシを狙っている時にひっくり返ったとしても、なんとか元に戻るというイヌイットの人たちが編み出した技だ。

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さて、我らがカヌーも、カヤックに負けないぐらいの人間の知恵に満ちている。この上の写真を見てほしい。毛皮交易に使われていた頃のカヌーだ。

夜になって岸辺に担ぎ上げたカヌーをひっくり返し、そこに帆布のようなものが掛けてある。その下に荷物を運び入れ、人間も潜り込むとあっという間にテントの代わりになる、というなかなかのアイデアだ。

先住民の人が生活の足として使っていた頃も、あるいは現代のレジャーとしてのカヌーも、ここまで舳先=バウは反り返ってはいない。これは毛皮交易に伴って生み出された人間の知恵だ。

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さて、カヌーの旅の初日も、そろそろ夕闇が近づいてきた。

でも、ひっくり返したカヌーの下に潜り込む必要はない。僕にはテントや寝袋があるし、キャンプの真ん中では焚き火が燃え盛っている。

そうだ、焚き火で思い出した。前々からずっと思っていたことだけれど、カナダ人ってどうして焚き火を見ると必ずマシュマロを焼きたがるんだろうか。

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カナダではなんと、キャンプファイヤー用の大きめのマシュマロも売られている。

キャンプファイヤーにおけるカナダ人のマシュマロ愛って、ちょっと度を越してはいないだろうか。

それに、そもそもマシュマロってそんなに好きじゃないんだよね、僕は。

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