02. 機関室では石炭が燃えたぎっていた

カナダの大地を走る蒸気機関車02. 機関室では石炭が燃えたぎっていた

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「Look! Look!!」

メープルシロップ列車に揺られてしばらくした時のことだった。反対側に座っていた子供連れの家族がこっちを見て叫んでいる。その方向を見ると、水滴で曇る窓の先に、煙を吐いている黒い車体が車庫から出ようとしている! ほんの一瞬の出来事だったが、それはカナダで初めて見る蒸気機関車だった。

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メープルシロップを買い終わり、向かったのは始発駅から10分ほどの整備庫。蒸気機関車は煙を吐きながら、行ったり来たり試運転を行っている最中だった。

一段落して停車したことを確認し、近づいてみる。運転席から、すすけた服を着て帽子を被っている、見るからに鉄道マンらしき男が手招きをしている。あたりを見回すと、私しかいないからこれは自分のことだと思い、運転席の近くまで足早に近づいてみた。

「乗ってみるか?」

気がつくと、図々しくも私は蒸気機関車の運転席にいた。

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目の前には、手招きした運転助手と見られる屈強な男性が器用に足で釜の扉を開け閉めしては、石炭を入れている。扉が開くと、熱い。メーターや配管を目の前にすると、ドキドキしてくる。目の前のパイプは、時折シューシュー言っている。右隅に鎮座していた人物を指差し、彼はCN(旧カナダ国鉄)で長く運転手をやってきた方だと紹介してくれた。

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「そろそろまた試運転を始めるから」というので運転席を降りると間もなく、車体が見えなくなるくらいの白い煙を一発吐く。まるで手品師が一瞬で姿を消してしまうあのマジックシーンのように、蒸気機関車はあっという間に遠くへ走り去ってしまった。

「また戻ってくるよ」

こう言い残していた言葉を信じて、待つことにした。車庫の隣にはホームがあり、ベンチもあったので、座って待つ。 どれくらい時間が経っただろうか。ようやく、遠くで汽笛の音が聞こえてきた。

目をこらすと、一直線の線路の先には、時折煙を吐きながらゆっくりと近づいてくる蒸気機関車の姿があった。

目の前を悠然と通り過ぎる姿を見上げながら、完全に圧倒されてしまった。思えば、人生で初めて、こんなに近くで蒸気機関車というものを眺めたと思う。

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