03. その蒸気機関車の名は、No.9(ナンバーナイン)

カナダの大地を走る蒸気機関車03. その蒸気機関車の名は、No.9(ナンバーナイン)

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私が目にした蒸気機関車は、19世紀後半から20世紀初頭、カナダで国産蒸気機関車を次々と生産したモントリオール・ロコモーティブワークス(MLW)製で、1923年に制作されたもの。正式名「Essex Terminal Railway(ETR) No.9」を略して、No.9と呼ぶ。

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当時モントリオールに端を発する北米東部地域には、GTR(グランドトランク鉄道)という野心溢れた鉄道ネットワークが張り巡らされていた。No.9は、ちょうどカナダとアメリカをウインザーで結ぶターミナル鉄道で活躍していたが、鉄道の電化と同時に蒸気機関車はスクラップ化されてしまった。

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実は、カナダで最初に生産された国産型の蒸気機関車は、Toronto Locomotive Works製だった。1853年の4月に第1号が完成すると、その後22台が生産されたが、20世紀 に入ると多くの機関車と同様すべてが解体されてしまった。

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この日も整備庫でかつてキングストンに工場があったCanadian Locomotive Company(CLC)が製造した30台の中でたった一台生き残った最後の一台が、復元作業の真っ最中だった。 No.9が生き残った理由は、ETRが将来にわたり歴史を伝え、美しい蒸気機関車が復活する時を願って保存していたからだ。 再生作業は難航を極めたらしい。設計図は失われていたから、パーツを一つ一つ分解して、動かないものは新しく作ったというのだ。その時に活躍したのが、かつてバリバリ働いていた機関車の運転手や技術者達。彼らが記憶していた知識と現場の知恵の蓄積が、機関車復活の原動力になっている。

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昨年9月のことだった。蒸気機関車を所有する鉄道会社が企画したNo.9のツアーに合わせて、トロント観光局の主催で日本向けメディアや関係者のための体験会が行われた。一番驚いたのはこのツアーの名物、走ってくる蒸気機関車の勇姿を皆でじっくりと楽しむ鑑賞会だ。

ディーゼル機関車が牽引するメープルシロップ列車と違うのは、途中で全員下車するところだ。一直線の単線を一旦バックし、戻ってくる蒸気機関車の走行シーンを線路脇から全員で眺めるのが、このツアーの目玉。大迫力だ。

「鉄道は我々のコミュニティーにとって欠かすことができないヘリテージ(歴史的遺産)なのだから、それを後世に伝えて行くのは我々の使命」と語ってくれたボランティアのグレンさんの言葉が心に残る。そのために彼らは、美しく整備したNo.9を走らせ、カナダ鉄道の誇りを次世代へと伝えて行くのだ。

今年(2016年)は、カナダ建国150年を来年に控えた大事な年。大きな国土を持つカナダを一つに結ぶという夢をつないだのが、大陸横断鉄道の建設だった。その歴史の証言を訪ねるため、トロントからVIA鉄道に乗り6時間、モントリオールへ向かった。

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