03. トロント地下鉄ソングは、何を歌ったのか?

カナダ大都市の交通改革03. トロント地下鉄ソングは、何を歌ったのか?

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1954年3月30日、トロントはカナダで初めて地下鉄が走る街となった。開業60周年を迎えた2014年3月、主要駅の構内に貼られたポスターが静かにそのことを伝えていた。

トロント市交通局(TTC)は、都市交通の主役をストリートカーから地下鉄へと変更するため、重要路線であったヤング線を地下鉄にするという決定を行った。工事が始まると、「Toronto Subway Song」なるレコードが作られ、発売された。

CBC(カナダ放送協会)のアーカイブで今でもこの地下鉄ソングを聞くことができる。
http://www.cbc.ca/archives/entry/singing-about-subways
それは、こんな歌詞で始まる。

“Now have you heard what’s going on in Toronto?
They’re digging deeper, deeper, deeper every day.
Though proprietors are raving while they’re tearing up the paving.
The racket is nerve-wracking, so they say”

歌詞の流れとしては「トロントでは毎日地面を深く掘りかえしてストリートが大変なことになってしまったから、商店主たちは困っている」という、民衆の苦情を代弁するような出だしで始まる。繰り返し「市民の忍耐によって、すばらしい地下鉄が完成する。必ず報われる」という歌詞がはさまれて歌は続いてゆく。そして締めくくりのコーラスの歌詞は、

“Don’t take the streetcar,
Riding in a new subway!”

「ストリートカーはお払い箱だ、新しい地下鉄にみんなで乗ろう!」

ちょっと意訳しすぎかもしれないが、工事中に市民が持っていた気分を表す歌だということは、間違いないだろう。工事が始まったのが1949年9月8日で、歌が出たのは1950年の1月1日だというから、4カ月もたたないうちにこんな歌を発売するという気分が、時代を感じさせるものがある。発売されたのはレコードだが、今レコードと聞いてどれだけの人が実物を知っているだろうか。

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地下鉄は完成し、営業開始の記念式典は1954年3月30日午前11時にDavisville駅で行われた。列車はまずEglinton駅へ向かい、そこから引き返してUnion駅へと向かうというルートで一番電車が走った。TTCの本部は今も、Davisville駅の上に建っているWilliam McBrien Buildingにある。

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この時路線を走ったのが、イギリス製のGシリーズ(Gloucester series)と呼ばれる赤い車体だった。カナダの新しい交通システムを担うものとして登場したのは、奇しくも鉄道発祥の地、世界初の地下鉄を走らせたイギリスからやってきたというわけだ。当時の資料を見ると、駅のサインや看板に至るまで、多くのことをトロントはイギリスから学んでいる。この車両は100両以上生産されたが1990年に退役となり、現在はトロント郊外のHalton County Radial Railwayに2両保存展示されている。

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ストリートカーと同様車両は進化を続けている。初代Gシリーズの後に登場したのは、Mシリーズ(退役)、Hシリーズ(退役)と続き、現役のTシリーズと続いている。現役車両はライン2(Bloor-Danforth)で乗車することができる。

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最新型はToronto Rocket(TR)と呼ばれヤング線に投入されている。明るく広々とした車両は、先頭から最後尾まで連結部が開いているので、大変開放感がある。製造はカナダのボンバルディアが担当し、Movia(モビア)と呼ばれる地下鉄車両システムのバリエーションだ。モビアは世界各地で走っているが、ロンドンのアンダーグラウンドで使われている車体は2009系(ビクトリア線)とS-Stockとなっているから、ベーカーストリート駅で見た車両は、カナダ製だったということになる。

トロントの車両はバリアフリー化を実現しており、聞き取りやすい録音の車内アナウンスと同時に、ドアの上に設置された駅名が表示されている路線図は、到着駅をLEDが示してくれる。なかなか英語が聞き取りにくい外国からの旅行者にとっては嬉しい仕様だと言えるだろう。

こうして歴史を振り返ると、地下鉄は大きく発展しずいぶん便利になったものだ。最初に紹介したトロント地下鉄ソングに、こんな歌詞がある。

And Rome wasn’t built in a day.
You may find it’s aggravating, but be sure it’s worth the waiting
For we’ll soon have a real subway.

ローマは一日にして成らずという
じれったくはあるけれど、待っていればきっといいことがあるはずだ
もうすぐ本物の地下鉄ができあがるはずだから

開業から60年を越え、さらにトロントの地下鉄は日々進化を遂げている。

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