01. ジャスパーの清廉な氷河水で醸造されるビール

カナダの地ビール探訪01. ジャスパーの清廉な氷河水で醸造されるビール

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今カナダは、空前の地ビール(クラフトビール)ブームに沸いている。西から東、カナダ全国で数えきれないほどのクラフトビールが醸造され、街のパブでは近隣の醸造所から仕入れたものを多い所では数十種類も集め、毎日のお薦めとして手書きのボードで掲示しているところも増えている。

店のオーナーが直接醸造所を訪ね樽を仕入れるため、その場を訪れることでしか出会えないビールを街中で飲むことができるとビール好きなカナディアンの絶大な人気を博しているのだ。どういった理由でこうなったのだろうかと調べて行くと、そこには尽きることのないカナダの地ビール物語があった。その探訪の一端を、ある醸造所を訪れた時の思い出から始めてみたい。

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何万年も前に降り積もった雪が固まることで造り出される美しい氷河。カナディアン・ロッキーにはいまだ人間の手が入らない美しい場所が数多くあると聞いていた。

それを思い出したのは、バンクーバーからホワイトホースへ向かうエアカナダの機上から窓の外を眺めていた時のことだった。比較的低空を飛ぶ国内線の窓から見る眼下には、抜けるような快晴であったことも幸いして、人類未踏と感じさせる氷河が広がっていた。

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氷河水を原料とするビールがあることを知ったのは、その4ヶ月ほど前。バンクーバーで流線形が美しい大陸横断鉄道「カナディアン号」に乗り、トロントへ向かう最初の駅であるジャスパーの街に降り立ち数日を過ごした時のこと。出発前に、ジャスパーにはJasper Brewing Co.という名前の小さなビール醸造所があるということを伝え聞いていた。

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ビールの醸造にとって重要な要素と言われるのが、水、麦芽に代表される糖質、風味づけのホップ、発酵を促進するビール酵母。なかでも重要なのは、水。特徴のある清廉な水は、おいしいビール造りのために欠かすことができない。

街自体が標高1,000メートルに達するジャスパーは、カナディアン・ロッキーの雄大な山岳風景と豊かな水系で有名な観光地だが、自然保護のため多くの規制がある。街自体が国立公園の中にあるからだ。

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国立公園内にある醸造所とはどういったものなのかと興味深々。ラフティングという川下りのツアーに参加した後、乾いた喉を潤すために一人でふらりと立ち寄ったのが最初の訪問だった。

入り口を入ると1階はバー&レストランになっていて、奥には地下へと降りる階段がある。地下にはずらりとタンクが並んでいる。すべてのビールはここで醸造されているのだ。この時に選んだのは、スタウト・ビール。異色の存在だが、麦を焦がして使うこのビールは独特のコクと甘さがあり、好きな種類のひとつだ。

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パイントグラスに注がれた漆黒のビールは、なめらかできめ細かい泡が立つ美しい出で立ちだった。口に含むとほのかな香りが広がり、優しくすっきりとした甘さが印象的だった。

名前は6060 Stout。6060というのは1944年に製造されていた蒸気機関車の型番だ。VIA鉄道ジャスパー駅の目の前には、美しくレストアされた蒸気機関車が展示されているが、カナダ建国を象徴する大陸横断鉄道を支えた屈強な機関車は、氷河水で造られるスタウトにぴったりのネーミングだと思う。

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国立公園内にあるビール醸造所は世界でも珍しい部類に入る。アサバスカ氷河に立つことができる雪上車ツアーに参加すると、このビールがどんな水を使っているのかを知ることができる。ツアーの自由時間中、氷の壁のようになっている足元に小川のように水が流れている場所に行き、水のボトルなどを持って行ってすくって飲んでみてほしい。

これが、氷河水だ。太古の昔に閉じ込められた清廉な水は谷を伝い流れる川となって、ジャスパーに暮らす人々を支える命の水となっている。ビール醸造のための特別な水源があるわけではない。街全体が氷河の恩恵を受けているのだから、ここで醸造されるビールがことのほか美味しく感じられるのは当然のことだろう。

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翌日には、レストラン&バーの地下にある醸造所の見学ツアーに参加した。オーナーのDave Mozel氏から直接話を伺うことができたのは幸いなことだった。彼は国立公園という厳しい規制の中で醸造所を開き、自分の納得出来るビール造りができることを誇りに思っていると語ってくれたのだが、その表情はビール造りが楽しくてしょうがないというようだった。

ご当地ビールの究極の味わいは、醸造所を訪れてその場で飲むことによって得られるものだ。カナダの清廉な氷河水で造られるカナディアンビールの真髄は、ジャスパーの小さな醸造所で供される一杯のビールの中に込められている。2年後に、念願だった妻と共にバンフを起点に旅した時も、同じ場所で三度目のビールを味わった。カナディアンロッキーを遥かに眺めながら飲む一杯は、ここを訪れる誰にとっても一生の思い出になることだろう。

コメント

  • 村川一久

    飲んでみたい〜っ!!

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