03. 水路と陸路

「1000万平方キロ」の奇跡03. 水路と陸路

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先住民の人たちの生活のために、冬の3カ月間だけ出現するアイスロード。その建設作業には大変な手間がかかる。

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アイスロードのルートは毎年ほぼ同じ。長年の経験とデータの蓄積をもとに、道路に適したルートが決められているんだ。

最初に特殊な重機で湖面の雪を取り除き、氷に穴をあけて厚さを測る。アイスロードとしての十分な厚さが確認できたところで、再び重機を走らせて除雪する。

ちなみにイエローナイフでは、こうした氷に穴をあける小型エンジン付きの道具が大型スーパーなどで普通に売られている。

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氷上での魚釣りで需要があるんだけど、アイスロードの建設も基本的にはこんな道具で穴をあけて厚さを計測する。

マイナス30度とかが当たり前の屋外で、とにかく穴をあけては氷の厚さを計測するという単純作業を500メートルごとに繰り返し、氷の道路を広げ、そして延ばしていく。

文字通り、気の遠くなるような作業だ。

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だからこそ、氷にダメージを与える重量オーバーやスピード違反に対する取り締まりは厳しい。

ご参考までに、アイスロードでの罰金の例を紹介しておくと、10キロのスピード違反で罰金230ドル。11~20キロオーバーが230ドル。

21キロから35キロとなると、罰金は863ドルにものぼってしまう。日本と比較しても相当な高額だ。

違反車が氷を割って湖に落っこちでもしたら、手間暇かけて建設したアイスロードはルート変更を余儀なくされるのだから、厳しくなるのも当然だ。

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建設も維持管理も大変なアイスロードを毎年毎年、建設するぐらいなら、いっそのこと一度にどんと予算を投入して、本物の道路を作った方がいいのではないかとさえ思ってしまう。

しかし話はそう簡単ではないらしい。なにしろカナダという国は、湖や川や湿地がたくさんあって、本物の道路建設には莫大な予算が必要になる。

そして、仮に道路を建設したところで、こうした悪条件の下では毎年のメンテナンス費用もばかにならない。結局、毎年アイスロードを建設する方が安上がりなんだそうだ。

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ノースウエスト準州の運輸省で話を聞いていて、ふと僕が思い出したのは、2つの水路の間の陸上輸送を意味する「ポルタージュ=portage」という言葉だった。

湖や河川が国土の約7.6%にものぼるカナダで、かつて水陸両用の移動手段として活躍したのが、バーチ・バーク・カヌーだった。水の上ではオールを漕いで進み、進めなくなると次の水路までカヌーをかついで陸地を進む。その時に出てきた言葉が「ポルタージュ」だった。

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実はアイスロードはすべての道路が湖の上にあるわけではない。例えば湖畔から集落までの間は、湿地を含む陸上の道路だ。

だからこそ、冬にだけ出現する道路を、氷上と陸上をあわせて「ウインターロード」と呼ぶんだと思う。

つまり「ウインターロード」とは、水路と陸路の繰り返し、「ポルタージュ」なんだと思う。

湖や湿地が多いから、本来なら移動が妨げられるところを、カナダの人たちはカヌーを使って水上を、アイスロードを使って氷上を、「道」に変えてしまった。

カナダの人たちは1000万平方キロの広大な国土を、今も昔も知恵を絞って「移動」し続けているんだ。

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