04. 「移動」できることの幸せ

「1000万平方キロ」の奇跡04. 「移動」できることの幸せ

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ノースウエスト準州でアイスロードが建設されるようになったのは、1960~1970年代のこと。それからまだ50年ほどしか経過していない。

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しかし、冬の間の3カ月間だけ出現する氷の道が、「陸の孤島」とも言える集落での生活を大きく変えることになったようだ。

こうした集落に住むのは、「トリチョ族」という名を持つ先住民の人たち。アイスロードができる前、彼らの移動手段はもっぱらカヌーや犬ぞり、スノーシューを履いての歩きだったりした。

犬ぞりがスノーモービルに代わり、自動車が登場しても、集落と州都・イエローナイフを直接、結ぶ道路がないという事情に変わりはない。だからイエローナイフから道路がつながっている街に車を置いておき、集落からそこまではスノーモービルで行き来したりしていた。

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しかし、それでも運ぶことが出来る物資の量は限られるから、不便なことこの上ない。

それが、アイスロードの開通によって、車で直接、イエローナイフに行き、ガソリンをたっぷりと買い込んだり、家具や電化製品など大きなものも購入できるようになった。

一番大きな変化が、電気を使えるようになったことじゃないだろうか。集落にはディーゼル発電の施設があって、各家庭に電気を供給している。ノースウエスト準州の運輸省が、アイスロードの利点として「燃料輸送」を挙げたのもうなずける話だ。

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さて、この記事のトップの写真は一体なんだろう、と思っておられる方もいると思う。見ての通り、中華料理だ。

アイスロードでの移動が可能になって、「陸の孤島」のような集落に住む人たちも、イエローナイフに来て「外食」を楽しむことができるようになった。

なにしろ集落にはレストランなんてない。僕はイエローナイフの中心部にある「レッドアップル」という中華料理店とか、A&Wというハンバーガーチェーン店で、よく先住民の人たちを見かけた。

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ちなみに「レッドアップル」はオーロラ鑑賞の日本人もたくさん訪れるらしく、日本語メニューも用意されているから安心して入れる店だ。

ただしこの日本語メニュー、なかなか不可解な料理で溢れているんだ。例えばこの「海鮮」のジャンルにある「にんにく蓉ちゃん」なる文字。「にんにく蓉ちゃん」て、なんだろ。

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注文して出てきたのがトップ写真の料理。海鮮炒め、みたいなものだと思うけれど、実物を見ても食べても、「にんにく蓉ちゃん」が何なのかは判然としない。

この写真で分かるように、かなり大量に刻んだにんにくが入っているけれど、じゃあ「蓉ちゃん」って誰なんだ。

それから「にんにく蓉ちゃん」の下の、「海鮮おでん」。これもあまりに気になるので注文してみた。

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出てきたのがこの下の写真。「にんにく蓉ちゃん」との違いが判然としない。セロリが入っているかどうか、あたりがポイントなんだろうか。

勘違いしないでほしいんだけど、僕はイエローナイフのこの「レッドアップル」、結構お気に入りなんだ。

2回のイエローナイフ訪問で、4~5回はここで食事をしている。日本と中国の間にいかなる問題があろうと、世界中のどこに行っても中華料理があるってのは、僕にとっては本当にありがたいことだと思っている。そして僕は「レッドアップル」が大好きなんだ。

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先住民の人たちもここが結構好きなようで、アイスロードが開通したら車を走らせて「レッドアップル」に食事に来るのを楽しみにしている人も多いようだ。

だから「レッドアップル」はいい店なんだけど、ただただ、日本語メニューが「謎」だらけなことが気になって仕方がないんだ。

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そして、これ。メニューで見つけた「雑炒め」の文字。やっぱり雑な炒め物なんだろうか。

ここまできたら、あとにはもう引けない。「雑炒め」を注文すると、店員の中国系のおじさんが、「やめた方がいい」って首を横に振った。

しかしイエローナイフなんてそうそう来られるところじゃない。とにかくおじさんの静止を振り切って「雑炒め」を注文してみた。

ほどなくすると、「雑炒め」が出てきた。なるほど、まずは見た目が雑だ。

食べてみる。味つけが雑だ。「レッドアップル」のファンとしても、これは首をかしげる味だ。鶏肉とキャベツともやしなんかを炒めてあるけれど、ここは絶対に豚肉だろうと僕は思う。

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それはさておき、「レッドアップル」のメニューの「謎」については変に騒がないでほしいんだ。だって、このメニューが「正しく」なっちゃったら楽しみが半減してしまうから。

そっとしておいてほしい。そしてみんなで楽しく食事をしよう。

「レッドアップル」に限らず、イエローナイフで食事をする時は店内を見渡してほしい。先住民らしき人たちを目にしたら、きっとアイスロードを使ってやってきたんだなあ、と思ってほしい。

僕らだって移動手段があるからこそ、こんなに遠いイエローナイフにやって来ることができる。アイスロードを車でやってきたであろう人たちとともに、「移動」できることの幸せをしみじみと考えてほしいんだ。

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