カナダ国立博物館巡り

01. プロローグ

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カナダが紆余曲折の末、英連邦の自治領として事実上の独立国家になったのは1867年。2017年に建国150年を迎える若い国だ。建国以来のカナダは、ヨーロッパや南米、アジア(中国、日本、インドなど)などから多数の移民を受け入れ、多民族国家として成長してきた。かつては先住民との対立や戦争中の日本人への扱いなど、様々な人種的あつれきや人種差別的政策も経験したが、その反省と教訓を生かしながら、現在は英仏2言語を公用語として掲げる、世界で最も先進的な多文化主義の国になっている。

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歴史博物館

しかし、その多民族国家も放っておくと遠心力が働いてバラバラになって行く。そこで、カナダは教育の面でも法的な面でも、文化的な面でも、多様な文化の存在を容認しながら、「我々はカナダ人だ」という国民を一つにまとめる“アイデンティティ”の形成に懸命に取り組んで来た。

トロントには200もの言語の新聞があると言われるが、多民族で多文化の国と言う意味で、カナダは世界の縮図でもある。そうした状況で、国民を一つにまとめて行くことは、取りも直さず民族間の平等を目指す先進的な多文化主義や国際平和、人権や地球環境といった「人類共通の価値観」を引き受けることを意味する。そして、カナダの国立博物館も、そうしたアイデンティティ形成の重要な役割を担っていると言うのが私の見方である。

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戦争博物館

現在のカナダには、自然、歴史、戦争、人権、美術の5つの国立博物館があるが、国立博物館の方もそれぞれの立場で、そうした価値観に寄り添いながら自国のアイデンティティの形成に貢献することを強く意識した展示内容になっている。カナダの過去から現在への国の成り立ちを反映しながら、同時に、「人類共通の価値観」に先進的に取り組んでいると言う点で、世界でもユニークな存在と言える。

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人権博物館

例えば、地球環境と生物多様性を意識した「自然博物館」、先住民から始まるカナダの歴史の再定義を模索している「歴史博物館」。若い世代に戦争の現実を教え、平和の希望を見失わないようにと教える「戦争博物館」。その平べったいユニークな外観は、日系カナダ人の建築家、レイモンド・モリヤマ氏の設計によるものだ。

また、唯一、オタワ以外にある国立博物館で、2014年9月にウィニペグにオープンした「人権博物館」は、世界の人権問題と真正面から向き合っている世界で唯一の国立博物館だ。そしてカナダの自然と景観を発見した画家集団を展示する「国立美術館」。

これから詳しく紹介していくが、これらの博物館を訪ねて興味深い展示物を見て歩きながら、こうした「人類共通の価値観」に向き合うことは、私たち日本人にとっても今日的意味があるのではないだろうか。

文・写真:軍司達男
ジャーナリスト、ライター、テレビ番組制作会社の企画アドバイザー

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