01. 仰天満載の国獣・ビーバー

ビーバー カナダを創ったスーパー・アニマル01. 仰天満載の国獣・ビーバー

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「ザ・ベイ」ウィニペグ店

カナダの「ザ・ベイ(The Bay)」と言えば、トロントやモントリオール、バンクーバーなどの大都市をはじめ各地に90もの店舗を擁する、カナダ最大手のデパートである。ザ・ベイを経営する「ハドソン湾会社」は、1670年の設立というから、三越デパートの前身、創業1673年の「越後屋」も真っ青な老舗ということになる。もっとも、ハドソン湾会社の場合、小売業は1867年からで、それまでは、専ら毛皮を扱う商社だった。物々交換を含めた商いを「交易」と呼ぶ。ハドソン湾会社は、先住民から交易によって毛皮を手に入れ、本社のあるイギリスに運んで、売りさばいたのである。

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ノンサッチ号(復元)。1669年、この船による交易の旅の成功が、1年後にHBCを生んだ。マニトバ博物館蔵

ただし、ハドソン湾会社、略してHBCは、ただの私的な商社ではなかった。1670年当時、フランスに独占されていたカナダ地域の毛皮貿易に、イギリスが食い込むため、国王から、カナダでの交易を独占する権利を与えられた、勅許会社だったのだ。その独占権の及ぶ範囲は、ハドソン湾に流入する河川流域全体と定められた。面積にして、ざっと2000キロ四方、現在のカナダの3分の1以上に相当する、広大な領域だ。

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復元されたHBCの交易所(マニトバ州ロワーフォートゲリー国定史跡)

カナダの建国は1867年。その前の時代のカナダの歴史とは、すなわち毛皮交易の歴史だったと言っても過言ではない。冬が長く、農耕に適した土地も少ない東部カナダに、ヨーロッパ人が大西洋を越えてやってきたのは、農地よりも毛皮を得るのが主な目的だったのだ。カナダは、キツネやテン、オオヤマネコなど、毛皮獣の宝庫だ。深い森は多くの野生動物を育み、寒冷な気候は、動物にふかふかの美しい毛皮をまとわせる。

中でも、最も重要な毛皮獣は、ビーバーだった。といっても、ビーバーの毛皮が一番高価だったのではない。値段はそこそこだったが、取り引きの量が多かったのだ。そのため、他の毛皮の値段や、毛皮と交換に先住民に渡す製品の値段も、ビーバーの毛皮に換算してつけられた。最も上質のビーバー皮を1メイド・ビーバー(MB)とし、例えばカワウソ皮なら2枚で1MB、クロクマの皮は1枚で3MB、ナイフは3丁で1MB,鉄砲は一丁が14MB…という風に値段がつけられた。
カナダという国は、ビーバーによって築かれた。1975年、ビーバーはカナダの「国獣」に指定されている。

かつて私は、TVディレクターとして、ビーバーの番組を作ったことがあった。そのためにいろいろと下調べをし、また、野生のビーバーをつぶさに観察する機会にも恵まれた。その過程で、「ヘー!」とか「ホー!」とか「なるほど!」と思うことがたくさんあった。自然番組の主人公になるような動物には、どれも、「ヘー!ホー!なるほど!」がいっぱいなのだが、ビーバーにはとりわけ多かったように思う。しかも、ビーバーの場合、その生態の「ヘー!ホー!なるほど!」が、カナダという国の風土や歴史と深く結びついている。そこがまた、とてつもなく面白い。本稿では、独特の体のつくりや生態、そして人との関わりなど、ビーバーの面白さをお伝えできればと思う。
まずは、なぜビーバーがそんなに珍重されたのか、という話から。そこには、ビーバーの数百万年に及ぶ進化の歴史が秘められていた。

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