カナダ国立博物館巡り

03. 国立自然博物館②

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パッセンジャー・ピジョン(右)

前回にも触れたように、カナダは渡り鳥も含めて450種に上る鳥類の豊富な国であり、自然博物館はその殆どを展示している。しかし、その鳥類も油断するとあっという間に絶滅してしまうものがいる。

例えばここに剥製となっている「パッセンジャー・ピジョン」は、かつて地球上で最も数多く生息していた渡り鳥で、最盛期には北米大陸で30億羽から50億羽もいたと言われた。その群れが飛ぶ時は何マイルにも渡って空が暗くなったほどだったという。しかし、19世紀に始まった乱獲と生息地の森の開発であっという間に絶滅。動物園に飼われていた最後の「パッセンジャー・ピジョン」が死んだ1914年が絶滅の年と言われる。

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こうした、人間の影響で絶滅しかかっている絶滅危惧種には貴重な猛禽類なども入ってくる。博物館では、こうした猛禽類の標本も豊富に揃っているが、標本だけでは彼らがどんな環境で暮らしているのか実感が湧かない。そこで博物館では、カナダの大自然の中でこうした生き物がどのように暮らしているのか、一目でわかるような“あるもの”を用意した。それが、大パノラマ(ジオラマ)である。

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例えば、これはジオラマの中に張り出した梢の先に止まる鷹。背景の大きな絵は写真ではなく画家達がかいたものだ。案内のスミス氏によれば、こうした動物が生息するカナダの自然を実際に芸術家に訪ねて貰って、どのように描けば効果的なのかを研究して貰ったという。一羽の鷹がどのような自然によってはぐくまれているのかを伝えるジオラマだ。

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そのジオラマの大きさを分かって貰うには、次の写真がいいと思うが、展示のガラスの中には、バイソンやグリズリー、ホッキョクグマなどがいるかなり大きなジオラマである。こちらはほ乳類の展示室だが、それぞれ、カナダの大自然の中にいるかのように感じられる素晴らしい出来である。雪景色の中にいる巨大なヘラジカやかわいらしいホッキョクウサギなどのジオラマもある。

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さて、ほ乳類と言えば最大のほ乳類はクジラ。ここには、全長19メートルのシロナガスクジラの骨格標本もある。成長すると30メートルにもなる。1978年にカナダ、ニューファンドランドの海岸に打ち上げられたものを運んで、8年間土の中に埋めて白骨化したものだそうだ。写真に収まりきれないほど大きい。

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次は鉱物の展示室。ここには実に色とりどり、結晶の形も様々な鉱物が展示されている。自然博物館が、当初は地質調査の成果物の展示から始まったとされるが、長年の蓄積がものをいっているのだろう。広大なカナダには多様な鉱物が存在し、例えば北西部のノースウェスト準州ではダイヤモンドや金も採掘されている。隕石も7個あるそうだ。子供たちがこうした鉱石の細部を見たり、地球内部の仕組みを学んだり出来るように、展示法もいろいろと工夫されている。

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自然博物館ではまた、2010年から「水」の展示室を新設した。カナダは北極海、太平洋、大西洋と周りを海に囲まれていると同時に、国内に数多くの湖と川を持っている。生命の源でもあるそうした水の生き物に関心を持って貰いたいという狙いからだそうだ。水族館とはまた違った展示だが、水中生物の多様性を知ると同時に、海中生物の展示では、周りに「海のにおい」を漂わせるなど、こうした生物を生かす環境にも注意が向くように工夫されている。

7つの分野を展示したギャラリーをゆっくり見て歩いていると、何時間あっても足りないくらいだ。しかし、そこには単に沢山の種類を見せるという以上の工夫が息づいているように思う。それは、こうした多様な生き物をはぐくんでいる地球環境がいかに豊かなものか、そしてその地球環境がいかにかけがえのないものか、ということを伝える工夫である。それはまた、広大な国土を持ち、人の手によって荒らされていない自然をまだ残しているカナダだからこそ、伝えなければならないメッセージだと思う。自然博物館は現在、2017年の建国150年に向けて、北極圏の生き物をはじめとして、全体の展示をより魅力的にする改修を行っている。国立自然博物館がそこに込めようとするメッセージは、さらに力強いものになるだろう。(自然博物館終わり)

文・写真:軍司達男
ジャーナリスト、ライター、テレビ番組制作会社の企画アドバイザー

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