超お手軽!! トーテムポール大紀行

02. 空中墓地 ハイダ族 チーフ・スケダンズのポール

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ハイダ族は、バンクーバー島の北西に浮かぶ群島に住む人たちである。その群島は、以前は「クイーン・シャーロット諸島」と呼ばれていたが、2010年から正式な呼び名が「ハイダグワイ」に改められた。「ハイダの島々」という意味だ。

02. 空中墓地 ハイダ族 チーフ・スケダンズのポール-イメージ3
世界遺産・スカングアイの村落跡

今日でも住民5000人のうち半数をハイダの人々が占める。

イダグワイの最南部、スカングアイ(アンソニー島)は、今では無人島だが、かつてはハイダの村があり、にぎわった。

1981年、その村落址は、歴史的に重要性が高いとしてユネスコの世界遺産に登録された。

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写真の集落はスキディゲート。ハイダグワイ最大の島、グレアム島の南東部にある。写真は1878年に撮影されたもので、浜辺に家屋がずらりと建ち並び、トーテムポールが林立して、大層にぎわっていた様子がよくわかる。

左端に写っているポールは、その後、1936年に買い取られ、この村から持ち去られて、スタンレーパークの一角に立てられた。ところが、次第に傷みが激しくなり、1962年に処分された。

02. 空中墓地 ハイダ族 チーフ・スケダンズのポール-イメージ8
チーフ・スケダンズ遺体安置ポール(複製)

現在スタンレーパークに立っているものは、オリジナルが処分されるにともなって作られた、複製(レプリカ)だ。複製といっても、あなどってはいけない。彫ったのは、ハイダの血を引き、人間国宝級の芸術家だった、ビル・リード(1920-1998)なのだ。彼については、後に少し詳しく述べよう。

さて、このポールは、元々、スケダンズというチーフの死を悼んで立てられたものだった。

オリジナルのポールでは、てっぺんの四角い板の背後がくり抜かれ、スケダンズの遺骸が収められていたという。つまり、このポールは、彼の墓でもあったわけだ。

故人を顕彰するポールは他の部族にも多いが、墓を兼ねているのは、ハイダ族で発達した風習だ。

02. 空中墓地 ハイダ族 チーフ・スケダンズのポール-イメージ9

ポールの意匠を見てみよう。

てっぺんの板の赤く円い部分は、スケダンズの家紋である月を表し、そこにタカの顔の彫刻がついている。

月の両側には、タカの翼、足、爪が描かれている。

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その下は、シロイワヤギ。名前の通り、「白い、岩山に住むヤギ」で、日本の特別天然記念物ニホンカモシカに近い動物だ。

この彫刻では、短刀のような角と、足の蹄が、シロイワヤギの特徴を表している。

彫像をよく見ると、歯並びの表現は、ヤギよりも人間に近い。
ここに彫られている生きものは、ヤギだけど、同時に、人間なのだ。

ハイダ族に限らず、北米先住民に広く見られた世界観では、動物と人間の境はあいまいで、動物はしばしば人間に変身し、人間はときに動物に化身した。

そして、動物は、種類ごとにそれぞれ、人間と同じような社会生活を営んでいると考えられた。

シロイワヤギは、料理が得意で、しばしば盛大な宴会を催す。また、人間に姿を変えているときも、草を好んで食べるとされた。

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ポールの一番下はアザラシ(もしくはクジラ?)を抱えたグリズリー(ヒグマ)だ。眉・目・鼻・口の表現はシロイワヤギと変わらないが、太い足と、前足の長い爪で、ヒグマを表していることがわかる。

クマも、人間に姿を変えることができる。だから、オスのクマが、人間の姿となって、人間の女性と結婚することがある(ちなみに、この地方では、そういうことをするのは高貴な生まれのクマだけで、お相手の女性も、高貴な生まれのお嬢様に限られた)。

その結果生まれた子どもは、クマの血を引くことになる。このように、クマ(クマ人間)を祖先にもつ家系を「クマ氏族」と呼ぶ。

同じように、ワシ氏族、シャチ氏族、オオカミ氏族、カエル氏族など、さまざまな氏族(clan)がある。氏族とは、家系のようなものだ。そして、それぞれの家系には、氏族の発祥となった動物が、遠い昔、いかにして自分たちの祖先と交わったかについての謂われが伝わっている。

家の前に立てられたトーテムポールには、そうした、一家の発祥にまつわる由来や、その結果として授かった家紋などが刻まれているのだ。

なお、「トーテム」とは、カナダの中央部に住むオジブワ族(アニシナベ族)の言葉で、「彼の親戚」を意味する「オトテマン」が語源だとも、「おなじ血縁の地域グループ」を意味する「ドーデム」に由来するとも言われている。

トーテムポールには、部族ごとに定まった様式がある。ハイダ族のトーテムポールは、あまりカラフルではない。白木に、朱色・黒・白がポイント的に使われ、目の周りは水色に塗られている(ただし、スタンレーパークのチーフ・スケダンズのポールは、本来白木であるはずの木地を、茶色く塗っている)。太い眉と大きな目も、ハイダ族のポールの特徴だ。

トーテムポールには巨木を使う。チーフ・スケダンズのポールの場合、周囲は約4m。大人が二人がかりでも抱えきれない太さである。

文:横須賀孝弘

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