02. 泳ぐ金塊

ビーバー カナダを創ったスーパー・アニマル02. 泳ぐ金塊

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ビーバーは「泳ぐ金塊」?

森と湖の国、カナダ。その自然環境にぴったりあわせた暮らしを送るのがビーバーだ。乱獲され、一時は絶滅が心配されるほど減ったが、その後の保護により、いまでは大都市トロントにも姿を現すほど回復した。首都オタワの郊外にあるガティノー公園や、オタワやトロントから車で3時間ほどの所にあるアルゴンキン州立公園(オンタリオ州)を訪ねれば、野生のビーバーの暮らしを観察することだってできる。

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現在、世界には2種類のビーバーが生息している。ユーラシア大陸(ヨーロッパとアジア)に住むヨーロッパビーバー(学名Castor hiber)と、北米のアメリカビーバー(学名Castor canadensis)だ。両種は染色体の数が異なり、仮に結婚させても子どもは生まれない。しかし、姿かたちは互いにそっくりで、よくよく見ないと区別をつけにくい。このように、ヨーロッパに親戚がいることが、北米のビーバーに悲劇を招いた。

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イギリス紳士もナポレオンも帽子の原料はビーバー

15世紀、ヨーロッパでは、ビーバーの毛から作った高級なフェルト帽が、貴族やお大尽のステータスシンボルとして大流行。お陰でヨーロッパビーバーは乱獲され、15世紀末には絶滅寸前に追い込まれた。ところが、ちょうどその頃、北米には無尽蔵のビーバーが住んでいることが分かった。そこで、ヨーロッパのビーバーに代わって、北米のビーバーが帽子に変身させられることとなった。つまり、ヨーロッパに親戚がいたばかりに、高級フェルト帽という大きな需要が生まれ、後から見つかった北米のビーバーは、とんだとばっちりを受けたことになる。

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茶色く硬い「保護毛」の下に、白く柔らかな「下毛」がびっしり

アメリカビーバーは、北極圏に近いあたりからメキシコ北部まで、北米大陸に広く分布するが、毛皮としての価値があったのは、ロッキー山脈や、カナダに住むビーバー。それも、冬に採れたものが最高とされた。北国の、寒い季節のビーバーは、防寒・防水のために毛が密集して生えているからだ。ビーバーの体に生える毛には、2種類ある。体の表面を覆う、ふかふかとした細くて柔らかな「下毛」と、下毛に被さるように生える、強くて弾力のある「保護毛」だ。そのうち、フェルトに使うのは、下毛だけ。保護毛はじゃま物なのだ。

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保護毛のついたままの毛皮(左)と「メイド・ビーバー」(右)。マニトバ博物館蔵

交易商が先住民からビーバーの毛皮を入手する際、特に珍重したのは、先住民が毛布として使い古した毛皮だった。冬に捕らえたビーバーの毛皮を、四角く切り、5匹から8匹分ほどを縫い合わせたものを、毛を内側にして素肌に羽織る。1年半ほど、毎日羽織り続けると、固い保護毛は肌に擦られてすっかり抜け落ち、フェルト帽に必要な柔らかな下毛だけとなる。第1章で述べた、物々交換の基準、「メイド・ビーバー」とは、もともと、こうした、下毛だけになった状態の毛皮を指したのである。ビーバーの下毛の数は、1センチ四方あたり2万本に及ぶという。

もちろん、ビーバーだって、なにもフェルト帽になりたくてふかふかの下毛を発達させたわけではない。寒冷地の水辺で生活するのに都合がよいよう、進化した結果なのだ。そして、「森と湖の国」、カナダの環境は、そんな風に進化したビーバーにとって、まさに理想的だった。下毛だけではない。彼らの体のつくりも、そして、生き方も、「森と湖の国」の環境に持って来いなのだ。もう少し詳しく見てみよう。

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