03. メタボ狸、水遁の術でサバイバル

ビーバー カナダを創ったスーパー・アニマル03. メタボ狸、水遁の術でサバイバル

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03. メタボ狸、水遁の術でサバイバル-イメージ1
ビーバーは体長(頭胴長)90cm、尾長30cm。カピバラに次いで世界で2番目に大きなげっ歯類

ビーバーは漢字では「海狸」。「かいり」とも「うみだぬき」とも読む。海に住んでいるわけでもないのに、なぜ「海」ダヌキなのかは分からないが、姿かたちは、なるほど、タヌキに似ていなくもない。もっとも、ビーバーの体長、つまり鼻先から尻尾の付け根までの長さは90センチほどあるから、体長60センチのタヌキよりずっと大きい。体重も、タヌキが3~9キロなのに対し、ビーバーは18~27キロ。足が短くずんぐりむっくりの体型をした、いわばメタボ狸だ。「海狸」の姿は、どちらかというと、実物の狸よりも、信楽焼の置物の方に近いかもしれない。

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上陸前に匂いを嗅ぎ、危険が ないことをよく確かめる

太った体で、足も短く、おまけに、歩行にはじゃまな、しゃもじのような尻尾までついたビーバー。当然、逃げ足は遅く、オオカミやコヨーテに襲われたらひとたまりもない。だから、水から陸に上がる時には、周りに敵がいないか、匂いを嗅いで、よくよく確かめる。上陸しても、水際から20m以上は離れない。少しでも危険を感じたら、一目散に水に駆け込む。

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水中では魚雷体型に変身

万一敵に追われても、いったん水に入ってしまえば、しめたものだ。水には浮力があるので、重い体は苦にならないし、ずんぐりむっくりの体型も、水中では魚雷のようなスマートな姿に早変わり。後ろ足についた水かきで水を蹴ったり、平らな尻尾を櫓のようにあおったりして、速やかに泳ぐことができる。尻尾は、方向を変えるための舵の役割も果たす。その気になれば100mを40秒足らずで泳ぐというから、100mを57秒で泳ぐ北島康介選手でもかなわない。また、連続して15分間も潜ったままでいられる。ビーバーは、水を利用して敵から逃れる忍者のワザ、「水遁の術」の達人なのだ。

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1年に200本以上もの木を倒す

陸の上がそれほど危ないなら、そもそも上陸などしなければよさそうなものだが、そうはいかない事情がある。ビーバーは、草食。水草も食べるが、主な食べものは、地上の植物なのだ。特に、ポプラやヤナギ、カエデなどが好物。水辺に生えるそれらの木々を倒して、葉っぱや小枝、樹皮をかじる。『動物記』で有名な博物学者、シートンによると、1頭で1年に平均216本もの木を倒すという。ビーバーは、2頭の成獣と子どもたちからなる家族で暮らすので、一家が倒す木の本数は年に400本を超えることになる。
そんなにも大量の樹木を消費するビーバー。小さな流れなら、周辺の木々はたちまち食べつくされてしまうだろう。そこでビーバーが打つ手は、水辺を広げること。流れをせき止めてダム湖を作り、そのダムを増築して、水辺の面積を増やすのだ。ビーバーがダムを作ることは比較的よく知られているが、その目的の一つは、安全に食べ物を得ることだったのである。ダムだけではない。ダム湖から四方八方に運河を掘り進み、周辺一帯の木々にアプローチする。運河は、倒した木を巣の方へ運ぶのにも使う。

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ビーバーが作った池。池の左下に浮島のように見えるのが巣

ビーバーの築くダムは、時に、非常に大きなものになる。世界最長のビーバー・ダムは、アルバータ州北部、ウッドバッファロー国立公園内にあり、その長さは850mに及ぶという。2007年、ケベック州に住む遠隔探査の専門家が「グーグル・アース」を使って見つけた。その専門家が、過去の航空写真や宇宙からの画像と比べた結果、このダムを作るのには25年以上を要したことがわかったという。
それにしても、ビーバーはどのようにして、こうした偉業を達成するのだろうか?そこには、驚くような本能の仕組みが隠されていた。

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