04. 国立戦争博物館①

カナダ国立博物館巡り04. 国立戦争博物館①

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Ottawa Tourism

国立博物館巡りの2カ所目は、オタワ市にある国立戦争博物館を訪ねる。カナダ国立博物館の見所の一つは、その建物にあると前にも書いたが、この戦争博物館も例にもれず、建築家の熱い思いが込められたユニークな建物である。周りを軍事用の土手に見立てた外壁で囲まれ、周辺と屋上は一面の草地になっている。平べったい低層の建物で、一カ所にサメの背びれのように大きな三角形の構造物が空に向かって伸びている。

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設計者の名はレイモンド・モリヤマ。1929年生まれの日系カナダ人で、第二次世界大戦の時には両親がカナダで収容所生活を体験したというが、こうした戦争体験から来るメッセージが建築の随所に取り入れられている。

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広報担当のロバート・ゴーバン(Robert Gauvin)さんは「ここを案内するのは初めて」と言いながら、建物の裏側にある草地に案内してくれた。この草地の小山やうねりは第1次世界大戦時に連合国側について戦ったニューファンドランドの兵士が戦ったフランスの丘を模している。ロバートさんは、その草地に身を伏せながら、多くの若者が戦死した悲惨な戦争の様子を語ってくれた。そこから続く屋上の草地には、季節になると一面にポピーの花が咲くそうだ。ポピーの花は、カナダでは11月11日の「Remembrance Day」(戦没者追悼記念日)にカナダの人々が胸につける花でもある。

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博物館の内部に入ってみると、これが普通ではない。内部が複雑に入り組んでいる。迷路のような通路、斜めに傾いた壁、一部は床さえ傾斜している。これは、「博物館が出来ただけで意義がある」と言われる位、戦争に対する様々な考え方がぶつかり合ったことを設計者が表現したとも、戦争が日常とは違った緊迫感をもった事象であることを表現したとも言われる。

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この博物館は、もちろん戦争を物語る様々な展示品を並べている。例えば、沢山の戦車や戦闘機を並べた広い展示場やヒトラーが使っていた車(寄贈品)の展示もある。戦争博物館の定番とも言える品々だ。

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それはそれで見学者にとっては魅力的だろうが、ここの特徴は大人から子供にまで戦争というものが普通ではない(unusualな)事象だということを知って、感じて、祈って貰うようにしている事ではないかと思う。それは決して戦争を美化したり、兵士たちを英雄視したりすることではなく、出来るだけ戦争のありのままを感じて貰うことだと考えているようにも見える。

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館内に入ってしばらく進むと、カナダが連合国の一員として参加した第1次世界大戦のコーナになる。暗がりの中に当時の兵士が過ごした塹壕(ざんごう)の実物大のモデルが現れる。塹壕戦が繰り広げられたヨーロッパの西部戦線では、こうした塹壕は通常3列に掘られていて、兵士たちはローテーションで移動、時には2週間以上も塹壕の中で生活した。

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砲弾が飛び交う中での塹壕生活は暗く非衛生的で、底には膝くらいの水もたまっていたり、ネズミが出たりした。その塹壕の暗闇の中を歩きながらこうした説明を聞いて、見学者は戦争の非日常性、異常性を感じることになる。

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その隣には、同じ西部戦線、ベルギーのパッシェンデールの戦場の大きな写真が展示されていた。砲撃を受けて一面の荒れ地となったパッシェンデールの戦場で、死亡した兵士が沼地にうつぶせになっている。ここは1917年に、ドイツと連合国との死闘が展開されたところで、沼地で戦車も足を取られて動けず、ドイツ軍の猛攻にさらされ、最も多くの血が流された戦場となった。カナダ軍は第1次大戦で6万6600人の死者を出している。

戦争博物館では、ありのままの戦争を知るこうした展示の他にも、(このあと紹介する)戦没者を追悼するメモリアルホールや、希望の像などの洗練された仕掛けを各所に取り入れている。見学者たちに戦争とは何か、亡くなった兵士をどう悼むか、また、戦争を起こさないためにはどうすればいいかを、感じたり考えたりしてもらう工夫を凝らしている。(つづく)

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