04. 動物界の丹下健三 !?

ビーバー カナダを創ったスーパー・アニマル04. 動物界の丹下健三 !?

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ダム作りに励むビーバー

5月上旬、春まだ浅いカナダの森で、ビーバーがダムを作る様子を観察したことがある。幅2mほどの、小さな流れを堰き止めるのだが、人間なら、大人でも、道具や機械を使わないと到底ムリと思われるほど短時間に、完璧に流れを塞いでしまったのには、心底驚いた。その手順は、実に理にかなったものだった。まず、小枝を何本も運び、川の底に突き刺して、基礎工事。このとき、小枝は、齧って尖った方を川底に刺し、枝先は斜めにして、上流を向くようにする。すると、枝先が川の流れに押されるので、川が流れるほど小枝はますますしっかりと川底に固定される。次に、ちょっと太めの木を底の方までしっかり突き刺して、頑丈な柱を作る。こうして土台ができると、その上流側に、泥を塗りこむ。泥には、木の根や枯葉、水草などがたくさん混ざっており、それらが土台にからまって、水を漏らさない。さらにその上に太い木を乗せ、木の重みで土台を押さえつけ、隙間を減らす。ビーバーはせっせと働き、小川は1時間足らずで完全にふさがってしまった。ビーバーが流れをせき止めてできる池は、最初は小規模でも、水が溢れそうになるにつれてダムも増築するので、次第に大きくなっていく。

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ダム作りに励むビーバー

ビーバーの子どもは、生後2年ほど親と暮らす。その間、ダムの補強など、親の作業を手伝う。しかし、ダム作りは、親から教わるのではない。生まれつき備わった、本能による行動なのだ。複雑なダム作りへと導く、ビーバーの本能。その仕組みは、一体どうなっているのだろうか? スウェーデンの動物学者、ウィルソンは、
「ビーバーは、水の流れる音を聞くと、その音をできるだけ小さくしようと行動する」
と考えた。飼われているビーバーの飼育場にスピーカーを置き、流水音を再生したところ、ビーバーはスピーカーの前にダムを築き始めたというのだ。

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スピーカーの音を探りに来た

本当だろうか? 野生のビーバーが住む水辺で試してみた。あらかじめ録音しておいたせせらぎの音を、スピーカーから盛大に流す。半時間ほどすると、二頭のビーバーが現れた。最初は不審げにスピーカーの匂いを嗅いだりしていたが、やがてスピーカーの下に小枝や泥を運び込み、積み始めたではないか。一見複雑に見えるビーバーのダム作りも、こういった単純な本能の仕組みの積み重ねなのだろう。

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ビーバーの「ロッジ」

ビーバーの建築能力は、巣作りでも発揮される。ビーバーの巣を英語で「ビーバー・ロッジ」と呼ぶ。ビーバー池の中に小さな島のように浮かぶのが、彼らのロッジだ。差し渡し4~5m。入口は見えない。敵の侵入を防ぐため、出入り口は水中に開いているのだ。

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(上)浮島のように見えるビーバーの巣 (下)干上がったビーバー池の巣。池の底から組み上げられていることがわかる

池の中のロッジは、浮島のように見えるが、池の底から枝を組み上げて作る。相当大掛かりな建造物だ。ロッジの中、水面より上の部分に、ビーバー一家の居室が作られている。秋には、大量の木の枝をロッジの近くに沈め、冬に備える。ビーバーは、冬眠はしない。冬、ビーバー池には厚く氷が張るが、その氷の下に蓄えた木の枝を、ロッジに引き入れて食べるのだ。
親元を離れる2歳ぐらいから、ダムやロッジを建築する能力を有するビーバー。人間なら末恐ろしい天才児で、その能力が年とともに発達をつづけたとしたら、様々な名建築を残し「世界のタンゲ」と呼ばれた建築家、丹下健三も裸足で逃げ出すところだが、ビーバーの建築能力は本能によるものなので、年齢を重ねても、向上することはない。

建築術のほかにもうひとつ、ビーバーが人間顔負けの力を発揮するものがある。それは、自然環境を変えてしまう力である。

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