08. オー ビーバー 

ビーバー カナダを創ったスーパー・アニマル08. オー ビーバー 

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カナダは、16世紀から20世紀に至るまで、タラ、毛皮、小麦、木材、地下資源など、自然を利用した第一次産業の産品をヨーロッパに輸出して発展してきた。中でもビーバーは、現在のカナダ領にあたる広い地域の、北極圏を除くほぼ全域に分布し、ビーバーの毛皮を求めての交易は、他のどの産業にもまして、カナダという国が形づくられる上で大きな役割を果たした。なお、カナダの毛皮交易は、先住民の協力なしにはなりたたず、先住民とヨーロッパ系の人々は、互いに取引の相手として共存する関係で進められてきた(もっとも先住民同士、白人同士は、時に激しく敵対しあったが)。そうした先住民とヨーロッパ系の人たちの関係が、先住民と入植者とが敵対することの多かった隣国アメリカとは一味違う歴史をカナダに与えた。

 

ビーバー自体は、カナダ建国のいわば犠牲となって、1930年代には絶滅寸前にまで追い込まれた。しかし、その後、保護されるようになると、急速に復活していった。ビーバーが、他の動物を襲って食べるような、いわゆる生態系の頂点に近い生きものだったら、中々すぐには復活できなかっただろう。木の皮や葉っぱなどを食べる動物だったことが幸いしたのだ。しかも、ダムを築き、頑丈な巣を作って身を守る「チエ」も備えていた。巣の中では、ひと組の夫婦が仲睦まじく暮らし、子どもを大切に育んできた。平和な暮らしを守るため、ダムや巣の修復、冬に備えての食料の備蓄など、懸命に働いてきた。北国カナダの冬の酷寒も、厚い毛と、自分で築いた住居と、食料の備えで乗り切ってきた。そして、彼らの作る池は、彼らだけでなく、周りの生き物の世界をも豊かにしてきた。

 

カナダという国への、その貢献。絶滅の淵という危機的状況をも跳ね返した、その逞しさ。自ら進んで他を攻撃することのない、その温和な生き方。敵から巧みに身を守る、その驚くべき「チエ」。夫婦が睦み会い、子どもを大切に育てる、その堅実で愛情に満ちた家族生活。そして、そのたゆまぬ勤勉と、北国の環境へのみごとな適応。こうして見ると、ビーバーの特徴は、どれも、カナダの人々が建国当時から目指し、あるいは、営々と築き上げてきた暮らしや信条に、ぴたりと一致するではないか。種は違っても同じ森に暮らす仲間たちへの貢献も、国を超えて同じ地球に暮らす人々への国際的貢献に喩えることができよう。また、ビーバーを仲立ちに先住民とヨーロッパ人が共存した関係は、多様な民族が互いに尊重しあいながらの共存を目指す現代カナダの国是に一致する。

 

ビーバーは、カナダ創成の礎(いしずえ)となったが、それだけでなく、その生き方も、カナダの人々を象徴するにふさわしい。世界で二番目に大きなげっ歯類、ビーバーは、世界で二番目に広い国カナダのさまざまな様相を体現した、スーパー・アニマルなのだ。

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