09. 「45分」というルール

「1000万平方キロ」の奇跡

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「エア・ティンディ」というブッシュ・プレインを運航するこの会社は、イエローナイフとの間をつなぐ道路を持たない、言わば「陸の孤島」のようなコミュティに物資を届ける定期便を飛ばし続けている。

僕は、先住民の人たちが住む「ワチ(Whati)村」へと向かう飛行機の積み込み作業を見せてもらうことができた。

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荷物はピーマンやヨーグルトといった食料品など、文字通りの生活必需品ばかりだ。

ワチ村への定期便は、休みの土曜日を除いて1日に2便、運航されているそうだ。

機内のシートは写真のように取り外せるようになっていて、フライトのたびに、乗客数と積み込む荷物に応じてシートの数を減らしたりして総重量とスペースを調節している。

ちなみに、冬になると凍った湖の上に「アイスロード」が開通するので、ここでは冬の方が交通の便がよくなる。だから、この定期便はむしろ夏の方が需要があるんだそうだ。

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一方、冬の間で最も忙しいのが、クリスマスの時期。機体の下部にも、こんなふうに荷物をたくさん積み込めるようになっている。

クリスマスになると、プレゼントを買いに行くのが大変な人たちのもとへ、サンタクロースさながら、注文されたプレゼントを満載して飛び立つのだろう。

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エア・ティンディの格納庫では、こんなすごい仕組みを見ることもできた。

最初からタイヤといっしょにスキーが付いている。そして、コクピットでの操作によってスキーを上下させ、タイヤで離陸し、スキーで着陸することができるという「優れモノ」なのだ。

また、外に駐機してある飛行機のエンジン部分には覆いがされていて、エンジンが冷えすぎないよう、かつ、内部に雪が入らないような工夫が施されていた。

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フライトの前にはこんなふうに、機内に暖かい空気を送り込む作業も必要だ。温度を上げておかないと、とても人を搭乗させることはできないのだろう。

様々な工夫と努力により、人々のライフラインを支え続けるエア・ティンディのブッシュ・パイロットたちは、こうした定期便以外にも、実は非常に重要な役割を担っている。

それが「メディバック(medevac)」と呼ばれる、“空飛ぶ救急車”の役割だ。

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ノースウエスト準州政府がすべての経費を負担し、民間会社であるエア・ティンディにメディバックの役割を委託している、と言えばいいだろうか。

「陸の孤島」のコミュニティには、看護師がいるヘルスセンターという施設はあるものの、医師は時々訪れるだけで常駐はしていない。

だから病人や怪我人が出たら、とにかくイエローナイフの病院に急いで搬送するより手がないのだ。

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要請に基づく緊急のフライトは、ひと月に100回にものぼるという。機内には患者を寝かせることができるベッドのようなものが設置されていて、その下には酸素ボンベが2本、備えられている。

あとの機材は患者の怪我や容態などを踏まえ、同乗する医療関係者が判断して必要なものを積み込む仕組みだ。

エア・ティンディを経営するアルさんと、若きブッシュ・パイロットのテッドさんに話を聞いた。長身のテッドさんには機内の天井はちょっと低すぎるようだ。

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お二人によると、準州政府から委託をうけた「メディバック」では、なんと出動要請から45分以内に飛び立たなければならない、という決まりがあるんだそうだ。

家族と食事をしていようが、就寝中であろうが、「45分以内」だ。

考えてもみてほしい。寝ていたところを携帯電話で起こされ、すぐさま飛び起きて車のハンドルを握り、目をこすりながら暗い氷点下の道を空港へと向かう。飛行機に飛び乗り、凍った滑走路を飛び立つ。ここまでが「45分以内」なのだ。

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カナダは世界第2位、約1000万平方キロの国土を持つ。北極圏に近いエリアや、イヌイットの人たちが暮らす集落だってある。

広い国土で様々な人が、それぞれに生きていくために、僕らが気づかないところで「45分」のルールを守り続けている人たちがいるのだ。

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