11. 美味しい紅茶を飲むために

「1000万平方キロ」の奇跡

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かつて、この極寒の地の生活の足だった犬ぞりは、今や完全にスノーモービルに取って代わられている。

ジョセフさんは、「犬ぞりのいいところは、スノーモービルと違って壊れないところだ」なんて言っているけれど、やっぱりスノーモービルは便利だ。人々の生活になくてはならないものとなっている。

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その使い方と言えば、例えば冬は本当に寒いので、光熱費を節約するために薪ストーブを使っている人が多く、スノーモービルで薪を集めに行ったりするそうだ。

それともう1つ、飲料水を得るためにも、やはりスノーモービルが大活躍する。つまり、きれいな雪を集め、溶かして水として使うのだ。

ここでは飲料水は給水車によって運ばれてくるので、タンクに溜めておいて使う。また生活用水としては井戸水もある。いずれも「行政サービス」だ。

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でもジョセフさんに言わせれば、「タンクに水を溜めておいても凍ってしまうし、井戸水も臭いがあって、飲みたくないんだ」とのこと。どうも行政の思惑通りにはいかないようだ。

先住民の人たちは、あまりコーヒーは飲まず、紅茶を飲む人が多い。だから美味しい紅茶を飲むために、きれいな雪を集めに行くのだ。

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大きなバケツを積んだそりをスノーモービルで引っ張りながら、近くの湖へと向かう。

目的地の場所に到着すると、ジョセフさんは手馴れたもので、すぐに斧で辺りの木を切り倒し、あっという間に焚き火の準備を終えてしまった。

毎年、おじいさんと犬ぞりで罠猟に行っていたのだ、こんなふうに火をおこし、凍った魚を焼いたり、お茶を入れたりしていたのだろう。

ヤカンの蓋を使い、湖面に積もった雪の少し下の部分をすくっては、ヤカンの中に入れていく。

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表面の雪は乾いてサラサラなので、水分を含んだ少し下の層の雪を使うのがいいらしい。

ヤカンを火にかけるのにも、近くの木を切り倒してこんなふうにすぐに準備してしまう。ほとんどのことが斧1本で済んでしまうのだから、すごいことだ。

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プラスチックのカップでも、雪の中に半分埋もれさせておけば倒れる心配もない。熱いヤカンから、これまた熱々の紅茶が注ぎ込まれる。

さあ、ここまではジョセフさんが、罠猟の時の気分を味あわせてくれた、というところ。

こんなふうに周囲にあるものを使ってお茶を飲み、犬を休ませながら何週間も獲物を追い続けたのだろう。

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さて、ここに来た本当の目的は、家で紅茶を美味しく飲むために、きれいな雪を手に入れることだ。ジョセフさんがスコップを使い、表面のサラサラの雪を取り除いていく。

タンクの中に入れるのはもちろん、その少し下の雪だ。水分を含んでいるだけではなく、密閉保存されているようなものだから、本当にきれいな雪なんだろうと気づかされた。

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ノースウエスト準州の役所の人には申し訳ないけれど、やっぱり給水車で運ばれてくる水よりも、この雪を溶かした水の方がずっと美味しいだろうと思う。

こんなふうに斧1本で、いろんなことをなんとかしてしまうような人たちだ。生きていく能力というか、逞しさが違う。

おとなしく給水車の水を飲めと言われても、簡単には言うことをきいてくれないだろうなあ。

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