03. なぜ氷の滝を登ったのか=Joie de Vivre(ジョワ・ド・ヴィーヴル)1=
凍りついたモンモランシー滝

カナダの歴史を謎解く旅03. なぜ氷の滝を登ったのか=Joie de Vivre(ジョワ・ド・ヴィーヴル)1=

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僕はカナダの「謎」ばかりを追っていたわけじゃない。ケベックの楽しさを紹介することも、今回の旅の大きな目的だ。

「Joie de Vivre」(ジョワ・ド・ヴィーヴル=生きる喜び)―。

これはケベックの人たちが大好きな言葉なんだそうだ。さすがフランス系、人生楽しまなくっちゃ、といったところだと思う。

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だから彼らは氷点下の冬にも関わらず、屋外で大いに冬を楽しんでいる。街中ではこの寒いのにジョギングしている人にもしばしば出くわした。しかしだからといって、凍った滝を登るアイスクライミングなんてこと、よくもまあ考えついたもんだと思う。

ナイアガラより30メートルも落差の大きい「モンモランシー滝」。滝に向かって右側は水量が多くて冬でも完全には凍らないけれど、左側は見事な氷の壁になっている。それを登る、という極めてシンプルなアクティビティなんだけど。

そして僕もこれから、この凍った滝を登るんだそうだ。どうしてこんなことになったのか、自分でもよく分からない。

確かに出発前、「念のため」ということで靴のサイズを尋ねられはした。でも、「自分で登ったら写真が撮れないから」とも言っておいたはず。あくまで「念のため」だったんだけど、現場に到着したらすっかり登る前提でインストラクターのお兄ちゃんがスタンバイしていた。

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靴にはこんな金具がしっかりと取り付けられ、このつま先を「ガスッ」と氷の壁に突き刺していく。そうやって足場を固めつつ、両手にはピッケルを持って、カマキリみたいな状態で登っていく。

ケベック市内で日本人通訳にちょっと聞いたら、「地元の人はあまりやらないですよ。旅行で来たフランス人とかじゃないですか、あれをやるのは」と言っていた。

一方、インストラクターのお兄ちゃんに聞いたら、「地元の人もみんな大好き。ケベックの人も旅行者もみんなやるよ」と笑顔で話していた。どっちが本当なんだろうか。

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簡単な説明を受けて、「さあ、行きましょうか」みたいな感じで、心の準備もないまま氷の壁を登り始めた。下を見ちゃいけない。僕はそもそも高所恐怖症だ。

雪が積もっているところは靴の金具もピッケルもうまく突き刺さるけれど、固い氷の部分に行くとどこに足場をつくればいいのか、どこにピッケルを打ちこめばいいのか判断が難しい。

力任せにピッケルを打ち付けると、砕けた氷の塊が自分の方に飛んでくるので要注意だ。

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あ、急に思い出したけど、登る前にこの滝の周辺では泳いじゃダメ、みたいな看板が雪に埋もれていたっけ。

夏に泳ぐのと冬に氷を登るのとでは、どっちが危険なんだろうか。責任ある立場の方にきちんとした見解を示していただきたい。

登っていくうちに、意外といけるなあ、などと思い始めるんだから、人間なんていいかげんなもんだ。

一歩一歩、上を目指し、最後にゴールに到達した時には、氷の壁にへばりついたまま一息ついた。いやあ、やればできるもんだ。

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とにかく登りきった。ただただ一生懸命やっただけで、降りてきた時には息もゼエゼエと上がってはいたけれど、まあ、自分で自分を褒めてあげたい。よくやった。

インストラクターのお兄ちゃんが、「次はどうする?」って聞くんだけど、「次」って何のことだね、キミ。普通は午前中から午後まで、5~6回は登るんだそうだ。

「本当にもう登らないの?」ってお兄ちゃんが不思議そうに聞いてきたけど、さっきもはっきり言ったはずだ。もうやらない。

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このあと、モンモランシー滝公園の管理事務所の職員、とでも言えばいいのかな、そこのブリジットという女性らとの昼食になり、ようやくビールにありついた。

防寒着の中ではけっこう汗をかいたので、いつにもまして冷えたビールが美味しい。ブリジットが言う。

「アイスクライミングをやりに日本人が来るって聞いて、珍しいなって思ってたんだけど」。

そして、ブリジットの笑顔。

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日本人はあまりやらないのか-。僕は自分の眉間に縦ジワが入るのをはっきりと感じた。

日本人の中でも、とりわけこういうことやらないタイプの僕が氷の滝を登り、カナダ人に珍しがられていたってわけだ。

既に体験してしまった立場だから、言う。僕にだってできた。だからみんなにもできる。女性だって登っていた。そして、終わったあとの地ビールは格別だ。

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みんなも冬のモンモランシー滝でアイスクライミングを体験した時、インストラクターのお兄ちゃんがサングラスの下でニヤッと笑ったら、きっとこういうことだと思って欲しい。

「なんか最近、変わった日本人が増えてきたなあ」―。

きっとそういうことだ。間違いない。

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