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06. 鮭とサーモン

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06. 鮭とサーモン-イメージ1

いきなり冒頭から日本の鮭の缶詰の写真が出てきて何だか分からないと思う。大変申し訳ない。

しかし、これはあとから、もの凄く大きな意味があることが分かってくる写真だ。とりあえず今はいったん「スルー」していただきたい。

さて、僕が訪れたのは、キャンベル・リバーにある「クインサム・リバー・ハッチェリー=Quinsam River Hatchery」というサーモンの孵化場だ。

入り口でいきなりサーモンをくわえた木彫りのクマに出迎えられたのには驚いた。

06. 鮭とサーモン-イメージ2

それはともかく、ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)では、各地のハッチェリーでサーモンを増やす取り組みが行われている。

具体的には、川を遡ってきたサーモンを捕まえて卵を採取し、受精させた後、この写真にあるように川の水を流した状態で孵化を待ち、稚魚にまで育てて放流する、という取り組みだ。

そしてハッチェリーの担当者はまず、僕にこう説明してくれた。

「このハッチェリーでは『ピンク』『チヌーク』『コーホー』の3種類から卵を採って孵化させています」。

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さて、ここからこの原稿は大きく「回り道」をしなければならない。

そして読者の皆さんには、トップ写真の鮭の缶詰、つまり「鮭缶」を脳裏に焼き付けつつ、話の舞台をいったん日本のスーパーへと戻すことをお許しいただきたい。

実は「サーモン」にはたくさんの種類があって、しかも「サーモン」イコール「鮭」ではない。

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さらに言うと、回転寿司で出てくるサーモンの握りは「鮭」ではないし、正確には「鱒=マス」と言った方が正しいかもしれない。

なんだか分からないと思うので、今度近所のスーパーに行った時に、魚売り場でこれらの写真のような「鮭」の商品表示をじっくり観察してほしいのだ。

例えば最初の写真は「紅鮭」と書いてあるのに対し、次の写真は「生秋鮭皮なし」とある。塩をした「紅鮭」と、秋にとれた生で皮なしの「鮭」。「紅鮭」と「鮭」は違う種類なのだ。

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そして3枚目の写真。表示には「サーモントラウト」とある。

サーモンは「鮭=サケ」、トラウトは「鱒=マス」なので、本来「サーモントラウト」ってもう、何を言ってるんだか分からない名前なのだ。

とにかく「鮭」やら「サーモン」やらには、実にたくさんの種類があって、その名前も複雑なんだということは分かってもらえると思う。そして「サーモントラウト」については別に機会にじっくりと説明したい。

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さてさて、ハッチェリーの人が言っていた「ピンク」とは、ピンクサーモン(Pink salmon)と呼ばれる種類だ。日本では「カラフトマス」と言う。

ここで改めてトップ写真にあった鮭缶の表記を確認したい。「SALMON」と書きながら、同時に「さけ(からふとます)」と書いてある。そしてサーモンの絵の腹のところには「PINK」の文字がある。

ピンクサーモンではあるが、日本での呼び名は「鱒=マス」。でもこれじゃあ「鮭缶」らしくない、だから「さけ(からふとます)」としながら、「SALMON」とか「PINK」とかいう単語を散りばめてある。この鮭缶には、ものすごい苦心のあとが垣間見られるのだ。

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なぜこんなことが起きてしまったのか。この写真は「チャム・サーモン(Chum salmon)」という種類で、日本名はシロザケだ。

実は昔から日本の川に遡上するのはほとんどこのシロザケで、「シロザケ」イコール「サケ」だったのだ。つまり「さけ」も「サケ」も「鮭」も「シャケ」も、みんなシロザケ。だからあの「生秋鮭皮なし」は、秋にとれた生のシロザケの皮をとったもの、であることが分かる。

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一方で、川を遡上する魚で「鱒=マス」と言えば富山の「ますの寿司」に使われるサクラマスぐらいしかなかったので、サケ=シロザケ、マス=サクラマス、という大雑把な区別で済んでいたようだ。

しかし北洋漁業で別のサケがとれるようになったり、輸入もののサーモンが出回るようになって、あの鮭缶の「さけ(からふとます)」=ピンクサーモンのような難しい問題が持ち上がったらしい。

詳しいことはおいおい説明するけれど、言いたいのは「サーモン」イコール「鮭」ではないということ。サーモンには「ピンク」も「チヌーク」も「コーホー」も、いっぱい種類があるのだ。

文・写真:平間俊行

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